【取材】全員活動で地域、社会、環境の向上に貢献 バローのサステナビリティ(後編)
こんにちは。後編では株式会社バローホールディングスの、人材活躍や、サステナビリティ推進の理解浸透や情報発信等について、中編に引き続き冨永さんにうかがったお話を紹介します。
公益財団法人流通経済研究所
上席研究員 石川 友博
研究員 寺田 奈津美
※前編・中編はこちら👇
テーマ6 人材活躍:従業員一人ひとりに向き合って社員の健康向上をめざす
――人材活躍のテーマについて、理想はどのような状態でしょうか?また、現状は10点満点でどのくらいまで来ていると思われますか?
冨永さん:理想としては、従業員の皆さんが健康で安全に、心身ともに充実して働くことができる状態です。現在の評価は5点です。
サステナビリティ推進室ができて以来、従業員に対して、仕事の面だけではなく、健康に対しても会社が関わっていこうということで、グループ健康管理室を立ち上げ、従業員の皆さんの健康管理や疾病、病気の未然予防に取り組んできました。具体的には、仕事を頑張りすぎてしまったために、血圧がすごく高くなってしまうなどで就業制限がかかっている社員の方への個別フォローです。
これまでは、健康診断の結果が悪かった方には、「病院に行って詳しく検査してください」というお知らせをお送りするくらいだったのですが、それで実際に病院に行って検査を受けてくださるかというと、残念ながら、あまり行動にはつながっていませんでした。
弊社は従業員がたくさんいる中で、就業制限がかかっている人はその中の1割程度ですが、数にすると1,000人を超えており、少なくはありません。そこで、この一年は、健康診断の結果が悪かった従業員には繰り返し再検査のご案内をお送りし、その後ちゃんと病院に行って再検査を受けてきたかどうかを個別のやり取りで確認するなど、一人ひとりに向きあって、フォローを徹底していきました。
まだ全員の検査受診にはつながっていないのですが、新型コロナウイルスの影響もあり、皆さん病院に行って再検査を受けていただけるようになってきており、一定の効果が出ていると感じています。
全員が受診することが理想ですが、このように地道なフォローにより再検査受診率も伸びていくと思いますので、この取り組みを継続することが大事だと思っています。
冨永さん:また、今後は従業員の仕事や労働環境に関する悩みや相談に対して、本部でより迅速かつ確実に対応できる体制を整えたいと考えています。具体的には、専門の電話回線の設置や、そのような問い合わせが本部のどの部署にかかってきても適切に、ていねいに対応できるよう、部門内での認識を一層徹底するなどの対策を検討しています。
人材活躍に関しては、まだ従業員全員がサステナビリティの活動に取り組める体制になっていないことは改善したい点です。
また、他社さんが採用している髪色や服装の自由化などの多様性を認める取り組みは、弊社ではまだ取り入れられていないため、通常の営業に支障がないのであれば、取り入れてみてもよいのではないかと思っています。
ただ、こうした柔軟な対応をするには、私たちサステナビリティ推進室以外の部署で、どうやってサステナビリティや働きやすい職場づくりの活動を浸透させるかということが重要です。そのため、今後は私たちの取り組みを広く伝えていくことや、従業員に一緒に取り組んでもらえる活動を積極的に作っていくことを進めていきたいです。
――ありがとうございます。人材活躍の取り組みについて、従業員の健康や働きやすい職場づくりに注力されており、今後は現在の活動をより強化し、さらに、サステナビリティ推進や働きやすい職場づくりをサステナビリティ推進室以外の部署にも浸透させる施策を検討したいということなんですね。
サステナビリティ推進の課題は社内の中堅ベテラン層の理解促進と対外発信の拡大
――社内への情報発信は現在どのように行われていますか?
冨永さん:紙媒体の社内報を2か月に一度発行しており、毎号3ページ、サステナビリティ推進室の情報を連載しています。主な内容は、イベントの出店や開催の情報で、例えば、中部薬局で実施した、廃棄予定のコスメのテスターを使って絵を描いてもらう「コスメアート」のワークショップや、FC岐阜さんや名古屋グランパスさんとコラボして開催した、試合会場でのフードドライブを掲載したりしました。
他にも、新入社員の研修では、座学の時間にサステナビリティ推進室の取り組みについて紹介する時間を設けています。今の新人で入ってくる世代はいわゆるZ世代で、SDGsなどについての知識を持っていたり、学校で学んできた経験もあるため、そのような若い世代には私たちの取り組みの意義や思いが十分に伝わっていると思います。
冨永さん:一方で、課題はその上の世代にどう理解してもらうかということです。中堅・ベテランの世代はもう研修もなかったりしますし、なかなか伝える機会がありません。そのため、今後はその方々にどのように伝えていくかが課題だと思っています。
――若手への浸透は進んでおられる一方で、今後の課題は中堅・ベテラン層にサステナビリティ推進室の取り組みの意義や姿勢を理解してもらうことなんですね。
――社外への情報発信に関しても、インスタグラム などのSNSや地域イベントへの出展などに力を入れておられるということですが、意識されていることや、お客様からの反応はいかがでしょうか?
