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大人の「現代文」……『羅生門』7 芥川の「無理」

「唯ぼんやりとした不安」って?

 大変不幸なことですが、『鼻』を漱石に激賞されて文壇に華々しくデビューした芥川龍之介は三十五歳で自死しました。その理由が「将来に対する唯ぼんやりした不安」ということでした。

 でもちょっと考えてみればわかるように、これは変ですよね。「将来に対する唯ぼんやりした不安」を抱かない人ってそもそもいるんですかね。

 私は、この言い方の「唯」という言葉がすごく気になるのです。これほんとに「ただ」なんですかね?しかも「ぼんやりした」不安でしょ。ひとは常識的に「ただ」「ぼんやりした不安」で、死ぬものでしょうか。

 私は、「ぼんやりした不安」は事実と違うと思います。おそらく彼が抱えていた内面の不安は「ぼんやりした」なんかではなく「重くのしかかる重圧」だったはずです。また、それをわざと、「ただ」という言葉であっさり表現した「ムリ」にホントの理由が潜んでいるように思えるんですが、どうでしょうか。

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