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ビットコインは短期ホルダーの悲鳴待ちか

いつも読んでるGlassnodeレターを要約しました。
過去同様に短期保有者の損益分岐点を境に市場のセンチメントが大きく変わりそうです。(この話は目次の重要な部分から)

原文


1. 市場全体の現状と動向

  • ビットコインのレンジ推移
    ビットコインは現在、約93,000~97,000ドルのレンジで取引されており、直近の105,000ドル突破への試みから、勢いが大幅に冷え込んでいます。これは、主要資産全体で見られる勢いの減退を反映しています。

  • 市場の収縮局面
    1月末のビットコインの上昇ラリー後、市場は急速に収縮と調整局面に入り、価格モメンタムが各資産で急激に減少しています。これは、強い上昇局面で一時的に資本が集中的に流入した後、リスク回避の動きが強まった結果と考えられます。


2. 資産別パフォーマンスの比較

  • ビットコイン
    2023年4月時点に比べて約3.4倍の水準まで上昇。比較的堅実な軌跡を描いているものの、上昇後は調整局面に入りつつあります。

  • イーサリアム
    同期間で1.3倍~2.0倍の成長に留まり、他の主要資産に比べると伸び悩んでいます。直近の調整では、ビットコインに比べパフォーマンスはやや劣勢。

  • ソラナ
    2023年からピーク時は11.8倍の上昇を記録していたが、現在は約7.6倍にまで押し戻されました。ソラナは高いボラティリティと共に、資本流入の恩恵とその後の急激な調整の両面が顕著です。

  • メムコイン
    2023年以降、急激な価格上昇を経験していたが、直近の数週間で最も大きな下落率を示しており、投資家のリスク嗜好の変化が反映されています。


3. 資本流入・流出の動向

  • 流入の傾向
    ソラナは過去2年間にわたり、相対的に大きな資本流入を記録し、強い価格上昇を支えてきました。一方で、イーサリアムは資本流入が弱く、パフォーマンスの低迷が続いています。

  • 直近の資本フローの変化
    最近の動向として、全体的に資本流入が低下しており、特にイーサリアムと主要メムコインは実現時価総額(Realized Cap)の変化において、わずかではあるもののネガティブな流れ(資本流出)に転じています。


4. 先物市場とファンディングレートの状況

  • 先物市場の建玉(Open Interest)の減少
    過去30日間で、以下の資産において先物の建玉が大幅に減少しています:

    • ビットコイン:-11.1%

    • イーサリアム:-23.8%

    • ソラナ:-6.2%

    • メムコイン:-52.1%
      これにより、レバレッジを利用した投機活動が縮小していることが示唆されます。

  • ファンディングレートの低下と市場心理
    ビットコインとイーサリアムはわずかにプラスのファンディングレートを維持していますが、ソラナはネガティブに転じ、メムコインはさらに大きくネガティブな水準となっています。これらは、短期的なロングポジションの減少およびベア(弱気)のセンチメントが強まっていることを表しています。


5. ETFの動向と市場参加者の動き

  • ビットコインETF
    一時、大口の資金流出(1日あたり200百万ドル超)が発生しましたが、その後は買い戻しが進み、世界のスポット取引量の約8%にまで影響力を取り戻しています。これは機関投資家が「安値買い」を狙う動きと解釈されます。

  • イーサリアムETF
    ETFによる資金流入はほぼ横ばいで、機関投資家からの強い需要は確認されず、ビットコインとの間で明確な需要差が生じています。


6. 短期保有者のコストベースと転換点

  • 短期保有者(STH)のコストベース
    ビットコインは、直近の短期保有者のコストベースである約92,500ドル付近で取引されています。過去の事例(May 2021、Nov 2021、April 2024、Feb 2024)では、この水準を境に、買い手の心理が大きく変わり、利益確定売りや損切りが連鎖的に発生する傾向が確認されています。

