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Rockin' Horse – Yes It Is (1971 / 2024 Remaster)
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The Beatlesだけがなぜ20世紀最大のポップアイコンと見做されるほどの成功を収めることができたのか--あれだけ優れた楽曲と、チャーミングなビジュアルがそろっていれば、世界の一つや二つくらい軽々と征服できちゃうでしょ……と、我々のようなボンクラ世代はそう考えてしまいがちだ。もちろん、物事はそれほど単純ではない。
Rockin' HorseやBadfinger、あるいはBig StarなどBeatlesqueと称される音楽家が商業的な成功を収めることがなできなかった(後にカルト的人気を誇るようになるものの)のはなぜか。The Beatlesが残した諸作品に比べても、彼らが残した作品は少しも見劣りすることはないし、それどころかそれらの中には、FAB4のどの作品よりも好きなものもあったりする。適切なプロモーションがなされてさえいれば、少なくとも『#1 Record』というタイトルが自虐的な意味に解釈されることもなかったのかもしれない。
そんな不運な作品のひとつに数えられるRockin' Horse『Yes It Is』の全体像を知ったのは2000年代初頭にリリースされた再発CDにて。マニアックな人ならとっくに親しんでいたであろう作品なのだろうけど、日本のディープサウスに暮らす僕が知っていたのは、何かのオムニバスに収録されていたNeil Sedakaを彷彿させる“Biggest Gossip In Town”くらい。英国のマイナーなグラムバンドかな、くらいの認識しかなかったから、その他の楽曲の素晴らしさには度肝を抜かれた、という人も少なくないはずだ。
繰り返しになるが、このウェルメイドなロック作品が商業的な成功を見ることができなかったのはなぜなのだろうか。世界は不条理なのだ、と言ってしまっては元も子もない。プロモーションの有無を度外視すれば、やはり時代のニーズ--ロック好きな層のニーズ--に合致していなかったということになるのだろうか。
ポップであることが既存のハイカルチャーへのカウンターだった時代から、カウンターカルチャーが権威となり形骸化しつつあった時代に移行しつつあった時期に彼らは、同郷のパイセンであるThe Beatlesをはじめ、モータウンやブリルビルディングなど、ポップであることが正義だった時代へのオマージュを捧げつつ、カウンターカルチャーが権威化しつつあった時代において新たなポップのあり方を模索するというアンビバレンツな姿勢を融合させようとしたのかもしれないが、その結果は周知の通り。だがその作品は、時を経て“ポップであること”がさらに難しくなってきた多様化の時代において新たな輝きを放ちつつある。近年のRockin' Horse再評価熱の高まりはその証だろう。
音源のみならず、ジャケットもリマスターされたのだろうか。いずれもグッと解像度が高まっている気がする。