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元コマツCTO渕田誠一氏がDeepX顧問に!DeepX CEOと語る建機自動運転の未来

はじめに

株式会社DeepXでは、株式会社小松製作所(以下、「コマツ」)の元CTOである渕田誠一氏に顧問に就任いただくことになりました。就任にあたり、当社CEOの冨山よりインタビューを実施し、建設機械の自動運転への展望や顧問に就任した経緯や意気込みなどを語ってもらいました。
当社に興味のある方はもちろんのこと、建設機械の自動運転やその社会実装に興味がある方は、是非お読みください!

◇対談者プロフィール
渕田誠一
株式会社DeepX 顧問
1984年に株式会社小松製作所に入社し、主に油圧ショベル開発に携わる。英国コマツ・コマツアメリカへの赴任を経て、2014年執行役員就任。その後、常務執行役員開発本部長、専務執行役員CTO兼開発本部長を歴任。現在、渕田技研代表。2024年7月より当社顧問に就任。

冨山翔司
株式会社DeepX 代表取締役CEO
東京大学工学部卒業、同大学院工学系研究科修士課程卒業。工学系研究科長賞受賞。
東京大学松尾研究室に所属。深層学習の研究、および、企業との共同研究プロジェクトを多数牽引。
DeepXにエンジニアとして入社後、油圧ショベル自動運転プロジェクト等に従事。2019年6月に取締役就任、2023年1月より代表取締役に就任。
車両系建設機械運転資格保有。


なぜDeepXの顧問を引き受けたのか

(冨山)本日は対談ありがとうございます。渕田さんとは、今年の2月頃に初めてお会いしましたね。その後、約半年間にわたり、当社のビジョンや方向性について深く議論し、また実際に建機自動運転のデモンストレーションも行いました。その結果、今回DeepXの顧問に就任していただく運びとなりました。この半年間で感じられた、DeepXに対する印象をお聞かせいただけますか?

(渕田)まず最初に、DeepXの皆さんが非常にエネルギッシュであると感じました。スタートアップとしてのエネルギーに満ちあふれ、ビジョンに向けて果敢に挑戦する姿がとても印象的でした。率直に言って、お会いした皆さんが本当に輝いていると感じましたね。
建設や土木の分野は社会にとって欠かせないものですが、人手不足や災害対応など、数多くの課題を抱えています。そんな中で、DeepXの自動化技術は、まさに今後必要とされるものであると感じました。私は、いつか建設現場から人がいなくなり、多くの作業を機械が自動で行う時代が訪れると信じています。そのような未来を見据えているDeepXに非常に興味を持ちました。

(冨山)ありがとうございます。私もDeepXの代表として、社会的に意義のあることを成し遂げたいという強い思いがあります。建設やものづくりは、私たちの基本的な生活に欠かせないものであり、その分野で大きな課題を解決することに強いやりがいを感じています。同じ志を持ってDeepXに参加してくれた社員たちも多く、彼らは非常に高い熱意を持っています

(渕田)DeepXの自動運転技術について、実際に油圧ショベルの自動運転デモを見ましたが、その挑戦には正直、建設機械の中でも難しいところを攻めているなと感じました。しかし、油圧ショベルは現代の建設現場で主流の機械ですし、そこで社会実装が成功すれば、大きな変化をもたらすきっかけになると感じています。

(冨山)おっしゃる通り、油圧ショベルは技術的な要素だけでなく、実際の現場での運用も含め、社会実装が特に難しい機械です。当社では、ケーソンショベルの自動化など、より社会実装が早いと考えられるプロジェクトも手掛けています。自動化を実現するための基礎技術はすでに揃っていると考えていますが、それをまとめて社会に実装する部分が非常に難しいです。渕田さんをはじめ、多くの方々の協力を得ながら、施工の自動化を実現したいと考えています。

当社の自動運転ソフトウェアにより無人で運転されている油圧ショベル

建設現場のデジタル化を見てきた渕田顧問の経験

(冨山)渕田さんはコマツのCTOを歴任されていますが、特に私が期待している点は、ICT建機をはじめとするデジタル技術開発の豊富なご経験です。これらの技術にはどのように関わってこられたのですか?

