見出し画像

John Paul Keith - Heart Shaped Shadow

クソみたいな田舎にいると、メディアが煽る「若者の〇〇離れ」を実感を持って理解することが難しい。たとえば、酒・タバコ離れ、ギャンブル離れ、車離れ。田舎の若者(そんなにいないんだけど)は、あいも変わらず暇があれば酒かタバコ、ギャンブルをやるし、クルマをあてもなく走らせている(クルマがなければどこにも行けないし)。

ただ、一般的に言えば、いつの時代も若者は時代の変遷に敏感に反応し、あらゆるものから離れがちなのはなんとなくわかるし、おじさんたちそれを憂いがちなのも理解できる。僕がかつて若者だった頃にも、同じようなことを言われていたわけだから、もしかすると有史以前から言われていたことなのだろう。「若者の狩り離れ」みたいに。稲作ばっかりだ、最近のは、とか。

「若者の音楽離れ」という見出しも目にするようになって久しい。人間なんて20年やそこらでそうそう変わる生き物ではないので、CDを買わないとか音楽との関わり方が変化しただけのことなのだろうけど。いつのどんな時代も、音楽を生きる糧とする人の割合は変わらないし、素晴らしい音楽を生み出す人の割合もまた然り。

現代の若者だって、素晴らしい音楽をクリエイトし続けている。それは偉大な先人たちの仕事があってこそ。彼らは過去の遺産に敬意をはらいつつも、そこに新たな光を当て、現代に甦らせている。そんな当たり前のことを理解できぬまま年を重ねると、「若者〇〇離れ」などと適当なことを言って、踏ん反り返ってしまうくだらない大人になってしまうのだ。

ここ10年ほど、巷は、主に70年代のソウルやR&B、ファンクに最大限の敬意を払いつつ、80年代以降のエッセンスをも取り入れながら、現代の気分に相応しいメロウなソウルミュージックで溢れている。個人的には、とても幸せな時代だ。甘い、甘すぎる!というディープな人もいるのだろうけど。

ロックンロール界隈にも、ヴィンテージなサウンドを現代に蘇らせる音楽家が増えていて実に喜ばしい。その筆頭と言えるのがJohn Paul Keithである。Twanginなモダンロックンロールを奏でさせたら彼の右に出る者はいないだろう。前作の『Memphis Circa 3AM』も実に素晴らしかったが、この新作もまた傑作。音楽の本質とは何か。真実と呼ぶべきものがあるとするならば、それはどこにあるのか……。JPKはその在処を知る数少ない音楽家の一人である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?