【取材】「つなぐアルビス」アルビスのサステナビリティ経営(中編)
公益財団法人流通経済研究所
上席研究員 石川 友博
研究員 寺田 奈津美
こんにちは。中編では、3R+Renewableを推進する環境の取り組み、お客様とともに環境について考える取り組みなどについて、前編に引き続き、株式会社アルビスの池田さん、森さんにうかがったお話を紹介します。
※前編はこちら👇
店舗が基軸となって地域とつながるフードドライブ活動
――フードドライブの取り組みについて詳しく教えてください。
池田さん:始めた当初は、毎月必ずどこかの店舗で実施するという方針で「リレーフードドライブ」と名付けました。現在も、毎月1店舗以上でフードドライブを行っています。
また、上記の有人フードドライブに加えて、無人のフードドライブボックスも設置しており、お客様が寄付した商品は寄贈先の福祉団体や社会福祉協議会の方々が直接受け取りに来る仕組みで運用しています。この方式では、食品を集めるための追加のスタッフを配置する必要がなく、低コストで拡大が可能です。現在では11店舗に無人のフードドライブボックスを設置しています。
フードドライブの取り組みを始めて4年以上経ち、さまざまな店舗で実施したことで活動が広く認知されるようになりました。その結果、ボックスには多くの食品が集まるようになり、寄贈先の団体の方々からも喜ばれています。
森さん:一方で、最近、フードドライブが広がったことで、新たな問題も出てきています。実際、取り組みを始めても、一度限りで終わってしまうことが少なくありません。
フードドライブが地域で流行り始めたとき、多くの企業が「自社も参加したい」と手を挙げましたが、その後も継続して取り組んでいる企業はそれほど多くありません。
フードドライブを成功させるためには、単に店舗の場所を貸すだけではなく、実際の食品提供の呼びかけや事務作業を担うフードドライブの主催団体と積極的に協力し、「余った食品を無駄にせず、必要とする方々へ届ける」というフードドライブの意義や目的をしっかりと発信することが重要です。
団体との連携において難しい点として、例えば、一緒に活動する地域団体の中には、障害を持った方や心の病を抱える方もいらっしゃいます。しかし、そのような方々と協力することに積極的でない企業もあり、そのような企業とうまく取り組みを進めるのが難しいと感じた団体から、相談を受けることもあります。
池田さん:多くの運営団体のスタッフはボランティアなので、1回や2回はできても、継続してそれに時間をかけるのは難しい部分もあると思います。当社では、社員が積極的に関わり、一緒に活動を行う団体と協力して取り組むことで、継続的な活動が可能となっています。
こうした背景から、最近では連携する活動先として当社を選んでいただく団体も増えています。
また、地域の人にも活動に参加してもらっています。例えば、小中学生がSDGsを実践する場として、当社のフードドライブ活動に参加する例があります。一番驚いたのは、小学生が自分たちでフードドライブのポスターを作り、そのポスターの前に立って食品を受け取り、それを福祉施設などに届けるところまで関わった事例です。
森さん:ほかの学校からも同様の依頼が増えており、来月は高校生が夏休みを利用して、先生の助けを借りずに自主的にフードドライブの運営を行う予定です。(取材当時)
――素晴らしい取り組みですね。学校で習ったSDGsを実践することは、子どもたちにとって貴重な経験になりそうですね。
池田さん:フードドライブを始めた当初は「フードドライブって何?」という反応がほとんどでした。しかし今では、「いつフードドライブをやるんですか?」と聞かれることも増え、かなり浸透してきたと感じています。
その結果、参加してくれる方や集まる食品も増えましたし、フードドライブの様子を見て、店で商品を購入してボックスに入れてくれる方もいます。また、店頭でフードドライブを実施しているのを見て、わざわざ自宅に戻って食品を持参してくれる方や、寄贈先へのお手紙を添えてくださる方もいます。
特に、年配の方に、店舗に設置されたボックスを見て、「社会貢献したい」と思う人が多いようです。
フードドライブは本来、不要な食品を集めて必要な人に届ける活動ですが、こうした取り組みが食品ロスの削減に貢献するだけでなく、「大きなことができなくても自分なりに参加したい」という気持ちを持つ人たちが、気軽に参加できる社会貢献活動に変わってきていると思います。
3R+Renewableを推進する環境の取り組み
――環境の取り組みについて教えてください。
森さん:私たちは「アルビスグリーンアクション」として環境の取り組みを進めています。以下にその代表的なものをご紹介します。
池田さん:珍しい取り組みとして、焼却処分していた生ごみを水に変えて下水として流せる消滅型生ごみ処理機を導入し、現在10店舗で実験を行っています。この機械は青果の一部の硬い部分以外、惣菜などをほぼすべて処理でき、バクテリアの力で最終的に水にして流すことができます。この導入により、食品廃棄物の削減とCO2排出量の約92%削減が可能となります。
池田さん:当社ではこのほかにもさまざまな取り組みでリデュース、リユース、リサイクル、リニューアブルを推進しており、環境負荷低減の活動を続けてきました。
森さん:環境意識に関しては、プラスチック資源循環促進法ができてから一層強くなりました。
池田さん:また、当社は上場企業としてTCFDへの対応も進めています。現在、スコープ1・2については公表しており、国が目標としている46.2%の削減率を2030年までに達成することを目指しています。さらに、TCFDの枠組みでは、削減目標を設け、それが達成できなければクレジットで排出枠を購入しなければならなくなります。それを踏まえると、CO2削減を含めた脱炭素の取り組みをきちんと行う必要があると考え、現在実験を重ねながら進めています。
お客様とともに環境について考える「みんなのグリーンアクション宣言」
森さん:このグリーンアクションの一環として、上記のような活動をお客様に知らせることはもちろん、お客様にも環境について考えてもらう取り組みを行っています。6月の環境月間に合わせて、富山と石川の大型店各1店舗に「みんなのグリーンアクション宣言」というテーマでパネルを設置しました。お客様には、節電を心掛ける、食材を使い切るなど、自宅で行う環境配慮の取り組みを葉っぱ型の紙に書いて、パネルに貼って宣言してもらいます。この活動は6月から7月末まで行われ、たくさんのお客様に参加していただけたため、11月のエシカル月間にも実施したいと考えています。
また、環境配慮商品をもっと意識してもらうために、例えばお菓子などでプラスチック削減容器包装を採用した商品や、紙パック包装の商品を特設ブースに集め、「この商品はCO2を何グラム削減しています」「これを買うと環境にどれくらい貢献します」といった情報を提示しながら販売しました。この取り組みは毎年11月のエシカル月間に行っていましたが、今回は6月の環境月間にも実施しました。このような環境をテーマにしたイベントを通じて、お客様に環境について考えてもらい、商品を知ることで選ぶきっかけにしてもらう活動を行っています。
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