冨永さん:インスタグラム の運用で心がけているのは、毎日か少なくとも週に3日、4日は何か発信する、アカウントを動かすということですね。これは通常の投稿でなくても、ストーリーでも十分なので、何かしら継続して発信していくことが重要です。
ストーリーでいうと、リアクションボタンを設けるなどの工夫をしています。そうすると、「いいねは押しづらいけれど、このお花のマークのリアクションボタンなら押してみたい!」というふうに、ワンアクション起こしていただきやすくなるようです。
反応が多かったのは、フードドライブの結果発表や信州子ども食堂(バロー南松本店の空きテナントのスペースを使って月に一回開催している子ども食堂)の開催のお知らせなどです。また、もうすぐ開催の「大森の径探検イベント」という、弊社の研修センターの敷地内にある自然の散歩道を歩いていただくイベントのお知らせも反応が良いですね。
――フードドライブの結果発表の反応が良いというのは興味深いですね。
冨永さん:その時は、FC岐阜さんや名古屋グランパスさんとコラボして、フードドライブを開催しました。結果報告の投稿では「何百個の食品で何十キロ集まりました」というふうに、数値を出すとやはりインパクトがあるのか、「おー!」というふうにいいねをしていただけました。数値を出すことは難しい場合もありますが、イベントの参加人数や集まった食品の数量など、わかりやすい情報を盛り込むと反応を得やすいのかなと思います。
――そうなんですね。フードドライブや子ども食堂などのイベントに参加されるのはどのような方が多いですか?
冨永さん:地域のイベントに出店することが多いのですが、イベントの参加者は地域の方やファミリー層が多いです。また、ワークショップを毎回必ず開催するようにしており、お子様にもお楽しみいただける内容にしていますので、ご家族で来ていただきやすいと思います。
少し残念なことに、SNS等での事前のイベントの告知にいいねをしていただいても、その方が現地にいらっしゃるとは限らず、実際ブースに足を運んでくれるのは、(事前の告知を見ていない)当日のイベントの参加者がほとんどです。ですので、せっかく私たちのブースに来ていただいた際には、子どもたちがワークショップを楽しむついでに、私たちのサステナブルな取り組みについて、保護者の方々にご紹介させていただいています。
また、正直なところ、社外への発信についてはまだまだ改善の余地があると感じています。私たちのインスタグラムをフォローしていただいている方には「フードドライブをよくやっているね」「楽しそうな探検イベントをやっているな」といったメッセージは伝わっていると思います。
ただ、インスタグラムの利用者は若い方が中心ですし、利用していない方にはパンフレットをお配りしてアプローチしていますが、実際お会いする時でないと伝えられないことや、パンフレットの情報が古くなってしまうため、即時性が低いという課題があります。
さらに、現在私たちの活動はIR情報など、弊社の株式を買っていただくような方がご覧になる場所に掲載されていません。そういった将来を先読みされたい方々にもご理解いただけるような取り組みをしていると思いますので、より幅広い場面で私たちの活動を発信していけたらなと思っています。
――対外発信について、さまざまな課題が見えてきたのですね。今後は株主なども含め、幅広いステークホルダーに即時性のある情報発信を行っていきたいということを理解いたしました。
若手の志:冨永さんの目指す「地域との共生」
――最後に、冨永さんは入社2年目ということで、若手として今のお仕事は楽しんでおられますか?
冨永さん:大きな目標は、地域の皆さんや弊社の従業員を含め、「みなさんがいきいきと楽しく生きていけること」だと思っており、その目的に向かうまでの手段で、「ちょっと苦しいな」ということはありますが、お子さんの笑顔を見たり、喜んでいただけたりしているところを目の当たりにできる部署でもありますので、そのような点に大変やりがいを持って楽しく活動しております。
――素晴らしいですね。冨永さんの大きな目標がぜひ達成されるよう、私たちも陰ながら応援しております。
まとめ
今回はスーパーマーケット/ドラッグストア等を展開するバローホールディングスのサステナビリティの取り組みをご紹介しました。
バローホールディングスは、「持続可能な社会の実現に向け、事業活動を通した全員活動によって地域社会の発展と社会文化の向上に貢献します」というビジョンを掲げ、「フードロス」「リサイクル」「エネルギー・水」「地域社会」「買物課題」「人材活躍」の6つの分野で課題解決に取り組んでいます。
その活動の特徴的な点は以下の3つです。
① 地域社会への貢献意識が強く、地域とのつながりを重視している
② 活動において「双方向性」を重視し、従業員参加型の取り組みや、情報発信やイベントなどを通じたお客様や地域との双方向コミュニケーションを目指している
③ 最も力を入れてきたフードドライブでは、着実に店舗と子ども食堂などの寄贈先をつなぐことで、60店舗以上でフードドライブポスト設置を達成
冨永さんのような若手が活躍されているのは素晴らしいことだと感じました。企業に対してSDGsへの対応やサステナビリティ推進が求められる中、サステナビリティ人材の必要性も高まっています。今後、そのような役割に積極的に若手を登用することで、企業は多様性があり、活力のある会社へと進化していくことができるのではないでしょうか。
あなたの会社の若手にも、きっと有望な人材がいるはずです。
冨永さん、ありがとうございました!
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