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フランス生活いろいろ その4 : 高等教育機関への願書提出

(実は4月頃に書いたものです)通常、高校3年生は6月にバカロレアという名の高校卒業資格試験を受け、進学希望者はこれに合格してから高等教育機関へと進む。日本のセンター試験のようなものだと言えるが、これが大学入学のためでなく、高校卒業のためにあるというだけの違いだろう。高等教育機関には、選抜型と非選抜型の学部(非選抜型とはバカロレアに合格した者であれば誰でも登録可能という建前のもの)、グランゼコールというエリート養成学校の入試対策を目的とした準備クラス(通称プレパ、東大京大専門の予備校と思ってもらえるとわかりやすい)、各種専門学校などがある。以前はバカロレアの結果が7月初旬に出て、それから高等教育機関の合否が決定していたはずで、高校3年生の夏はゆっくりバカンスに出られないという保護者たちの嘆きを、よく耳にした。

長男の代からバカロレアのシステムが大幅に変更になった。以前は高校2年生に進級する時点で理系、経済社会系、文系のいずれかを選択。そのコースに従い履修教科が異なった。理系なら数学-物理科学-生物化学、経済社会系なら(理系よりは簡単な)数学-経済社会-地政学、文系なら文学-外国語-歴史に加え、共通科目があった。ある意味単純だった。そして試験の結果のみで合否が決まった。今は自分で自由に専門教科を組み合わせられる。2年生で専門科目を3つ選択し、3年生でそのうちの2つに絞る。例えば医学部進学希望者は2年生で数学-物理科学-生物化学を選択し、3年生で物理科学-生物化学に絞り、補足数学というオプションを選ぶ。2年生で数学を選択した者のみが、このオプションを選択可能。法学部でも数学履修を推奨しているので、このオプションが役立つ。方向性が定まっていない生徒は極端な話、物理と経済と文学を同時に選択できる(もちろん先生方からNGが出る可能性は高いが)。そして本番の試験結果だけでなく、「内申点」を重視する。一見、より自由でフレキシブルになったと思いがちだが、高校1年の時点で自分のやりたいことを明確にしないと、その後修正するのが非常に困難、さらには不可能なシステムとなった。2年生の時点で数学を選択しなければ、理系はおろか経済社会系へも進学できなくなる。すなわち2年生で数学を選択しない、イコール完全文系しか道がなくなる。

願書提出はParcoursupと名づけられた全国統一プラットフォームを通してオンラインで実施される。まず自分のやりたい学問やキーワードで検索し、進学希望する教育機関をリストアップする。数に限りもあり、確か最大で10校とか20校までだったと思う。その後仮の願書提出を3月11日23時59分までに行う。それからひとつひとつの機関へ志望動機書を作成し、4月8日23時59分までに願書提出を確定する。志望動機書に何を書いていいかわからないと言う長男のために、私が第一希望の学校用に一通書いてあげた。これをもとに自分の言葉で書けばいいと思ったからだ。これが3月初旬のこと。その後何度となく進捗状況を尋ねたが、まだやってないけれど大丈夫とのことだった。締め切り1週間前に高校の学年主任から「長男くん、願書提出の確定がまだひとつも終わっていません。急ぎましょう。」という内容のメールが届いた。「学校側はそんなことまで知っているのか」というのが、その時の感想だった。長男が担任の先生と進路について話したのはほんの数分で、「長男くん、進路は?」「ビジネススクール受験のためのプレパに行きたい」「それはいいわね」程度の会話だった。実は9月の新学期に長男のクラス担任となった先生は、1月の年明けに長期休養に入り、一時期担任の先生がいない状態だった。その時に長男が信頼を置いている哲学の先生とリモート面談をしてもらい、進路については相談済みだった。だから新しい担任の先生との面談は特に必要ないと判断したわけだが、こうした担任の先生とのやりとりを長男から聞かされていたから、学校側はものすごく放任主義なんだなと思っていた。進路選択は生徒と保護者に任せるけれど、「期限だけは忘れないでね、1秒でも遅れたら進学できないよ」ということなのかもしれない。最終日には「このメールを受け取った者は、願書提出を完了していない教育機関が最低でもひとつあります。急ぎましょう。」というメールが届いた。宿題などのやるべきことを終えたら、その後好きなだけ遊んでいいという教育方針で来たが、長男は何事もギリギリにならないとやらない。短い時間で取り組んだほうが生産性が高いのは科学的に証明されているとか、生意気なことを言い訳にしているが、こいつは人生をナメている。最終日にプラットフォームへのアクセスが集中して回線パンクなんてことになったら、人生計画が完全に狂うとか想像できないのだ。危機管理能力が無さすぎる。もう勝手にしろ!と言いたいところだが、最終日に長男はすべての願書提出を終えて就寝した後、私は念のためプラットフォームでそれを確認し、やっと安心することができた。やれやれ…

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