見出し画像

【DeFimans共同代表佐藤】仕組債の内包するオプションについて

こんにちは。共同代表のTaishiです。

Token2049に参加するかすごく迷っています。混んでそうだし純粋にF1も重なって旅費高過ぎますよね。

海外に住んで20歳くらい年下の若者を家に呼んでにオラついて、海外から日本にマウント取ってる痛々しいおじさんにはなりたくないなと思う毎日です。常にアンラーニングして最新動向を吸収し続けたいものです。

本日はDeFi上のホットトピックの一つであるデリバティブ領域について、通常とは異なる切り口から紹介していこうと思います。とはいえ、超初期的解説です。ご了承ください。

それでは、今日のお品書きです。

※本記事は投資助言ではありません。投資、利用を推奨するものではございませんので、いかなる損失にも責任は負いかねます。必ずご自身の判断、自己責任でご利用ください。


デリバティブって?

金融派生商品」とも呼ばれます。

株式、債券、為替などの原資産から派生して誕生した金融商品です。少ない資金で大きな取引ができるため、典型的なハイリスク・ハイリターン商品といえます。

デリバティブサービスは、DeFi市場において資産の多様化やリスクヘッジを支援し、トレーダーや投資家にカスタマイズされたキャッシュフローを提供します。ただし、リスク管理が不可欠であり、トレーダーはマーケットに関する十分な知識を持つことが重要です。その中でも、オプションを利用したサービスは増々需要が高まっておりますので、今回はオプションを用いた商品の中で最もマスに受け入れられているであろう仕組債について、その仕組みを解説します。

今回はweb3、DeFi要素少なめです。すいません。

仕組債って何?

仕組債とは、オプションやスワップなどのデリバティブを組み込むことで、通常の債券のキャッシュ・フローとは異なるキャッシュ・フローを持つようにした債券です。対象とする参照資産によって様々なプロダクトが存在します。以下に有名なプロダクトを記載します。

  • インデックスリンク債(IL債)

  • Exchangable Bond(EB債)

  • 為替リンク債

  • クレジットリンク債

  • リパッケージ債

  • デュアルカレンシー債(DC債)

  • パワーリバースデュアルカレンシー債(PRD債)

  • 円満債

個別プロダクトの詳細な解説はまたの機会にということで、今回は最もメジャーなプロダクトであるIL債を基に、パーツ分解の上解説していきます。IL債に含まれるオプションはDeFi上の仕組債の設計の基礎にもなっておりますので、是非最後までご笑覧ください。

仕組スワップのパーツ分解

以下の条件のIL債を想定します。

5年QA(利払い年4回)
Knock out 110%
初回3.0%/以降3.0% or 0.1%
基準価格85%
行使価格100%
Knock in 65%

上記条件の場合、構成要素は以下のとおりです。

①cancellable swap:cancellable swapを用いる背景は、Knock-out条項が存在するためです。また、長期物でuncancellable swapを用いることはポートフォリオマネジメントの観点からリスクが大きいためでもあります。

②Up&Out Digital Option:本条件の場合、満期までの間に満期違いの19個のオプションが存在します。
6カ月後満期のdigital option with KO at 3 months
9カ月後満期のdigital option with KO at 3 months and 6 months
・・・
60カ月後満期のdigital option with KO at 3 months, 6 months・・・57 months

③Up&Out/Down&In Put Option:Knock-outする際に消滅するため、19か所のKnock inポイントが設けられています。満期時点のKnock-in Putの価値が大きいことが特徴です。

このように、一件シンプルな仕組債には20以上のOptionが含まれていることが分かります。このような複雑なキャッシュフローを個人で構築することは非常に困難であることから、仕組債には一定の効用があると考えられます。

パーツ分解の応用

パーツ分解のうち、①+②が円満債になります。余談ですが円満債の名称は、円建てで満期時(または期前償還時)の元本が確保されることに由来していますが、同時に投資家と円満な関係を維持しようとする希望も込められています。

メモリークーポン型IL債

メモリークーポン債が通常のデジタルクーポン型と比べてどのような条件が付されているかを、上記に当てはめて考えてみましょう。
メモリークーポン債の条件は以下のとおりです。

5年QA(利払い年4回)
Knock out 110%
3% High coupon + memory coupon or low coupon(0.1%)
基準価格85%
memory coupon = high coupon × low coupon適用回数

上記条件の場合、追加のオプションはそれぞれ以下のとおりです。

6カ月後:追加オプションなし

9カ月後:追加オプションは1つ。
条件:0.75%(=3%/4), 85%ストライク、Down&In:85% at 6 months、Up&Out:110% Knock-out at 3months, 6 months

12カ月後:追加オプションは2つ。
条件:0.75%(=3%/4), 85%ストライク、Down&In:85% at 6 months、Up&Out:110% Knock-out at 3months, 6 months, 85% at 9 months
条件:0.75%(=3%/4), 85%ストライク、Down&In:85% at 9 months、Up&Out:110% Knock-out at 3months, 6 months, 9 months

15カ月後以降も上記の繰り返しとなります。

Knock inカウント型IL債

二つ目の例では、Knock inカウント型を考えてみます。条件は例示しているものと同様で、Knock in条項のみ、【5日間連続でKnock in価格を下回った場合のみKnock inが発生したと判定する】こととします。この場合は以下のように考えます。

a:パラメータ(ボラティリティカーブ等)に基づき価格の日次系列を数十万パターン生成{S(0), S(1), S(2)・・・S(T)}
b:判定日に対応する価格データに加工:{S(F1), S(F2), S(F3)・・・S(F20)}>>>F1=1回目の判定日
c:Knock in判定用の価格データに加工:{S_KI(0), S_KI(1), S_KI(2)・・・S(T-5)}>>>S_KI(0) = max(S(1), S(2), S(3), S(4), S(5))>>> = 5日間の最高値の系列でこのうち一つでもKnock in価格以下となった場合はKnock in判定されるという発想になります。

こちらは、それぞれのシミュレーションについて利率判定、Knock-out判定、償還判定、Knock in判定を行い、各時点のpay offを現在価値換算した値を合計します。こうして合算した現在価値の数十万パターンの平均値はスワップのPVに収束するであろう、という考えはモンテカルロアプローチと呼ばれます。シミュレーション回数が少ないと実勢との乖離は大きくなりがちです。

最後に

一見単純なキャッシュフローを提供する仕組債ですが、実はかなりの数のオプションが含まれていることがよくわかりますね。

これらのオプションの価値を計算していくと、各プロジェクトが提供している仕組債の価値が妥当であるか否かが分かりますし、どの程度の収益を得ているのかが分かります。DeFi上に限らず、TradFi上での仕組債でも同様のことが言えるのでご参考まで。

また、パーツ分解をマスターすると、パーツを足し引きすることで新商品を考えやすくなるというメリットもあります。

ではまたお会いしましょう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?