就労移行「向いてる人」と「向かない人」
最近、急激に障害者の一般企業への就労を目指すための訓練や指導を行う「就労移行支援」が増加しています。
この就労移行支援が向いている障害者と向かない障害者について、話をしていきたいと思います。
※ここでは、精神障害者・発達障害者・知的障害者の3障害のいずれか、もしくは複数がある人を想定しています。
1 就労移行支援についての詳しいこと
就労移行支援とは、障害福祉サービスの一つであり、主として「一般企業への就労が可能と見なされる障害者、一般企業への就労を希望する障害者に対して一般企業での就労に必要な知識・技術を習得させるとともに、就労に必要な訓練を行うもの」です。
ですからこれを利用する障害者は「地域生活が可能なレベル」もしくは「地域移行段階」の障害者になります。
実際に就労移行の見学や実習に行くとわかりますが、就労移行にいる障害者は全体的に軽度~中等度です。
制度の建前上、就労移行は「訓練すれば一般で配慮を受けながら勤務できるレベルが来る」ところなので、重度や最重度の人はほぼいません。
手帳で言えば3級と2級が大多数です。1級は極めてまれにいる程度です。
また、就労移行支援は、障害者作業所(A・B型)と比較しても圧倒的な就職実績があり、利用者の約半数は就職します。
そのため、人気があり、就労移行の施設がたくさんできています。
2 就労移行支援の実態とレベル
就労移行支援では、基本的に利用者の自己管理が強く求められます。
福祉的就労よりも、自立を求められるからです。
ですから、訓練の記録やデータのまとめも原則本人が行い、支援員はそれを確認して指導をします。訓練の記録などを自力でできない場合は、もちろん支援がありますが、最終的には「一人でしっかり記録・管理ができること」を目指して訓練を受けます。
就労移行支援によっては、実際の就労を想定した施設内実習を行うことがあります。これは支援はつきますが「利用当初から参加」が原則です。
つまり、支援や助言はしっかりつきますが、利用開始して間もない時期から、こうした実践的訓練への参加をすることになる場合が多いです。
また、一部ですが、こうした実践的訓練の時間帯に関しては「工賃(給与に相当するもの)」が支給されることもあります。
見方を変えれば、早期のうちから仕事を見据えて訓練できるサービスとも言えますが、その反面、利用者には比較的高度な自己管理を要求されることになるのです。
3 就労移行支援が向いている人
就労移行支援は以下のような人に向いていると言えます。
・自分の障害を理解しており、配慮してほしいことを伝えられる
・日常レベルの生活は自力でき、苦手なことも助言されればできる
・できないことはできないとはっきり主張できる
・自己理解をする姿勢、意欲がある
・指示されたことは助言を受けつつも最後までやり通すことができる
・貴重品の管理を自分でできる
・体調不良時は自分から相談をしに行くことができる
・適切な相手に助けを求めることができる
太字で記入している項目は、特に重要となる項目です。
これができないと、厳しいと感じるかもしれません。
4 就労移行支援に向かない人
就労移行支援は以下のような人には向かない可能性があります。
・病状が悪く、入院レベルに近い状態である
・退院して間もない状態である
・日常レベルの生活に介助が必要
・できないことや困りごとを主張できない
・指示されてもできない
・体調不良時に相談ができない
・貴重品をしばしば忘れる、落とす、なくす人
・挨拶レベルの会話も難しい人
5 就労移行についてのまとめ
基本的に、就労移行支援には、軽度~中等症の精神・発達障害の方が向いています。そのうえで、さらに上でも述べたように、自己管理や自己理解ができ、必要な時に支援や助けを求めたり、相談するなど、主張ができることが求められます。
就労移行支援には、確かに良い側面もあります。
例えば、有名企業の特例子会社などに入社できれば、社会的にはそこそこのステータスを得ることができます(障害者雇用であることを自分から進んで言う必要はないので、会社名だけを見れば、それなりの評価をされる)
また、将来的に障害者雇用から一般雇用への移行を目指している方にとっても、就労移行では障害者雇用以外の就職にも制限はありますが関与し、支援できるので、一般で働きたい人にも魅力的でしょう。
しかし、就労移行支援には、例外はありますが、原則として工賃の支給はありません。そのため、多少なりとも収入を得ることはできない場合が多く、障害年金があったり、家族の支援を受けられないと、なかなか利用が難しい場合もあります。
そのほか、就労移行では、就職実績が悪い場所もあり、当たりはずれが強いです。職員との相性や雰囲気との相性もあります。作業所よりは自立度が高いとされる人が来ますから、人によっては苦痛を感じるかもしれません。
また、できないことも多少できるようになろうと言った前提の訓練が行われることが多いため、苦手なことにも果敢に挑戦することが期待されます。
失敗したり、やってもできないことを責められることはないですが、やりたくないは通用しないと思ってください。
これらをよく考えたうえで、それぞれの施設の評判や冊子もよく確認したうえで、就労移行が向いているかを考えてみて下さるとうれしいです。
今回は以上となります、ありがとうございました。