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食べるのが好きなお婆さん
この文章をごらんになっている方々、ようこそおいでになりました。
最近は食べ物の好き嫌いではなく人の好き嫌いが激しい人が多いそうで。
すぐに付き合いを止めることができるネットでのやり取りばかりしている人が多いそうです。
「誰かとやり取りがしたいな、よし、このサイトでやり取りをしよう、ダメなら止めれば良い」
と、このような感じで。
私に言わせれば妙に薄いというか細いというか、とにかく頼りない付き合い方をする人が多いそうです。
これもスマホやタブレット、パソコンを使ったやり取りが流行っているせいかもしれませんね。
その点それらが登場するまではそんなことはなかった、いつでも直接のやり取りが多いから力強い関係が多かったものです。
電話のやり取りは無かったかって?
それは勿論ありましたが携帯電話が普及してなかった頃ですからね。
自宅なら固定式電話で掛ければ良かったので問題ありませんでしたが外出している時はそうはいきません。
電話はないか、電話はないかと公衆電話を探し求めるしか有りませんでした。
一言で言えば不便そのものでした。
そんな時代で生きていたせいか我が家のお婆さんは恐ろしく人付き合いに関して強い人だったのを覚えています。
誰に対してもガンガンぶつかるし、言いたいことはすぐに言いまくるし。
とにかく強烈なお人でした。
このように言っていると自分勝手な迷惑な人物のように感じるかもしれませんがそうではありません。
いつも人のことを考えていて思いやることができる、そんな人でした。
おまけに気質が竹を割ったように真っ直ぐそのもの、清々しさを感じる生き方でした。
そのせいで嫌われるということは無かったようです、まぁ迷惑がられることはしょっちゅうでしたがね。
あのお方のことを思い出そうとすると思いつくのが毎日畑仕事をしてたことですね。
毎日何キロもの道のり、というか上り坂を上っていき畑に到着、それから日が暮れるまで仕事をして日が暮れたら坂を下って帰宅。
こんなことを何年も当たり前のようにしていましたよ、常に体を動かして怠けない、その行動力には今でも叶う気がしませんね本当に。
そのように活動的かと思えば大好きなのが本を読むことで学ぶことというから本当にたいした物でした、高齢になっても勉強するというのが本当に凄いですよね?
こうして書いてみるとえらい人でしたねうちのお婆さんは。
でもまぁあの人は色々と凄い人でしたが1番凄いと感じたのはやはり人間性でしたね。
自信に満ちあふれていたけど自分を特別扱いすることはなく、どれだけ大変でも笑顔を絶やすこと無く、強いとはこういうこと、器の大きな人とはこういう人、そう学ばされたものです。
そんな強いお婆さんもとうとう亡くなる時は来ました。
その時はこの人でも亡くなるんだなぁと驚いた物でした。
今まで強烈な存在感を示してきたお婆さん、それが亡くなる時が来たらもの凄く悲しいんだろうなぁ、そう考えていました。
けれども意外なことに衝撃はそれほどでもなかったという。
それはあの人が私の中にそれだけ強烈に存在しているということなんでしょうね。
ふとした時に「こういう時にお婆さんならこういうこと言っていただろうなぁ」とか「こういう風にしていただろうなぁ」とか考えてしまい、寂しさをそんなに感じないんですよ。
時々あの人の声を聞くたびに温かさとほんの少しの寂しさを感じる、そういう思いをさせてもらっています。
ごらんになっている方の中には「わかるわかる」という方もいると思います、そういう人がいるのっていいものですねぇ。
そんな凄いお婆さんでしたがやはり欠点も当然ありました、やはり人ですからね。
ではそれはなにかというとよく食べるということでした。
お菓子を買ってきておいておくと気がつけばカラになっているという。
とにかくよく食べる人でした。
それに好き嫌いも殆ど無いという凄さでして、迂闊に食べ物を置いておくことができませんでした。
まぁそれくらいなら笑い話で済ませることもできるんですが有る時にはえらいことになったことがありましたよ。
以前は年末に我が家では餅つきをするのが恒例になっていました。
杵つきの餅は格別な美味しさですがつきたての餅は更に格別な味でした。
なので食べさせてあげたら急いだせいか喉に詰まらせてしまいました。
いやー、あの時は焦りましたよ、危うく一巻の終わりというところでした。
このように、あちこちに旅行して飛び回ったり色々食べまくったり。
あらゆる人と会話したり学びまくったりして活躍しまくったお婆さんも亡くなって随分立つものです。
色々学ばせていただいた感謝もあり本当に尊敬している人の一人です。
ですが私がこんなことをいってもあの人はいい気になったりしないと思いますがね。
「こんなくそ婆、尊敬なんてしてもなんにもならんぞ」
ほらまた笑いながら言ってるのが聞こえた。
こういう人への敬意や感謝はなくさないようにしたいものですね。
では