  • 下落リスクの示唆
    この92,500ドルを下回ると、多くの直近の買い手が含み損状態に入り、パニック売りが市場全体の下落を促す可能性があると分析されています。また、統計的には、このコストベースから約1σ下の71,600ドル付近まで下落するパターンが過去に観察されていることも注目されます。


7. 今後の市場展開と結論

  • 調整局面からの転換点
    過去のATH更新後の調整局面では、実現供給密度の変化とともに、市場参加者間で再び新たな均衡が模索される段階に入っていました。現在も同様に、ビットコインは比較的安定したレンジ内で取引されているものの、他の資産は調整が深刻化しており、次のトレンドの発生が近いと見られています。

  • 今後のシナリオ
    もし買い需要が持続すれば、ビットコインはATH(史上最高値)を上回る新たなレンジを確立する可能性があります。しかし、買い圧力が弱まる場合、直近の買い手のパニック売りが連鎖し、より深い調整局面に突入するリスクがあると示唆されています。

重要な部分


短期保有者のコストベースとは

定義と意義
短期保有者(STH)のコストベースとは、直近の買い付けを行った投資家たちが平均してどの価格でビットコインを取得しているかを示す指標です。これは、投資家の心理的な利益確定ポイントとして機能するため、価格がこの水準を上回っている場合は多くの保有者が含み益状態にあり、逆に下回ると含み損に転じ、売り圧力が強まるリスクがあります。


現在の水準と歴史的背景

現在の状況
レポートでは、短期保有者のコストベースが約92,500ドルであると示されています。この水準は、直近の市場での新規買い手が多く集まった水準であり、価格がこのラインを下回ると、保有者が一斉に損切りに動く可能性が高いと分析されています。

過去のパターンとの比較
過去のサイクル(例えば、2021年5月、2021年11月、2024年4月、2024年2月)では、ビットコインが新たな史上最高値(ATH)を更新した直後、この短期保有者のコストベース周辺で調整が始まる傾向が観察されました。特に、コストベースから約1標準偏差(σ)下、すなわち約71,600ドル付近まで下落するパターンが見られ、このレベルが一種のサポートラインとして機能していた事例があります。これにより、現在の92,500ドルのコストベースが、今後の下落リスクや転換点として注目される理由となっています。


市場心理と投資家行動への影響

心理的な転換点
短期保有者のコストベースは、多くの新規投資家が比較的近い水準で参入していることを示しており、価格がこのラインを下回ると、直近に買い付けた投資家が自らの資産評価損に直面します。これは、損切りや利益確定の動機となり、結果として売り圧力が一気に高まる「パニック売り」につながる恐れがあります。

市場の転換シグナル
また、コストベース周辺の供給密度が高い場合、売り圧力が集中しやすくなります。つまり、過去のATH更新直後に発生するポストラリー調整は、短期保有者のコストベースに沿った動きとして現れることが多く、今後の価格動向においても、この水準が市場の転換点として機能する可能性が高いと考えられます。


今後のシナリオとリスク

上昇局面の場合
もし買い需要が引き続き強く、価格が92,500ドルを維持または上回る状態が続けば、投資家心理は安定し、次の上昇局面に向けた足がかりとなる可能性があります。市場参加者はこの水準で含み益を享受し、さらなる買いが誘発されるかもしれません。

下落局面の場合
一方で、価格がこの重要なコストベースを下回った場合、直近の買い手が損切りに走るリスクが高まります。これにより、売りが連鎖的に発生し、過去のパターンと同様に一気に下落する局面に突入する可能性があります。特に、1σ下の約71,600ドル付近が次の支持線として働く可能性があり、このレベルまで下落するシナリオも視野に入ります。


結論

短期保有者のコストベースは、ビットコイン市場の短期的な転換点を示す極めて重要な指標です。現在の約92,500ドルという水準は、今後の市場動向を左右する可能性があり、これを下回るかどうかが市場参加者の行動に大きく影響するでしょう。過去の事例からも、この水準を境に大きな調整が発生しているため、今後の価格推移を注視する上で不可欠なポイントとなっています。

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