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ここ一年のこと

メモ

暇だ。暇で暇で仕方がない。
世の中はよくわからない伝染病が流行し、予測のつかない日々にてんやわんやになっている。僕はというと仕事が休業になり、自宅待機の日々が続いている。

 僕は子どもを相手に美術の先生をやっている。幼稚園にお邪魔して教室で工作や絵を教えたり、放課後は小学生に指導している。でもさすがにこの世の中の状況では教室はできず、かれこれ2ヶ月以上は自粛状態だ。
 
 形はどうであれ美術で飯を食えるようになって、少しだけ嬉しい。この仕事は学生時代から少し前までアルバイトとしてやっていた。もちろんそれだけだと飯は食えないので、寺◯心くん系の古本屋で掛け持ちバイトしてた。フリーターだ。

 古本屋のバイトはものすごく楽しかった。一緒に働いている主婦の方、僕と同じフリーターの人もとても優しく仕事を教えてくれたし、僕がやらかした時もちゃんと叱ってくれた。とても良い環境で仕事ができてた。 
 このまま緩くダラッと働いているのも悪くないなーとも思った。でもこの生活を続けていても、自分はこれ以上前進できないんだろうな、っていう感覚が常にあった。それが凄く怖くて、僕は掛け持ちしてた美術教室に就職した。この選択肢が正解かはわからないけど、僕は少し前の自分から一歩進めているとちゃんと思える。

 話は変わって表現活動のこと。1年ちょっと前まで、僕は大学の仲間とバンドを組んでいた。やっていたのは普段自分でもあんまり聴かないジャンルの音楽で、エモとかハードロックの類。SimとかロットンとかColdrainとか多分そっち系。重めのギターサウンドに、ボーカルが叫ぶ感じのバンド。
 僕はそのバンドでツインボーカルをやってた。大学の課題でくそ忙しい中、毎月2本程度ライブを行い、シコシコと活動してた。大学卒業間近になって、バンドを継続することが必然じゃなくなったとき、爆竹みたいにメンバーは爆散して、バンドは解散した。

当時、僕は本気で「自分のやりたいことで成功しないと生きてる意味ないぜベイビー」とか思ってた。だから、バンドの解散は当時の僕の中では超重大な出来事だった。

メンバー間でバンドをやりたい意思がある人でまた新しく組もう、という話が出たとき、集まったのは僕とずっきゅんだけだった。
ずっきゅんは前のバンドで僕とツインでボーカルをやってたやつだ。ボーカルしかいない状況だったけど、やらないなんて選択肢はなかった。

「アルレッキーノで良いんじゃない?」
白日リリース直後のKing gnuのライブを観に行った帰り彼は言った。アルレッキーノはイタリアの喜劇に出てくるキャラクターらしい。「キーノ」って響きが可愛いね、ってことで、なんとも適当だが二人で組むロックバンド名は「アルレッキーノ」に即決した。早く何か作らなきゃという焦燥感に駆られてたから、バンド名とかは正直どうでも良かったのかもしれない。

ライブなんかやっても、わざわざライブハウスに足を運んでくれる人なんてごく少数であることは、前のバンドで散々身に染みて理解していた。話し合いの末、ひとまず音源とMVを作ろうという話になった。

最初は残ったメンバーで始めたバンドだったが、意外とやりたいことは合致していた。その上ずっきゅんは変だけど良いやつで、二人きりでも気持ちは楽だった。

彼とは毎晩10時半にできるだけ電話で打ち合わせをすると条約を結び、週5、6で電話会議した。
そんな忙しない日々が続き、いろいろあって今に至る。いまだに10時半には極力電話で話すようにしている。アルレッキーノを結成してからもうすぐ一年。ここには書ききれないくらい色々なことがあったけど、バンドが生きる糧になっている。


世の中は大変で、自宅での退屈な日々は僕のメンタルを蝕んでいるのだけど、それでも生かされるしかないなぁ、とやや諦め気味に生きている。