「発酵文化芸術祭 金沢」の楽しみ方
こんにちは。発酵文化芸術祭でディレクターをしている山本梨央です。
発酵文化芸術祭とは、2024年12月8日まで、金沢21世紀美術館のプロジェクト工房と、近隣の醸造蔵など様々な会場で「発酵」と「アート」を感じる催しです。
石川県の発酵食品と、それらの蔵からインスピレーションを受けたアート作品を展示しています。展示会場自体が歴史的な建造物という場所もほとんどで、みどころたくさん。(食べどころもたくさん)
ディレクターと言ってもいろいろありますが、私は裏方だいたい全部に関わっています。たいていの人に業務範囲を話すと目を丸くされるので、ちょっと楽しくなっちゃってやりすぎちゃった気がしてます。
(やりすぎた範囲は同じくディレクターを務めている「ブックブックこんにちは」という番組を勝手にジャックして話しているので、よかったら聞いてください)
人生の集大成と言っていいくらい、お寺で生まれ育ったからこそ活かされた経験だとか、新卒のころに飛び込み営業をしていた頃とかに培ったフットワークだとか、前職で鍛えられた企画してチームを作って形にして届けるというあらゆる方法だとか。これは書き始めると止まらないので、また別で書きます!
今回は!オフィシャルじゃなくて個人的に!発酵文化芸術祭をこう楽しむのがおすすめ!というのを勝手に書きます!
1.金沢へのアクセスは意外といい。
東京からは北陸新幹線で、かがやきに乗れば2時間半。関西からもだいたい同じくらい。その他のエリアからだと、小松空港から40分くらい。つまり、金沢はいろんなエリアから結構アクセスしやすいんです。
私は高校・大学・新卒と片道2時間生活をずっとしていたこともあって移動時間に対する感覚がちょっとバグっている自覚はあるのですが、それでも近い!あっという間です。
ここで注意!なるべくお腹を空かせてきてください!金沢、おいしいものがたくさんあるので、ついつい往路の新幹線で駅食べてお腹いっぱいになってしまって後悔した回数は数え切れません……。
あと、この旅はたぶんお土産がとっても重くなります。みなさん、お醤油やお酢、お酒など、瓶ものがたくさん欲しくなっちゃって「持ち切れない!」となりがち。大きめのリュックや、余裕を持たせたスーツケースなどで来ることをおすすめします。もしくは、割り切って現地から宅急便で送るか。
びっくりするくらい、本当にたくさんの方が「重くなっちゃった」と一度ホテルに戻ったりする姿を幾度となく見てきました。楽しむための準備も大事!
2.まずは金沢21世紀美術館へ。
金沢21世紀美術館に来たら、常設展を見るもよし、直接「プロジェクト工房」という建物に向かって、発酵文化芸術祭から始めるもよし。レアンドロ・エルリッヒの有名な「プール」の作品は予約が必要なので気をつけてね。
プロジェクト工房では、芸術祭の総合プロデューサーである発酵デザイナー・小倉ヒラクさんの展示があります。石川県の発酵文化は、ここに来れば一通りわかります!
(毎週末、ヒラクさんか私がガイドツアーを行ってます。話を聞きながら発酵食品の楽しみ方の理解を深めるのもおすすめ)
来場者の方々のリアクションを見ていると、石川県外の方々からは「初めて知った!」という食品もたくさん。匂いも楽しめるので、芳しい匂いから、なかなか強烈(!)なものまで、たっぷり楽しんでもらえます。他のお客さんのリアクションをチラ見するのも楽しいかも。地元の方でも「これって石川県だけだったの?!」という驚きの声も上がること多数。
「この匂い、なにからできてると思う?」というクイズを出すと、意外とお子さんの方がズバッと当てたりして、それも新鮮でした。
ここで忘れてはいけないのは、チケットカウンターに立ち寄ること!オンラインチケットをご購入の方は、ここでQRコードを提示したらガイドブックがもらえます。
ガイドブック、これ一冊でもチケット代の元が取れるんじゃないかというくらい充実しています。たぶん、金沢に来るのが3回目以上の方でも楽しんでいただけるであろうシティガイドとしても活用していただけます。(主に執筆を結構がんばりました)
それから、オンラインチケットの方は実はスタンプラリーもお楽しみいただけます。スタンプラリーのQRコードを読むと、そこでしかゲットできない読み物や音声ガイダンスも!(音声ガイダンスの収録と編集もがんばりました)
3.街中の会場でアートに触れる。
発酵文化芸術祭の本領発揮は、街中に出てから。会場数がたくさんあるのと、臨時休場などもあるので、特設サイトのトップページから「開場情報」を必ずチェックしてから足を運ぶようにしてください。
移動は車でもよいけれど、タクシーや公共交通機関を使うのがおすすめ。なぜなら、とにかくいろんな場所で「美味しいお酒」を飲めるポイントがあるから。酒蔵以外にも、たとえばランチに行ったお店の日本酒の品揃えが最高だったり、お醤油の蔵だと思って行った場所で美味しいお酒に出会っちゃったり、ってことも多々あります。
