連続体仮説周りのこと
連続体仮説の独立性
数学の公理化の歴史の中で、カントールが提唱した連続体仮説は中心的な問題としてあり続けてきた。
この問題自体は、1940年にゲーデルが連続体仮説が成り立つモデルが存在することを証明し、1963年にコーエンが連続体仮説の否定が成り立つモデルが存在することを証明したことで「連続体仮説は肯定も否定も証明できない命題である」ことが証明された。こういう命題のことを「独立な命題」と呼んだりする。
そもそも連続体仮説自体が何かというと、「実数の個数(集合の大きさ)」についての命題である。実数の個数が非可算集合の中では最小だというのが連続体仮説で、最小よりかは大きいというのが連続体仮説の否定である。
つまり連続体仮説の独立性が意味するところは、(ZFCが無矛盾なら、)実数の個数が非可算集合の中で最小なモデルもあれば最小じゃないモデルもあると言うことであって、実数の個数がいくつなのかは標準的な数学の前提では決まらないということである。
独立性のその後
ここまでの内容を読むと、実数の個数が標準的な数学の体系では決まっていないということに違和感を覚えるかもしれないし、そういうこともあるかもしれないなとも思うかもしれない。
どちらの感想をもったとしても、どちらの方向にも研究が進んでいるのでその紹介をして終わりたい。
実数の個数を決めるには、構成可能性公理(axiom of constructibility)を加えるか強制法公理(forcing axiom)を加えるという方法が有名である。前者からは連続体仮説が、後者からは連続体仮説の否定が導かれる。
ZFC公理系の中で連続体濃度が異なるモデルを作るのは、ゲーデルやコーエンによる構成法の発展的な内容になる。特にコーエンが連続体仮説の否定が成り立つモデルを作るために用いた強制法という手法は現在も目的に応じて様々な種類が生み出されている。
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