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【取材】外食セブン&アイ・フードシステムズのサステナビリティ(後編)
こんにちは。後編では、産官学連携の食品ロス削減「mottECO」や「おこさま食育スクール」を通した自治体との連携、今後の課題などについて、中編に引き続き、株式会社セブン&アイ・フードシステムズ の中上冨之(なかうえふゆき)さんにうかがったお話を紹介します。
公益財団法人流通経済研究所
上席研究員 石川 友博
研究員 寺田 奈津美
※中編はこちら👇
他の企業を巻き込んだ連携事業「mottECO」事業で社会課題解決を目指す
中上さん:当社のサステナビリティの取り組みの特徴の1つは、社会へのインパクトを重視し、セブン&アイ・フードシステムズ単独ではなく、他の企業や団体との連携を推進している点です。前述の「mottECO」事業には今年度21団体が参加しており、今後もその仲間を増やしていきたいと考えています。
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mottECO普及コンソーシアムは、外食事業8社、ホテル事業8社、中食事業1社、2つの自治体、2つの大学合わせて21団体(取材当時)からなる、
食品ロス削減推進を目的とした産官学連携アライアンス。
出所:PRTimes「産・官・学連携で推進する食品ロス削減の取り組みが、環境省の「mottECO(モッテコ)導入モデル事業」に採択
(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000232.000008035.html)
――連携企業を増やすのは非常に大変だと思いますが、それでも広げようとするのは、この活動を社会全体に浸透させるためですか?
中上さん:そうですね。例えば、「mottECO」事業についていえば、食べ残しの持ち帰りが浸透していない理由の一つは、事業者側が食品衛生上のリスクを恐れて持ち帰り対応になかなか踏み出せなかったからです。
しかし、消費者が「自分が頼んで残したものだから、自分の責任で持ち帰るのは当然」という考え方がスタンダードになれば、事業者はリスクを過度に感じることなく、持ち帰りの対応をスムーズに進めることができるようになります。
そのためには、過渡期において、多少のリスクを負ってでも取り組む事業者がいないと、持ち帰りが当たり前になっていきません。
私たちは、単に食べ残しの持ち帰り件数を増やすことは目的とせず、消費者の習慣や行動を変えること、そして「もったいない」という意識を再認識してもらうことを目指しています。これは一事業者だけでは成し遂げられませんので、今後もできるだけ仲間を増やしたいと考えています。
また、実際には外食時に食べ残しを持ち帰らなければならないケースはそこまで多くないと思いますので、「mottECO」という言葉そのものを目にする機会を増やしたり、もしも食べ残しが出てしまった場合に、どのレストランでも持ち帰りができる環境を整える必要があります。こうした取り組みを広めるためには、同業他社も巻き込んでいかなければならないと考えています。
「おこさま食育スクール」の取り組みと自治体との連携の重要性
中上さん:他にも、地域のお子様を対象に「おこさま食育スクール」という場を提供し、食育の機会を設けています。
例えば、お箸の持ち方をお子様に覚えてもらうだけでなく、環境の側面から「大豆ハンバーグと普通の牛肉のハンバーグの違いは何でしょう?」といった話をしたり、「食べきることの大切さ」を伝えるために、「このサラダのレタスはどこから来て、テーブルに出るまでにこんな苦労があるんだよ。だから残しちゃダメだよね」と話すことで、食材の大切さを学んでいただいています。
コロナ禍ではリモート開催も試みましたが、やはり実際にレストランに来て、親御様に見ていただきながら、箸で豆をつまんでお皿に移すといった体験型の企画には、子供たちは楽しんで積極的に取り組んでくれます。このような場を提供できるのもまた、リアル店舗ならではの強みだと思います。
――サステナビリティの観点から、リアル店舗を活用して社会課題解決や地域貢献といった新たな価値を提供している、素晴らしい取り組みですね。
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中上さん:これらの取り組みにおいては、自治体との連携が非常に重要です。解決を目指す社会課題がグローバルな問題であっても、実際に解決を図るのはその地域の自治体や市区町村単位の取り組みです。
当社は多くの都府県に店舗を展開していますが、各店舗はそれぞれの地域で営業していますから、その地域の自治体がどのような取り組みを行っているのかを理解し、地域に応じた対応をしないとうまくいきません。そのため、全店舗一律の取り組みではなく、自治体との連携を通じて、地域ごとの課題解決にどうつなげていくかということが重要です。
例えば、上述の「おこさま食育スクール」を実施する場合、都心では子どもたちが集まりやすい一方で、地方では集まりにくいという場合もあるかもしれません。そのため、全店一律で実施するのではなく、「ここの地域ではおこさま食育スクールをやりましょう。」「こっちの地域では認知症本人ミーティングをやりましょう。」というように地域ごとに実施する内容を決め、地域課題を解決することを目指しています。
また、環境の面では、このたび福島県会津若松市が、環境省の脱炭素補助事業特別指定区域※に認定されましたが、デニーズも会津若松市に店舗を持っており、その取り組みに参加して、地元に出店している事業者として、何ができるかを一緒に考えましょうという話をしています。
※環境省「脱炭素先行地域」
(https://policies.env.go.jp/policy/roadmap/preceding-region/#regions)
脱炭素先行地域とは、2050年カーボンニュートラルに向けて、民生部門(家庭部門及び業務その他部門)の電力消費に伴うCO2排出(※)の実質ゼロを実現し、運輸部門や熱利用等も含めてそのほかの温室効果ガス排出削減についても、国全体の2030年度目標と整合する削減を地域特性に応じて実現する地域のこと。
中上さん:現在、次年度やその先の中期での企画を進めている段階ですが、まずは当社と会津若松市とで環境の連携協定を結び、一緒に取り組みたい項目をたくさん挙げ、当社ができることと、会津若松市が望むことの優先順位を設定する、といった段階を踏んで取り組みを進めていきます。当社がやりたいことだけを言っても取り組みは進まず、地域の人々へのアピールにもなりません。そのため、自治体とすり合わせをしながら進めることを重視しています。自治体の期待に沿った活動をすることで、地域にお住いの方からも理解を得やすくなり、同時に当社もお客様からの支持を得られると考えています。
地域の方からの支持を得ながら、自治体と連携して各地域の課題を解決することが、結果的にグローバルイシューを解決していくことにつながると考えています。
前述の山梨での森林づくりも同様です。山梨は全国で最も森林の比率が高く、民有林の継承に大きな課題を抱えているということで、当社が自治体と一緒になって森を作っていく取り組みにすごく共感していただいたのだと思います。
今後の課題は持続可能な調達
――現状からさらにレベルアップさせるために今後取り組みたいことは何ですか?
