Natural Progressions - The Bernie Leadon - Michael Georgiades Band
農家の夏は忙しい。雑草をむしるだけで終わる日もある。農薬を散布すればいいじゃんという話だけど、農薬を浴びてしまうのが嫌なので、極力使わないようにしているから。消費者というよりも、むしろ自分の身を守るためでもある。
そんな農夫の夏の楽しみは、キンキンに冷やしたコップに、シャーベット状にした焼酎を入れ、その上から静かにソーダ水を注ぎ、レモンを絞ってつくるこだわりのカクテルをいただきながら、レコードを聴くこと。
レモンサワーにあうのは、Four Freshmenみたいなこってりしたコーラスものより、もうちょっとアク抜きされた湿度少なめのハーモニー。たとえば、Chris HillmanとHerb Pedersenみたいな、西海岸テイストのサウンドがいい。
いろいろ物色しているうちに、引っ張り出したのは、本日の一枚、The Bernie Leadon - Michael Georgiades Band唯一のアルバム『Natural Progressions』。是が非でも聴くべき名作ではないかもしれないが、なんだかとてもグッとくるアルバムなのだ。
Bernie Leadonといえば、Gram Parsons〜Eaglesと渡り歩きながら、カントリーやブルーグラスのエッセンスを絶妙な配合で響かせてきた名うての音楽家である。そんな彼が、時代の空気をビンビンに感じながら制作したであろう作品は、地味ながらも、実に聴き応えのあるものに仕上がっている。
その一助となっているのが、プロデューサーでエンジニアのGlyn Jonesによるサウンド。Eaglesの1stに顕著であるように、タイトだけど、ふくよかな、それでいて空間の広がりを感じさせる響きが、このアルバムを特別なものにしている。
この時代の好きなアルバムには、たとえばRolling StonesのSticky Fingersとか、Faces - Ooh La La、Fools Goldの1stなど、彼がエンジニアを担当したものが多い。これらに共通するのが、上記のようなサウンドだ。
これらの作品の中で個人的に一番グッとくるのが、空間に鳴り響くドラムのタムの音。最近のロック系の作品(かなりデッドにつくられていて、それはそれでかっこいんだけど)にはない、タムの程よいサスティンが実に心地よいのだ。EaglesのTake It Easyなんか、このタム回しの部分目当てに聴いてるようなもの。
スタジオの自然な響きをそのまま記録したとも思えるナチュラルなサウンドは、名人芸ともいうべきテクニックの賜物なのであり、もちろん、なんとなくマイクを並べて録音したものではない。オーガニック野菜が実はとんでもなく手間暇のかかった代物であるのと同じ。だからこそ人は、感動するのだろう。