アクアポニックス経営の実際 ~成功者たちの現場から学ぶ運営のすべて~第2部:知っておきたい技術とノウハウ
「一番の失敗は、魚と野菜、どちらを優先すべきか分からなかったことです」
創業4年目の鈴木さんは、過去を振り返ってそう話します。
「実は答えは簡単。魚のコンディションが全ての基本なんです」
水質管理の極意
【重要な4つの指標】
▼溶存酸素(DO)
・目標値:5-7mg/L
・確認頻度:毎日2回
・低下時の対策:
→エアレーション強化
→給餌量の調整
→水流の改善
▼pH値
・目標値:6.8-7.2
・確認頻度:毎日1回
・調整方法:
→貝殻の設置
→重曹の添加
→水の入れ替え
▼アンモニア態窒素
・目標値:0.5mg/L以下
・確認頻度:週2回
・対策:
→バイオフィルターの管理
→給餌量の見直し
→水温管理の徹底
▼水温
・目標値:22-26℃
・確認頻度:常時
・管理方法:
→夏季の遮光
→冬季の保温
→循環量の調整
「この4つさえ押さえておけば、80%は大丈夫です」と鈴木さん。
魚の育成テクニック
「ティラピアは意外とデリケートです」
【サイズ別の管理ポイント】
▼稚魚期(〜1ヶ月)
・水温:26-28℃
・給餌:1日4-5回
・密度:100尾/t
・注意点:
→水質変化に敏感
→共食いの防止
→サイズ選別が重要
▼中間育成期(1-3ヶ月)
・水温:24-26℃
・給餌:1日3-4回
・密度:50尾/t
・管理ポイント:
→定期的な選別
→活性の観察
→餌付きの確認
▼仕上げ期(4-6ヶ月)
・水温:22-24℃
・給餌:1日2-3回
・密度:30尾/t
・重要事項:
→肉質の調整
→出荷サイズの均一化
→ストレス管理
野菜栽培の要点
【生育ステージ別の管理】
▼発芽・育苗期
・温度:20-22℃
・湿度:65-75%
・注意点:
→光量の調整
→根の発達観察
→病害予防
▼定植後
・EC値:1.2-1.5
・pH:6.5-6.8
・管理ポイント:
→根張りの確認
→生育むら対策
→病害虫の早期発見
▼収穫期
・収穫基準の統一
・鮮度保持の工夫
・出荷調整の技術
病害虫対策の実際
「予防が最大の対策です」と鈴木さん。
【予防的アプローチ】
▼環境管理
・適切な温度管理
・湿度コントロール
・通気性の確保
▼モニタリング
・毎日の観察
・早期発見
・記録の徹底
▼対策の準備
・天敵生物の活用
・物理的防除の準備
・緊急時の手順確認
温度管理の工夫
「季節ごとの対策が重要です」
【夏季の管理】
▼遮光対策
・遮光率50%のネット
・可動式カーテン
・散水冷却
▼通気対策
・換気扇の活用
・側窓の管理
・エアレーション調整
【冬季の管理】
▼保温対策
・二重カーテン
・水温維持
・隙間風対策
▼省エネの工夫
・夜間の温度管理
・ヒートポンプの活用
・断熱材の利用
データ管理の重要性
「感覚も大切ですが、数字で語れることも必要です」
【記録すべき項目】
▼日次データ
・水質パラメータ
・給餌量
・死亡数
・異常の有無
▼週次データ
・成長記録
・薬品使用
・設備点検
・在庫確認
▼月次データ
・収支情報
・エネルギー使用量
・生産効率
・不良率
「このデータが、次の改善につながるんです」
次回は、実際に起こりうるトラブルとその対応について、詳しく見ていきます。
[続く...]
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