中上さん:当グループの4つの重点課題の1つである持続可能な調達への対応には非常に難しさを感じています。
プラスチック削減や食品ロス削減は、KPIを設定しやすく、廃棄物の減少量など成果が見えやすいため、比較的取り組みを進めやすいです。しかし、当社のような飲食業では、原材料を仕入れて調理する過程で、さまざまな商材が混ざり合います。そのため、「このメニューは持続可能な調達に基づいています」と明確に示すことが難しく、さらにそれを数値でどのように表すかに苦労しています。これは飲食事業特有の難しさであり、今後の課題と考えています。
現時点では、環境に優しいものはコストとトレードオフの関係にあり、どうしても高価であったり、調達量が限られていたりします。そのため、すぐに全てのメイン食材を持続可能なものに切り替えるのは、正直なところ難しいと考えています。
従来の食材より環境負荷の小さいものに切り替えることで、コストが大幅に上昇し、値上げせざるを得ないという状況になる可能性があるだけでなく、調達できる量が限られて全店舗に安定供給できなくなる懸念もあります。
当社は食材そのものを販売しているわけではなく、さまざまな材料で作った料理を提供しているため、まずは使用頻度の高い、例えばハンバーグなどの主要食材の組成分析を行い、その中で持続可能な原材料の比率を上げていくといった取り組みに活路を見出せないかと模索しているところです。
――今後サステナビリティに取り組もうとする流通・外食業の企業に対してメッセージをお願いします。
中上さん:今さらですが、SDGsに沿って経営することはもはや当たり前のこととなっています。
SDGsの17の目標の中で業種ごとに優先順位は異なると思いますが、私自身は、こと外食事業者にとって一番大事なのは17番目の「パートナーシップ」だと考えています。同業他社はもちろんのこと、異業種とも連携しなければ環境負荷は下げられないと思っていますので、機会があれば、様々なことを一緒にやりましょうとお伝えしたいです。地球は1つにつながっていますからね。
まとめ
今回は外食業・セブン&アイ・フードシステムズのサステナビリティ推進について、推進体制やマテリアリティやKPI、自治体と連携した地域貢献、他社を巻き込んだ社会課題解決の取り組みなどをご紹介しました。その中で、特に重要なポイントとして、以下の3点が示唆されました。
① サステナビリティの取り組みを目に見える形で可視化することで、従業員のサステナビリティ意識を浸透させている。例えば、コーヒーかすをコーヒーカップにアップサイクルする取り組みや、店舗での「認知症本人ミーティング」、認知症サポーターの養成などを行い、従業員が実際に参加することで、自分ごととして自発的にサステナビリティに取り組むことができる仕組みになっている。
② 社会課題の解決を目指し、他社を巻き込んで取り組みを拡大している。「mottECO」事業では、同業他社を含めたさまざまな団体を巻き込み、持ち帰りの普及と「もったいない」意識の醸成を通じて、食品ロスの削減に貢献しようとしている。
③ 自治体と連携して各地域の課題解決に取り組んでいる。「おこさま食育スクール」や「セブン&アイ・フードシステムズの森」などの取り組みでは、自治体の意向に合わせて連携し、各地域が抱える課題解決のために自社に何ができるかを共に考えながら進めている。こうすることで、地域の方々からの理解を得やすく、地域のお客様からの自社への支持も得られる。
今回詳しくお話を伺い、サステナビリティの取り組みは本業を通じて行うことが最も重要だと感じました。企業経営とサステナビリティが切り離せないものになっている状態が理想であり、これはどの企業にも共通する真理だと思います。
また、今後の課題として、持続可能な調達が挙げられました。サプライチェーンの持続可能性は流通業のサステナビリティ推進において重要ですが、現在取り組みが遅れている分野です。環境、人権、物流などのサプライチェーン上の課題を解決するためには、1社だけの取り組みでは不十分であり、取引先や競合他社を含む業界全体、さらにはお客様や地域を巻き込んだ社会全体での協力が必要です。
最後の中上さんからのメッセージの通り、「地球は一つにつながっている」という原点に今一度立ち戻り、多くの企業がサステナビリティ推進に取り組んでほしいと感じました。
――中上さん、ありがとうございました!
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