サステナビリティ先進企業紹介|外食産業のパイオニア、ワタミが描く幸せのカタチ(前編)
こんにちは。最近では食品ロス削減やリサイクルなどサステナビリティに取り組む企業が増加しています。
そうした中、今回は外食産業のサステナビリティ先進企業である、ワタミ株式会社のサステナビリティの取り組みについて、SDGs推進本部長・百瀬則子さまに「ワタミサスティナブルレポート」の内容を中心に、取り組みのポイントをうかがいました。
前編では、ワタミが取り組むSDGsや、社会貢献活動のお話を紹介します。
公益財団法人流通経済研究所
上席研究員 石川 友博
研究員 寺田 奈津美
SDGs日本一を掲げ、「地球上で一番たくさんの“ありがとう”を集める」ことを宣言
―—2018年にSDGs宣言、2019年にサスティナブル方針を発表されていますが、これらはどのような経緯を経て、今の形になったのですか?
百瀬さん:私がワタミに来た2019年に渡邉美樹社長も政界からワタミの会長に復帰すると決められた頃でした。その時、会社に戻ってきた理由の一つにSDGsの主旨に賛同され、そこで、どういう会社にするのか、となった時に、「SDGs日本一」を旗印に、SDGsに取り組むことに決めたのです。
また、ワタミでは年に2回、社員の「全員会議」があります。関東エリアと関西エリアに分かれて、それぞれ数百人の社員が集まって経営方針について話すのですが、そこで渡邉社長が「自分たちはSDGs日本一の会社になる」というSDGs宣言をしました。
SDGs宣言の「一番たくさんの“ありがとう”を集めます」というのは、ワタミグループのスローガンの中にも入っています。お客様や関係のある方々の役に立つこと、そして地球環境にも喜んでもらえることをしましょう、というのが一つの考え方です。
そして、「地球上で一番たくさんの“ありがとう”」の中には、人間だけではなく、生き物だったり、海だったり、木だったり、鳥だったり、そういった関係のある人や生き物たちに対して役立つことをしようという意味であり、SDGsの精神そのものなのです。
ワタミの環境・社会貢献活動の歩み
――ワタミさんはそれ以前から環境や社会貢献の活動に継続して取り組まれてきましたよね。それまでの取り組みについて教えていただけますか?
百瀬さん:ワタミの環境への取り組みが本格的に始まったのは1999年で、外食産業では初めてISO14001を取得しました。それから約10年後の2010年に「エコ・ファーストの約束」を環境大臣と取り交わしました。これは、各業界のトップランナー企業がムーンショット目標を掲げて、その目標を達成すると約束するものでした。(現在、エコ・ファースト認定企業は2023年4月時点で合計66社、外食ファストフードチェーンはワタミ1社のみ)
その頃、外食産業では資源循環に力を入れている企業はほとんどありませんでした。そうした中で、なぜワタミが選ばれたかというと、ワタミは事業で出る食品廃棄物を自ら集めて、それを堆肥にして、自社で使うというサーキュラーエコノミーをやっていたということと、オリジナル日本酒のガラス瓶を回収してリユースするという取り組みの2つが特別優れているということで選定されたそうです。
社会貢献活動:障がい者の方々のためのお食事会
――その頃からワタミは環境や福祉に対して思い入れの強い企業だったのですね。
百瀬さん:はい。例えば、地域貢献の一環として障がいのある方たちを店舗に招待し、お食事会を開催しています。
知的障がい者施設にボランティアで行ったときに、ある青年が「僕はもう20歳になったんだけど、居酒屋に行ったことがないんだ。自分たちは大きな声を出したり、騒いじゃうんで、先生たちは行っちゃダメって言うんだ」という話をしていたので、それを聞いていた居酒屋の店長が、「じゃあ、うちの店に来ればいいじゃないか」ということで始まりました。それから現在まで十数年にわたって、居酒屋の営業時間前に施設の方たちをお呼びしたお食事会が続いています。
開催の仕方も、用意した料理を出すパーティー形式ではなく、ちゃんと居酒屋らしく、「今週のおすすめ」があり、ビールももちろん注文できます。近隣店の店長たちが自主的に応募して、厨房やホールのプロとして各自が得意な役割を分担して開催するので、準備の様子を見に行くと、食材を切っているのが当社の〇〇部長、ジョッキを持って運んでいるのが〇〇事業部長だったりします。
新入社員などの若手はビンゴゲームなどのエンターテインメントを一生懸命やってくれます。その時に一番若い社員が朝礼で「障がいのある方たちに外食を楽しんでいただくために奉仕させていただきます。また、これからお店でそういう方たちが見えた時にも、自分たちが経験を積んで、ちゃんと対応できるようにいたします」というようなことを言うのです。
――社員にとっては社会貢献の実感が持て、働きがいの向上につながるプロボノ活動といえますね。
百瀬さん:SDGsに照らし合わせて言えば、このお食事会は11番の「住み続けられるまちづくり」に当てはまるとも捉えられます。例えば地域にいらっしゃる障がい者の方でも、「自分たちだって外食を楽しみたい」とか、「お酒も飲んでみたい」という人たちに、「ワタミの店だったら楽しんでもらえるんじゃないの」ということが、外食であるワタミならではの「住み続けられるまちづくり」なんじゃないかと考えています。
住み続けられるまちづくり:宅食事業とみまもりサービス、お弁当のプラ容器リサイクル
――「住み続けられるまちづくり」というキーワードがありましたが、お食事会の他に、どのようなことに取り組まれていますか?
百瀬さん:宅食事業では、料理や買い物が自分ではできなくなった高齢者に25万食のお弁当を届けており、毎日お弁当を届ける際に安否確認をする、みまもりサービスも行っています。
最初の頃は、自分たちの事業としてやっていたのですが、途中からは、例えば、市からの「この300世帯に毎日お弁当を持っていってあげてください」という配食サービスの依頼に対応したり、高齢者施設にお弁当を届けるというような、公共の事業に近いようなこともやっています。
さらに、宅食で使用するお弁当箱のプラスチック容器のリサイクルも行っています。当初、重箱のように洗って使えるリユース弁当箱を使っていたのですが、それでは帰り便に同じ容量の荷物を載せなければならないことや、洗浄作業などの手間がかかるということで、使い捨てのプラスチック容器に変更しようという方針に決まりかけました。しかし、私が海洋プラスチック汚染につながるため、やめた方がいいのではないかと指摘すると、「わかった、じゃあ容器を集めてリサイクルしよう」ということで、お弁当の容器回収リサイクルが始まりました。
具体的には、お弁当配達の際に、前日の容器を回収し、再生工場に持ち込んでケミカルリサイクルでもう1回プラスチックに再生し、お弁当のふたの材料にするという取り組みを2019年から行っています。
県や市では、従来の法律だと一般家庭から許可もないのに廃棄物を集めることはできないのですが、環境省がプラスチック新法を作るためのプラスチックリサイクルの実証実験を行っていたため、それを利用してリサイクルを実施することができました。実証実験が終わった2021年には法制化されたので以降はそのまま取り組みを続けていて、2022年度の回収率は54%になりました。
※中編では、サスティナブル目標と5つのSDGsタスクフォースについてうかがったお話を紹介します。
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