NRBQ - TOKYO
僕にとってTOKYOとはNRBQであり、NRBQとはTOKYOだ。自分でも何を言っているのかわからないけど。
1996年のちょうど今くらいの季節だっただろうか。NRBQが日本にやってくるという知らせは、日本のディープサウスの山奥にも届いていた。当時すでに何枚かのQのレコードを持っていたし、それなりに気に入ってはいたけど、是が非でもライブを見に行かねば!とは思っていなかった。TOKYOは異国くらいに遠い土地だし。お金もないし……。もちろん、行かずじまいだった。
しかし、それから程なくして、僕はその決断を後悔することになる。決定打となったのは、NRBQのライブ盤『You Gotta Be Loose』との遭遇である。そこには、ジャズだとか、プログレだとか、カントリーとか、ソウルとか、クソみたいな括りを嘲笑うかのような、いや、そもそもこの世にそんな垣根など存在してなかったような、とんでもない音楽があった。強烈にスイングにするロックンロール(この音楽に無理やり名前をつけるとするなら、やはりロックンロールということになるんだろう)の熱狂に僕は眩暈がしたのだ。大袈裟ではなく、僕がずっと聴きたかったのはこれなんだとすら思った。
1999年(だったと思う)。僕は(吉祥寺という場所だったか、原宿だったか忘れてしまったが、とにかく)TOKYOでNRBQを見た。修学旅行以来2度目となるこの街の、しかもライブハウスという環境にしばらくは緊張していたものの、演奏が始まってしばらくすると腰が勝手に動きだし、数曲目には飛び跳ねんばかりに踊り狂っていた。ああ、これだ! このために僕は生きていたんだ!と、そんな強烈な実感が湧きに湧いて、身体中から溢れ出ていたと思う。大袈裟ではなく。
極度の興奮に耐性ができてしまったせいかわからないが、その後しばらくスタジオアルバムですら物足りなくなってしまい(この症状はほとんど治った)、その代わりと言ってはなんだが(あと、あまり大きな声では言えないが)、オフィシャルではないライブ盤を買い求めるようになってしまっていた。
もちろんそんなブツで満足できるわけもなく、メンバーを変えながら(ジョーイもジョニーも、トムもいなくなってしまったけど)断続的に来日するQを、観るために何度かTOKYOまで出かけた。あの街にも幾分慣れ、ライブハウスの雰囲気に呑まれることもなくなったが、あの全身を駆け巡る多幸感はなんら変わることはなく、毎回のように言葉にならない感動を覚えている。この四半世紀をなんとか、それなりに幸せに生きてこられたのはNRBQのおかげかもしれない。そろそろまた観たいなあ。