見出し画像

1/31

深夜の寂寥感に浸るのが好きだという人がいた。
その感性とともに、それに決して侵食されないつよさもあるのだと思った。
うらやましい、と思った。

夜の静寂。
どこかで誰かが叫んでいる声が聞こえてくるのは気のせいか、別の世界の話か。

静けさは耳にうるさい。
沈黙が耳の穴に入り込もうとする。

夜が水面のようにたたえる"それ"をさみしさと呼ぶのはどこか間違っている気がするけれど、他になんと呼ぶのだろう。


それが耳の穴から入って、細胞の隙間に染み込んでいく。

それは日が出ている間にも忍び寄ってくるけれど、夜にはだんだん数が増える。

それに侵食されないつよさがほしい。

だからベッドに入って目を閉じる。

起きていたら
ぽろりと落ちてしまいそうになる。

テーブルの淵から、あちらへ。


落ちて割れたグラスは元に戻らないから
柔らかいベッドで眠り、明日も目覚めるのだ。

いいなと思ったら応援しよう!