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Bobby Charles - Bobby Charles(1972)


蕎麦打ちとか、手捻りの蕎麦ちょこ作りとか、Eddie HintonとかBobby Charlesとか、どうしておじさんの趣味は画一的なんだろう……若いころは不思議に思っていた。俺は絶対にあんなベタなおっさんにだけはならない!と、巷の無個性なおじさんたちを憐んですらいたかもしれない。

それがどうだ。どこに出しても恥ずかしくない立派なおじさんになった今、手捻りで無骨な蕎麦ちょこを作りたくて仕方がない。というか、先日実際に作ってみた。器の出来はともあれ、とても楽しかったことを告白しておきたい。あと、ろくろがとても難しいということがわかった。完全に舐めていた。

これはいったいどうしたことだろう! かつてあんなに蔑んでいた量産型おじさんになってしまったことへの反省であるとか、諦めであるとか、そういう忸怩たる思いみたいなものが君にはないのか! 反省しろ! とか詰められそうだが、今の僕にその類の感情はない。もし気恥ずかしさみたいなものがあるとすれば、それはベタなおじさんになったことではなく、かつての己の狭量っぷりに対して、である。

繰り返すが、本当に楽しいひとときだった。老後はこれ一本でやっていこう!などと夢見るサラリーマンがいたとしても不思議ではない。一心不乱に土をこねくり回す時間はとても充実していた。リア充ってこれのことか!と思った(多分、違うんだろう)ほどである。約半世紀を生きてきた(上には上が死ぬほど(!)いらっしゃるが、50年そこそこで勘弁してもらいたい)今ならわかる、これが成熟というやつなんだろう。

このレコードの本当の素晴らしがわかるようになったのも実は近年のこと。はじめて本盤を手に取った30年前、己の教養の無さを棚に上げ、「ベタなスワンプものだけど、なんか好き」などという雑な扱いをしていたことを恥いるばかり。

「ルーツに遡り、それを再解釈し、新しい米国の音楽を作りあげよう」という当時の大衆音楽家に共通した意識を濃密に感じさせるこのバキバキのサウンドの、どこがベタだというのだろう。ハハハハハ、本当に自分が情けない。情けなくて涙もでやしねえ(このフレーズなんでしたっけ)……。まあ、死ぬ前にこのアルバムの素晴らしさを理解できたような気がするので、まあよしとするか。

Bobby Charles - Long Face


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