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Daryl Hall & John Oates - Abandoned Luncheonette(1973)


半世紀にわたる時の試練を耐え、今もなおその輝きを増しているDaryl Hall & John Oatesの初期の傑作『Abandoned Luncheonette』と、クソ田舎の片隅に半世紀ほど前に生まれ落ち、今や朽ち果てつつあるしがない農夫とは、どこでどうちがってしまったのか。いや、そうではない。生まれ落ちた瞬間から、この作品は特別だったのだ。

なにしろプロデュースはArif Mardinである。しかも演奏陣は、Richard TeeBernard PurdieHugh McCrackenなど泣く子も黙る超一流どころ。アトランティックの本気度が伝わってくるはずだ。そんなプレッシャーなどなんのその、才能に溢れるDaryl HallJohn Oatesの2人は、故郷を離れ心機一転、ニューヨークへ。これで俺たちは売れてやるんだ!という意気込みギンギンの楽曲をそろえてきた。

楽曲、アレンジ、演奏も完璧。しかし、緻密な職人仕事が鼻につくわけでもなく、むしろ、2023年に聴いても実にフレッシュな肌触りがある。これぞ本物の職人技なのだろう。しかし、結果はご存知のとおり。

数年後にリバイバルヒットし、最終的にはミリオンセラーを記録したものの、残念ながらリリース当初は期待ほどには売れなかったらしい。なぜ、売れなかったのか。彼らは相当悩んだのかもしれない。続く3rdアルバム『War Babys』(1974)では、Todd Rundgrenにプロデュースを依頼。ToddがプロデュースしたGrand Funk Railroadのヒット(1973)が念頭にあったのかもしれない。あんなダサいバンドでも売れたのだからと。

もし、『Abandoned Luncheonette』がすぐに売れていたら同様の路線を継続したかもしれないし、少なくともToddの起用はなかったはずだ。さらに想像を逞しくするならば、こうした紆余曲折がなければ1980年代のメガヒットもなかったかもしれない。

そんなこんなを踏まえずとも、本作が放つ輝きは少しも曇ることがない。楽曲はもちろんだけど、Bernard Purdieのプレイを堪能するだけでも、お酒が進んでしまう(昨日買ったばかりの焼酎が、いつの間にか半分になっている!)。正しい場所に、正しいタイミングでビートを刻むことの大切さを教えてくれる作品でもある。

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