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深夜の寂寥感に浸るのが好きだという人がいた。
その感性とともに、それに決して侵食されないつよさもあるのだと思った。
うらやましい、と思った。
夜の静寂。
どこかで誰かが叫んでいる声が聞こえてくるのは気のせいか、別の世界の話か。
静けさは耳にうるさい。
沈黙が耳の穴に入り込もうとする。
夜が水面のようにたたえる"それ"をさみしさと呼ぶのはどこか間違っている気がするけれど、他になんと呼ぶのだろう。
それが耳の穴から入って、細胞の隙間に染み込んでいく。
それは日が出ている間にも忍び寄ってくるけれど、夜にはだんだん数が増える。
それに侵食されないつよさがほしい。
だからベッドに入って目を閉じる。
起きていたら
ぽろりと落ちてしまいそうになる。
テーブルの淵から、あちらへ。
落ちて割れたグラスは元に戻らないから
柔らかいベッドで眠り、明日も目覚めるのだ。