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シティ・ポップとジャパニーズ・ウイスキー
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昨今の「ジャパニーズ・ウイスキー」の高騰は、「シティ・ポップ」関連のレコード相場を彷彿させるものがある。後者に関してはとくにほしいものがないので困ることはないが、前者はウイスキー好きの貧乏人には死活問題だ。僕が愛飲していた「余市 12年」なんて、もはや僕のような最底辺のウイスキー愛好家が気軽に飲めるような代物ではなくなってしまった。
一見何の関係もなさそうな両者を並べたくなるのは、それまで見向きもしなかった層がマーケットになだれ込んできたという高騰の原因のせいばかりではない。いずれもその根底には通奏低音のごとく“スコットランド”が横たわっているのである。
よく知られているように、日本に本格的な「ウイスキー」づくりをもたらしたのは、ニッカウヰスキー創設者である竹鶴政孝氏である。現地スコットランドで製造のイロハを習得した彼は、サントリーの山崎蒸留所を立ち上げたのち、自らの理想を実現させるべく彼の地と気候が近かった余市へ。僕が親しんでいたのは、そんな“ジャパニーズ・ウイスキーの父”が辿った壮大なストーリーの結晶なのだ。
一方の「シティ・ポップ」も、その源流をたどればスコットランドに行き着くはず。我々が郷愁を感じる「蛍の光」などの原曲は、明治政府が輸入したスコットランド民謡や、アイルランド民謡だ。我が国の“こころの歌”は、ケルティックな旋律によって構築されたと言っても過言ではないだろう。ケルト文化をルーツにするビートルズが、我が国においてとりわけ熱狂的に支持されたのは何よりの証拠だ、といえなくもない。※ビートルズは全世界的に人気だったから、わかりにくければビートルズのところをチープ・トリックやベイシティローラーズに置き換えてもいい。
余市蒸留所の特徴のひとつである石炭直火蒸溜方式のように、今やスコットランドですらとっくの昔に廃れた製法に固執するなど、そのガラパゴス性や、水や気象条件など日本の風土、職人気質などを特徴とする「ジャパニーズ・ウイスキー」に対し、「シティ・ポップ」もまた、ビートルズ以降の洋楽を手本に、日本語のリズムとの折り合いをつけながら、ガラパゴス的に発展、洗練させていった形態だといえる。春だというのに一向に仕事をする気のおきない暇な農夫は、両者の数奇な変遷が面白いので、そこのみを抽出し、重ねてみたくもなるのである。
前置きが長すぎたけど、さらなる高騰で入手困難なレアなシティ・ポップを聴くんだったら、数百円で買えるゴダイゴを聴く方がいいし、もはやセレブのコレクションの対象になってしまったウイスキーを飲むくらいなら、ひと頃の変なブームも落ち着き、安くてさらに美味しくなった芋焼酎をやる方がいい。そう自分を納得させながら、日々を心穏やかに暮らすことにしている。これもまた貧乏人の知恵だ。
ゴダイゴはいわゆる「シティ・ポップ」には括られてないのかもしれない。英語詞が多いし。「僕のサラダガール」なんてとってもおしゃれだけど。「シティ・ポップ」とか言いながら、ロック同様、あまりに「ポップ」すぎると評価されないのかも。
僕の好きなゴダイゴのタイアップ曲の中でも、上位に位置する「ミラージュのテーマ」。ミラージュって車じゃなくて、ミラージュボウルなんすね。