見出し画像

桜の下の約束


春の光が温かく、桜の花びらが舞い散る中、私は彼と待ち合わせをしていた。満開の桜の木の下で、彼と5年の時を過ごしたことを噛みしめながら。今日は私の誕生日。そして、心の奥底では、そろそろ結婚してくれたら嬉しいなと思っていた。プロポーズしてくれれば、迷わず「はい」と答えるつもりだった。

しかし待ち合わせの時間が過ぎても、彼は現れなかった。10分、20分、どんどん時間が経つ。そのたびに、胸に広がる不安に気づく。彼のスマホに電話するも響かず、LINEは既読にならない。心配になり、彼の家の電話をかけると、彼の母が出た。「道路に飛び出した女の子を助けようと事故に遭った」と告げられた瞬間、世界が崩れ落ちるような感覚に襲われた。

私は、彼が運ばれたという○○病院へ急いだ。病院の廊下は白く冷たい。集中治療室の前で、心臓が早鐘のように打ち続ける。彼の命だけは助かりますようにと、神様に祈ることしかできなかった。運良く彼は助かったが、
医師から「下半身付随」と告げられた時、まるで奈落の底へ突き落とされたように感じた。

泣き崩れ、どうしようもない気持ちに浸る中、1週間が過ぎた。彼が少しずつ意識を取り戻し、私たちは話すことができた。しかし、彼の言葉は私を更に深い絶望に導く。「俺たち、別れよう」彼の声は冷たく響いた。「こんな俺といたって、綾香は幸せになれないから」

私は驚き、叫びたい気持ちでいっぱいだった。「なんで、なんでそんなこと言うの?
そんなのずるいよ。
わたし絶対に別れないから!」
彼は困惑の目をしていた。

それ以来私は、来る日も来る日も神社に通い、「彼が歩けますように」と祈り続けた。彼もリハビリに懸命に取り組み、時には涙を流しながら頑張っていた。
主治医は歩ける可能性は1%もないと言ったが、彼の心にはまだ1%の希望があった。

あれから1年、彼女の誕生日に奇跡が起こった。
彼は華やかな桜の木の下で、奇跡的に立ち上がることができた。そして彼は事故の日に用意していたプロポーズの指輪を取り出した。
彼は私に指輪をはめながら言った。

「ちょっと遠回りしたけど、
俺たちには必要だった回り道だった
かもしれないね。
・・・
今度は俺が幸せにする。
こんな俺でよかったら
結婚してください」

その言葉に、私は涙が溢れた。
ただ頷くだけで精一杯だった。
彼の強さと、その思いが私に届いた瞬間、心の中に愛が満ちていくのを感じた。

満開の桜の木の下で、私たちの新たな約束が始まった。どんな困難が待ち受けていようとも、私は彼と共に歩んでいくと決めていた。春の風が心地よく吹き抜け、桜の花びらがまるで祝福しているかのように舞い上がった。

いいなと思ったら応援しよう!