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百条委員会での情報漏洩問題で処分されない議員の不思議
背景
2025年1月27日の百条委員会で、奥谷委員長が増山議員(維新の会)の情報漏洩に対する処分について言及しました。一方で、上野議員(県民連合)が百条委員会のメンバー構成についての裏話を外部の政治集会で話したことが情報漏洩ではないかという疑惑が浮上しています。
これらの問題について、どの法律で処分できるのかを検討してみます。
上野議員と増山議員の情報漏洩疑惑
上野議員は、百条委員会の構成を操作したことを自白し、議論の内容をMBSに漏洩した疑惑があります。
また、増山議員は元局長のPC内にあった情報を委員会内で発言し、SNSで引用したことが問題視されています。
県議会議員の身分
県議会議員は地方公務員の特別職にあたります。選挙で選ばれた公職は地方公務員特別職です。副知事も議会同意人事ですが特別職です。
(一般職に属する地方公務員及び特別職に属する地方公務員)
第三条 地方公務員(地方公共団体及び特定地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第二項に規定する特定地方独立行政法人をいう。以下同じ。)の全ての公務員をいう。以下同じ。)の職は、一般職と特別職とに分ける。
具体的には、斎藤知事、片山元副知事(現職時)、奥谷委員長、上野議員、増山議員、市長、市議会議員が該当します。
地方公務員法の適用範囲
地方公務員法によると、地方公務員特別職には多くの条文が適用されません。
(この法律の適用を受ける地方公務員)
第四条 この法律の規定は、一般職に属するすべての地方公務員(以下「職員」という。)に適用する。
2 この法律の規定は、法律に特別の定がある場合を除く外、特別職に属する地方公務員には適用しない。
以下に特別職と一般職の違いを示します。
服務規定: 一般職では服務の宣誓が義務付けられていますが、特別職には適用されません。
勤務時間: 一般職の勤務時間に関する規定は特別職には適用されません。
人事管理: 一般職の任用に関する規定(採用試験など)は特別職には適用されません。
分限: 一般職の分限処分(降任、休職、免職など)に関する規定も特別職には適用されません。
懲戒処分: 一般職の懲戒処分に関する規定は、特別職には基本的に適用されません。
給与規定: 一般職の給与決定に関する規定は特別職には適用されず、特別職の給与は別途定められます。
以上のように、選挙で民意により選ばれる公職は大きな権限を持ち、一般の公務員とは身分立場が異なります。
特別職である上野議員や増山議員は、議員として職務上知り得た情報を口外禁止の義務はありません。下記の条文は適用されないのです。
(秘密を守る義務)
第三十四条 職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また、同様とする。
口外したかが問題になるかの検討や身分については、兵庫県議会委員会(または議会)内で決定されることになります。
委員会で処分対象となった発言
元西播磨県民局長のプライバシーに関する約束は、死去翌日の2024年7月8日に開かれた百条委員会の緊急理事会で交わされました。
この会議で、元局長の代理人から提出された申し入れ書に基づき、プライバシーを守ることが確認されました。
上野議員が発言した情報は?
委員会メンバーの選定や意思決定に自分が関与した事実です。
今年の6月に百条委員会を設置する際、丸尾委員(無所属)、庄本委員(共産党)を委員に入れるように県民連合(立憲民主党)の上野議員が動いていたことが分かりました。
— 増山誠 日本維新の会 兵庫県議会議員 西宮市 (@masuyama_makoto) December 23, 2024
動画にあるように、一昨日開催された
【兵庫県知事選挙に異議あり!真相究明県民集会】
において、上野英一議員は… pic.twitter.com/1i5szEAthl
委員会の構成を操作したかのような旨発言し、物議を醸しました。しかし、局長の個人情報やプライバシーにかかわる情報ではないとするのが妥当です。
増山議員が発言した情報は?
増山議員が発言した情報は、百条委員会ルールでは元局長のプライバシーに言及したのだと委員長は主張しています。(35分くらいから増山議員発言)
つまり、増山議員は7月8日の理事会で確認した事項に違反したというのが、委員長の主張です。
仮に、増山議員が委員会内で発言した情報がプライバシーに該当したとしても、そうでなかったとしても、事の重大性の評価は百条委員長に権限があります。
結論
私見ですが、両者ともに法律違反はしていないように思います。
※私は法律の専門家ではありません。実は何らかの非違行為があり、刑事告発される可能性がゼロではないので、濁した言い方にしています。
委員会内での不適切な行為として処分するのは、上述の通り委員会内での裁量となります。この場合、委員会内での表決(多数決)と百条委員長に強い権限があります。
(表決)第12条 委員会の議事は、出席委員の過半数で決し、可否同数のときは、委員長の決するところによる。
(秩序保持に関する措置)第18条 委員会において、地方自治法(昭和22年法律第67号)、会議規則又はこの条例に違反し、その他委員会の秩序を乱す委員があるときは、委員長は、これを制止し、又は発言を取り消させることができる。
百条委員会内の多数決で決まり、百条委員長が発言制止取り消しができます。似たような行為であっても、政治的思惑次第で、処分有無を変えられてしまいますね。
以上が増山議員は処分対象となり、上野議員は処分されない理由です。
県議会選挙においていかに会派構成が大切か実感しますね。