(渕田)私が管理職に就いた2000年前後のことですが、コマツではKOMTRAX(コマツが開発した建機の位置情報やデータを遠隔で取得するシステム)の導入が始まり、データの重要性が一層認識されるようになりました。この時期からデータ関連の業務に深く関わるようになり、データを活用して価値を創出することが重要だと強く感じました。その後、KOMTRAXに加えて、超大型ダンプトラックの自動運転など、さまざまなプロジェクトをコマツは立ち上げ、私も多くの開発に参加してきました。

その後、ICT建機(注)の開発にも取り組みました。2013年にはICT搭載のブルドーザーを市場に投入しました。このブルドーザーは、3次元の図面情報を入力することで、施工完了面よりも下を掘りすぎない半自動ブレード制御機能を搭載しており、これにより操作が格段に簡単になりました。実証試験でも施工速度の大幅な向上が確認され、この技術が大きな進歩をもたらすと確信しました。

(注)ICT建機とは、情報通信技術(ICT)を駆使して、建設現場での作業効率や精度を向上させるための建設機械です。センサやネットワーク機器を用いて作業状況と設計データをリアルタイムに可視化してガイダンスしたり、設計データ通りにコントロールしたりすることでオペレーターの作業を支援することができます。

(冨山)ブルドーザーの操作は非常に難しいですよね。

(渕田)そうですね。車体が傾きながらも、凸凹の地面を平らにするのは非常に難易度の高い作業です。しかし、このシステムのおかげで、ベテランでない作業員でも容易に作業を行えるようになりました。この画期的な技術が、施工現場に大きな変化をもたらすと感じました。ブルドーザーの導入に続き、2014年にはICT対応の油圧ショベルも市場に投入しました。

(冨山)市場投入後のユーザーの反応はいかがでしたか?

(渕田)ICT建機は、期待通りの効果を発揮した部分もありましたが、残念ながらお客様の現場での生産性が思うように向上しないという現実にも直面しました。その主な原因は、ICT建機による施工の前後工程が、ICT建機の能力を十分に活かせるよう設計されておらず、結果として現場全体の生産性が変わらなかったことにありました。つまり、一つの工程だけ改善しても全体の効率は上がらないということです。この課題を受けて、コマツでは施工の各工程をデジタル化し、使用する機械の特性を最大限に活かせるような最適な施工を実現するために、スマートコンストラクションを構想しました。私もそのサポート役として関与し、機械からITへのシフトを支援してきました。これにより、現場へ届けられる価値も着実に増えてきています。

(冨山)私たちが見てきた現場でも、ICT建機を適切に活用している場所では、生産性が全く異なりますね。技術の素晴らしさを強く感じる一方で、これほど明らかな価値がある技術であっても、現場への導入が遅々として進まない様子を見ると、建設現場における技術導入の難しさを改めて痛感します。渕田さんはこの問題について誰よりも深く考えてこられたと思いますので、その経験を当社でも活かしていただけることを期待しています。

株式会社DeepX顧問 渕田誠一氏

建設機械の自動運転への道筋


(冨山)冒頭で、渕田さんは建設機械の自動運転が未来の必然だとおっしゃいましたが、その実現に向けたステップについて、現場の状況を踏まえてどのようにお考えでしょうか?

(渕田)自動化の価値を最大限に引き出すためには、単に機械が自動運転するだけでは不十分で、現場全体のデジタル化が極めて重要です。まずは現場をデジタル化し、その基盤の上に自動化技術を導入することで、価値を創出していく形になると考えています。そのためには、お客様の現場をデジタル化する企業と協力し、ステップを設定し、目標を明確にしつつ、スピード感を持って進めていくことが求められます。しかし、このような取り組みを一企業だけで行うには限界があり、他企業との協調が非常に重要になります。

自動運転システムは、管制システムなど他のシステムと連携されることで、より大きな価値を生む

(冨山)他の企業との協調の重要性は、私も非常に強く感じています。会社として従業員に建設機械の運転資格を取得させるなど、業界に深く入り込むことを重視しています。最近では、建機メーカー、油圧機器メーカー、無線ネットワーク企業など、さまざまな企業との連携が深まり、業界にしっかりと浸透してきたことを嬉しく感じています。

(渕田)その通りですね。DeepXがデジタル化に必要なパートナーを巻き込みながら現場に価値を届け、そのプロセスの中で自動化を実現していく形が理想的だと思います。

(冨山)自動運転のソフトウェア技術を手掛けるDeepXが、自動運転の社会実装を進める「スタートアップ」として、どのようなことを意識すべきとお考えでしょうか?建機メーカーでのご経験を踏まえ、スタートアップに期待される役割について教えていただけますか?

(渕田)自動運転の実現に向けて取り組むべき課題は非常に多岐にわたります。例えば、土を動かす、岩を砕く、土を運ぶといった様々な作業を行う機械をより賢くすることが必要です。しかし、これらの賢い機械を管理し、全体を統制する視点も非常に重要であり、現場を統制する管制システムと、優れた機械の開発、この二つが大切です。この中で、自動運転技術は管制と機械を繋ぐ重要な柱となります。

単独の建機メーカーが自動化と管制を一貫して行う垂直統合型のシステムを構築することは、特定の条件下では可能ですが、全ての現場に対応できるシステムを構築するのは非常に難しいです。加えて、現場には複数のメーカーの機械が存在するため、管制を担当する会社、自動運転を担当する会社、精密なタスクを実行する建機を製造する会社、そして現場をデジタル化する会社など、それぞれの協調が不可欠です。お互いの強みを活かし、不足部分を補い合うことで、全体として効率的な現場を構築し、価値を創造しながら最終ゴールに向けてステップを進めていく必要があります。現在はそうした市場が形成される過渡期にあり、この局面でスタートアップの存在が非常に重要だと感じています。

(冨山)スタートアップが新しい市場が形成される過渡期において重要だと考えるのは、どういった理由からでしょうか?