どんな会場にどんな作品があるのかは、公式instagramを見るとわかりやすいかも。おすすめ情報もハイライトでまとまっているのでおすすめです。
どの会場でも思うのは、日常の時間の流れを忘れて、じっくりと作品と向き合ったり、香りを感じたり、伝統的な建築の中に身を置いて歴史を感じたりできるということ。様々な会場で、1作品を1時間くらいかけてじっくり楽しむ方もたくさん見かけました。
会期初期にメディアの方々と話していて印象的だったのは、「芸術祭というと、最近は写真を撮って、はい次へ、と巡る方も増えてきているけれど、この芸術祭はじっくり感じるものが多かった」という言葉。まさにその通りで、サブタイトルに「みえないものを感じる旅へ」とついている通り、みえないものを感じるためにはじっくり時間をかける必要があります。
だからこその日常と切り離された旅を楽しんでいただけるきっかけが、そこかしこに潜んでいるのではないかと思っています。
さらに、私がこの芸術祭でとっても気に入っているポイントは、会場を出ても余韻に浸れること。オーバーツーリズムなんて言葉もありますが、金沢もエリアによっては観光客の人数が多すぎて満員電車状態になるところもあります。だけど、発酵文化芸術祭の会場は、見事に!すべて!人が少なくて静かな場所!それでいて趣もある街並みばかりだから、つまり最高です。
静かに作品を向き合う時間を過ごし、会場を後にして街を歩きながら、自分の感じたことと向き合えるのも醍醐味のひとつ。私も各会場を日々回っていますが、その静けさがあってこそ、心が穏やかになっていく感覚があります。
4.せっかく「発酵」なのだから、おいしいごはんを。
これだけ発酵のスポットを巡っていけば「食べてみたい」発酵食品も増えていきます。金沢らしいお刺身やお寿司、おでんなどなど、美味しいお店を探してメニューを開いたら、ぜひ発酵食を探して注文してみてください。石川県は日本酒も豊富!能登のお酒を飲んで応援の気持ちを添えるのもおすすめです。
たとえば金沢のお醤油はほんのり糀の甘さが効いているので、お寿司やお刺身を食べるときにはぜひ、お醤油も単体でひと舐めしてみてください。「わかる!」となるはずです。
ちなみに、11月に入ってからはカニが解禁になっています。「かに面」というメニューを見かけたら、ぜひ食べてみてください。丁寧にカニの足の身を並べた美しく、なおかつ食べやすい形に整えてくれて出てきます。カニ酢につけて食べるとさっぱりした気持ちになって本当に美味しいんです。カニのたまごなんかも日本酒にぴったりですね。私ははしゃぎすぎて、3日連続で食べました。一人で食べに行っても、コンパクトなサイズだから食べ切れます。一人旅でも絶対に諦めないでほしい。
ただし、カニのシーズンでおいしいお店は予約で入りづらかったりするので、ぜひ事前に予約しておいてくださいね。(美味しいものがありすぎるので、本当は2泊3日くらいしてほしい。一晩じゃきっと足りない!)
金沢というと和食のイメージが強いけれど、マレーシア料理やジョージア料理、チェコ料理なども美味しいお店があちこちにあって、本当にグルメの街だなぁと感じています。芸術祭の準備を始めてから、この1年で当たり前に太りました。だっておいしいんだもん!まずいところに一回も遭遇していない!みなさんはきっと旅だから、太る心配はありません。思う存分食べてください。
5.おうちに帰ってからも「芸術祭」は続きます。
名残惜しくても終わってしまうのが旅。それでもこの芸術祭は、お家に帰ってからもたっぷり楽しんでいただけます。なぜなら、きっと帰る頃にはみなさんのカバンの中をいっぱいにしているであろうお土産の食品たちが待っているから。
かぶら寿司やフグの子(ふぐの卵巣の糠漬け)など、冷蔵で早めに食べた方がよいものもあります。でも、たとえばお醤油やお酢、みりん、いしる・いしり(魚醤)、など調味料が豊富なのも石川の発酵の特徴。調味料なら一気になくなってしまうこともないから、お料理をする度に、香りをかぐ度に、きっと出会ったアート作品や金沢の街並みを思い出せると思います。
もしも食べ終わってしまっても、また金沢に行ってもいいし、通販で購入できるお店も多いのでリピートしてもいい。ちなみに芸術祭初日に来てくれた私の母はほぼ全てのお店の商品を現地で買い、通販でも買い直していました。ご近所さんやホームパーティーなどで食べ比べをしても楽しいです。
会期の終了はもう目の前!
さて、いまさら楽しみ方を金沢に向かう新幹線の中で(北陸新幹線は電波が弱いので)書き殴ってみましたが、どうでしょう、行ってみたくなりましたか?
会期は12月8日まで。もう、すぐです!週末の回数で言ったらあと3回!「行こうと思ってたのに〜」というのはだいたい終わってから気が付くものなので、ぜひいきたくなっちゃったらすぐに宿と新幹線を予約することをおすすめします。
会期中の週末は、だいたい着物で金沢をうろうろしていますので、お知り合いも、面識はないけどこのnoteを読んでくださった方でも、ぜひぜひお気軽にお声がけください!美味しいお店をたくさん(行ききれないほど)お伝えします。