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【#ちいハコ】Act.1 ep.6 上書きされる記憶

Act.1
“He is at the mercy of fate.”
episode 6


 「先輩!…アキラ先輩!」

 …ん

 「…やっと気づきましたか、先輩。」
 「椋介くん…。一体何が…」
 「それはこっちのセリフですよ。いきなり倒れたからびっくりしましたよ。」

 …そうか、思い出した…。
 あのとき、急に意識が遠のいて、気を失っていたんだな。

 「そうか…。すまなかったな、それは。」
 「別に、俺たちは大丈夫ですけど。…先輩、大丈夫ですか?」
 「ああ、平気だ。…それより、あの人たちはどうなった?」
 「…あの人たち?」

 まだ意識が朦朧としているのか、朧げにしか思い出せないが…

 「ほら、子連れの人に、理不尽にキレてた男と、その男に話しかけてた爺さんだよ。なんかその爺さん、変なこと言ってたし…」
 「…?そんな人たちいたか?」
 「いやー。いなかったな。」
 「だよなぁ。…先輩疲れて変な夢見ちゃってただけじゃないんですか。」

 同じ場所にいた2人がそう言うなら、そうなのか…。腑に落ちないが、たしかに昨夜、あんまり眠れてないしな。疲れているのか…

 「そう…かも、しれないな。」

 「おいリョウ、時間…」
 「えっ。…あ、やべ。」
 「遅刻するぞ」
 「ほんとだ。…先輩、すみません。俺たちもう行かなくちゃ。」

 7時前…、もうそんな時間か。僕もそろそろ行かないとな。

 「あぁ。…すまない、面倒見てもらって。」
  「いえ、そんなこと…。先輩、マジで休んだほうがいいですよ。」
 「…そうかもな。でも…会えてよかったよ、キミたちに。また今度飯でも食いに行って、色々話したいよ。」
 「えっ。えぇ、もちろん。じゃ、先輩。お大事に!」

 2人は軽く会釈して、颯爽と走り去っていった。もっとゆっくり話したかったな。椋介くんとワタナベくんと。ほんの少しの時間しか話してないけど、なんか、忘れてたことを思い出す、そんな時間だったな。

 それにしても。
なんだったんだろう…。あれはホントに夢だったのか…。

 やべ…このままじゃ遅刻するな。朝からこの人混みの中を走りたくないけど。行くしかないか。

 やけに人が多いな。
「すいません通ります。」「すいません」「ごめんなさーい、通りまーす」
 なんでこんな朝から謝ってるんだ僕は。もっと余裕を持って行動しないとなぁ…

 おっと、
 「すいません」
 「いえ…」

 危なかったぁ。ダメだなこの人混みを走ったら。さっきみたいに人とぶつかっちゃう。歩こう歩こう。

 さっきの人、なんかやけに帽子を目深に被ってたような…

 なにか喋ってる…?通話か?

 え、でも電話の類持ってないよな…

 あ、そんな。分析してる場合じゃない。

 乗り遅れる…。

 急げぇぇぇぇ


        to be continued…


*このシナリオはフィクションです。
実在の人物や団体・事件などとは
一切関係ありません。

Act.1
episode 7

2024

* * *

 ヤマアラシのジレンマ…
 人生との距離感…
 ペナルティ…

 あの老人、私がここに来ることを知っていたかのようだった。アクターじゃないのか…?

               * * *

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