(渕田)それは、スタートアップが持つ俊敏性とスピード感にあります。大企業では、どうしてもスピードが鈍りがちですが、スタートアップは迅速に行動し、「まずこれをやればできる」という結果を出すことが求められます。その結果を広げ、全体でより大きな価値を創造するためには、各作業や役割を明確に色分けし、協力し合うことが重要です。スタートアップには、価値のある現場を素早く構築するためのビジョンを描き、それを迅速に実現する力が求められます。そして、そのビジョンは固定されたものではなく、時間とともに見直され、各フェーズに応じて役割が変わっていくでしょう。

(冨山)現場の数を増やしていく中で、初期の仮説が変わることも自然なことだと思います。

(渕田)その通りです。まずは1つの現場で試し、その後10現場、20現場と増やしていく過程で、価値の仮説が変わることもあります。この自然な進化を受け入れながら、スタートアップはスピード感を持って進むことが重要です。

株式会社DeepX 代表取締役CEO 冨山翔司

渕田顧問の力がDeepXにとってどうプラスになるのか

(冨山)具体的に、渕田さんが今回DeepXの顧問としてどのように関わっていただくかについてお話ししたいと思います。先ほどお話ししたように、建機の自動運転を社会実装するためには、さまざまな企業とのコラボレーションが不可欠です。まず、さまざまな建機メーカーと良好な関係を築くことが重要であり、渕田さんの広範なネットワークがここで大いに活かされると考えています。また、建機の自動運転は、コストベネフィットの観点から広大な国土を持つ外国の大規模土工や鉱山での導入が先行すると考えていますが、渕田さんの豊富な海外経験もその点で大いに貢献していただけると思っています。

(渕田)私も長年メーカーで働いてきましたので、建機OEMメーカーの考え方を理解しており、十分に期待に応えられると感じています。また、世界中の現場を見てきた中で、日本の建設現場のデジタル化が遅れていることを強く感じています。反対に、欧米やオーストラリア、特に北欧の市場ではデジタル化が進んでおり、そうした市場に対する価値の提供のサポートもできると考えています。

日本の現場で価値を創出できるようになれば、海外での展開は大きなチャンスとなります。日本の現場はデジタル化があまり進んでいないため、一から構築する部分が多く困難ですが、その経験が海外での成功につながるとも考えています。

渕田顧問の意気込みと新たな仲間へのメッセージ

(冨山)それでは、そろそろ対談をまとめたいと思います。まず、改めて顧問就任にあたっての意気込みをお聞かせください。そして、現在、DeepXは会社の拡大に伴い、優秀な人材を必要としています。DeepXへの参加を検討している方々へのメッセージもぜひお願いいたします。

(渕田)まず、顧問としての意気込みについてお話しします。DeepXは強みである技術力を最大限に活かし、スピード感を持って社会に技術を実装していくという強い想いを持っています。そのために、私も全力で動き、社会実装が実現し、価値が誰の目にも見える形になるよう、共に努力していきたいと思います。

次に、DeepXへの応募を検討している方々へのメッセージです。DeepXが取り組んでいるのは、未来の社会を創造するために絶対に必要なことです。「未来の社会を創る」という志を持ち、共にチャレンジ精神を持って動いてくださる方をお迎えしたいと考えています。そのような方が加わることで、私たちの活動はさらに加速することでしょう。

DeepXは、未来への挑戦を恐れず、単に挑戦するだけでなく、社会実装を確実に成し遂げようとしている会社です。現在、会社全体がこのエネルギーに満ち溢れています。この環境で、チャレンジ精神を持った方々が次々に加わってくれることを、心から楽しみにしています。

(冨山)ありがとうございます。DeepXは挑戦に対して積極的な会社です。国土交通省も自動化を大いに後押ししてくれており、社会的意義と期待を背負ってこうした活動ができることが、私自身にとっても大きなモチベーションとなっています。そういった点に共感し、「自分も何かを成し遂げたい」と考えている方は、ぜひ当社に入社してほしいと思います。

終わりに  ~DeepXでは建機自動運転を一緒に進めてくれる仲間を募集しています~

対談はいかがだったでしょうか?
DeepXは渕田顧問とタッグを組んで、建設機械の自動運転を進めていきます。

DeepXでは新たな仲間になってくれる方を積極的に募集しています。DeepXに興味を持っていただいた方は是非、下記リンクより応募してください!

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