古巣の団体が頑張り続けたお芝居を見届けた話
2013年に旗揚げした「Creative Company Colors(C.C.C)」。
舞台人だけでなく、脚本家・ミュージシャン・アイドル・声優・クリエイター・寺の坊主など様々なジャンルの人たちが集まって、「芝居の枠にとらわれないエンターテインメントを目指していこう」と主宰の鬼丸こと秤谷建一郎を筆頭にそのカンパニーは動き出しました。
みんなクラスカースト上位にいたであろう陽のオーラが溢れる中、究極の陰キャコミュ障オタクがそこに一人紛れ込みました。
「なんで私を誘ってくれたのか?」という居酒屋での問いに対して
「面白そうだったから」と答えてくれた鬼丸さん。
そこから8年、団体の中では役者をやりながら脚本3回・演出2回。
その他にも、M-1に挑戦したり、超高速シリーズというものが生まれたり、普通に歩んでいただけでは絶対にできなかったであろう経験をいくつもさせてもらいました。
イベントの企画構成の能力は本当にここで培われてきたといっても過言ではありません。
そして2021年、第9回公演「ファントムテイル」を最後に私は退団をしました。
私にとっては光り輝くメンバーの皆が少し眩しすぎたのかもしれません。
で、退団の挨拶にも述べたのですが、「退」は「道を開ける」という意味があるのです。
次は団体の記念すべき10回目の公演「アンビエントボーダー」。鬼丸さんがずっと温め続けた、全精力を注ぐ作品。
そこに道をつっかえるものはいてはいけない、道を走りやすくするために、団体の道を開けるために退団をしました。
ただ喧嘩別れでもないですし、その後も普通に、自分でも不思議に思う位メンバーと交流が続いたりしてて、こんな退団もあるんだなあとしみじみ。
記念公演は客席から、どんな世界を見せてくれるのか。
純粋に楽しみにしていました。
そんなある日。昨年、某月某日。
ポーカーの大会に出ていると、鬼丸さんから一件のLINEが。
はい、この時ピンときました。
鬼丸さんが用件を言わずこちらの様子をうかがう時。
大体何か頼みごとをするときです。
ご飯の誘いは「飯食いに行こうよ!」って言うし、
LIVEやる時は「○○でライブやるから見に来て!」って言うのに、
あえて一度様子を伺う。
LINE見た瞬間に「はは~ん」って思いました。
一体なんだろうなと話を聞くと「脚本のクライマックスが詰まってて相談したい」とのこと。
成程そういうことでしたらと合流することに。
(ポーカーはそのLINE受けて30分後すぐ飛びました。)
顔を合わせ少し雑談を済ませた後、まずは台本を見ることに。
…
……
………
面白いな。てか熱量がすげえな。
台本がもう熱い。なんなら文字から温度が伝わってくる。
この作品にかける意気込みが、鬼丸さんが「俺はこれがやりたいんだ!」という想いがそこから溢れるようでした。
記念公演への熱意は尋常ではありません。ここは私も応えないと。
さて、物語が詰まる時って原因は大きく2つ。
①純粋にネタが思い浮かばない。
②話が広がってどうまとめたらいいかわからない。
今回の問題は明らかに②でした。
物語の1~7を読んで、この流れならもう最後の「10」は決まってる。
ただ、そこへ行くための「8」と「9」をどうするべきかという問題でした。
鬼丸さんを知っている人はご存じだと思いますが、あの人はとてつもないアイデアマンです。
こちらが1つ思いつく時間で20個も30個も思いつく。
しかもただ思いつくだけじゃなくて、それを掛け合わせてより面白いアイデアを浮かべる。
一言で言えば
足し算の天才です。
鬼丸さん以上に足し算が面白い人はそういません。ここ本当に凄いところ。
勿論普段から努力してる賜物なのでしょうが、足し算が苦手な私としては純粋に羨ましい部分でもあります。
だからこそなのですが、アイデアが多すぎると時々紐がこんがらがるように詰まる時があります。
こういう時は無理にその紐を無理やり引っ張ったり一度切ったりせず、ゆっくり紐を解く作業が必要です。
さらにその作業、1人でやるより2人かそれ以上でやった方が効果が高いことが多いです。
私足し算は苦手ですが引き算は得意です。こういうお話の紐を解く作業は得意だしなにより好きです。
C.C.Cメンバーのマリコさんには「紐解きおじさん」と名付けられました。間違ってません。
少しずつ進めていた紐解き作業中に「何故私を呼んだのか?」を聞いたときに、
「やべっちの脚本は信頼している」
と言ってくれたのは嬉しかったです。
およそ3~4時間、その日の後もゆっくり紐を解き続けてようやっと、鬼丸さんの書きたい筋が見えました。
脱稿した時は何度もお礼を言われ、クレジットもスペシャルサンクスではなく
「脚本構想協力:矢部亮(BQMAP)」
を入れてくれました。
舞台人として、個人クレジットは何よりの御礼です。
だからこそ、昨夏公演が中止したお知らせを受けた時は本当に悔しかった。
あの熱量を、鬼丸さんからもメンバーからも感じていたから、
BQMAPも4月に公演中止をし、全ての力が抜けたような虚無感を感じた経験があるから、
メンバーではないのに、悔しかったです。
メンバーの方が悔しかっただろうに、私も悔しかったです。
どういう想いでLINEを送ったらいいかわからなかったのですが、「お疲れ様です」と連絡を送ったんです。そしたら
と返ってきました。
凄いですね。もう前を向いてるんですよ。
陽の人たちは後ろを見ない。もうみんな前を向いている。
悔しさすら力に変えて前を向いて足を進める。
この力が、熱があれば、必ず公演は成功する。
そう確信を持っていました。
そして、2023年2月。
半年の充電期間を終え、満を持して「アンビエントボーダー」はお客様の前で披露されました。
シブゲキの看板を目の当たりにした時から、受付でサトコや天野ちゃんの顔を見てから、前説で「嗚呼いよいよ始まるんだな」と思いながらなぜか私が緊張し、
親戚のおじさんのごとく「頑張れ!頑張れ!」と手に汗握りながら開演を待ちました。
そしてカーテンコール。
色んな思いがそこにありました。感慨深かった。
改めて、芝居を上演できるのは決して普通なことではないことを思いながら、元メンバーは客席で様々に渦巻く感情に浸っていました。
うん。
公演が出来て、少しでも携われて、道を開けてよかったです。
Creative Company Colors第10回公演「アンビエントボーダー」
2/5までシブゲキにて上演しております。
ネタバレは避けますが、極上のエンタメが、みんなの溜めに溜めたエネルギーが爆発しています。
皆様是非、足をお運びください。
面白さは、元メンバーが保証します。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?