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自動走行ロボレース「DeepRacer」で世界2位!大野さんへインタビュー【前半】

12月1日~6日に米・ラスベガスで行われたAWS(Amazon Web Service)社の年次イベント「AWS re:Invent 2019」。そこでAWSの強化学習プラットフォームを利用した自動走行ロボのレース「DeepRacer」の決勝レースが行われました。

そこで世界1位と2位に輝いたのは、なんと両方日本人!
今回はなんと、2位になった株式会社DNPデジタルソリューションズの大野さんから、お話しを伺うことができました!

聞き手はDeep4Drive代表の阿蘓。
同じくDeepRacerで戦っていた者同士、盛り上がったインタビュー。2回に分けてお送りします。本日は【前半】です!

大野史暁
Web系システムエンジニアを経てスマートフォン向けのアプリケーションの開発などに従事。現在はプロトタイピングによる提案や技術調査、IoT、先端技術のR&Dなど、幅広い分野に取り組んでいる。


DeepRacerを始めたきっかけ

阿蘓「以前、AmazonのDevDay 2019でお会いした時以来ですよね。今じゃDeepRacerで世界2位になっちゃって。笑 おめでとうございます。」

大野「ありがとうございます。笑」

阿蘓「今日はラスベガスでのこととか、始めた経緯とか、色々お話し聞かせてください! よろしくお願いします。まず、DeepRacerを始めた頃のことから聞いていいですか?」

大野「会社でDeepRacerに取り組むっていう話はずっとあったんですけど、去年のre:Invent 2018に行ったメンバーが、そこで発表されたDeepRacerを見て、これは凄い、会社で何かできないかとなって。その方が会社に上申して、有志のメンバー集めて、DeepRacerに関する取り組みを始めたのがきっかけです。僕は元々、事務局側で関わってたんですけど、事務局やるにしても結局中のこと、例えばどうやって始めたらいいの?とか説明しなきゃいけないんで、僕も触ってみようと。面白そうだし。だから自分からやろうと思っていたものではなくて、話が舞い込んできたから、自分でも触ろうと。それが今年の2月頃でした。」

阿蘓「あれ、元々自分のアカウントで社内活動が始まる前からやり始めたって思ってました。」

大野「社内で始まる前というよりは、会社のアカウントはあったんですけど…。たしかDeepRacerのコンソールが出たのが、ゴールデンウィーク入る直前ぐらいでしたよね?」

阿蘓「そうですね。」

大野「会社で提供されるアカウントって、会社のネットワークからじゃないとアクセスできないじゃないですか。なんで会社にいる時でないとできない。僕は単純にDeepRacerのコンソールが出る前までも、会社ではやってはいました。SageMakerとNotebookを使って、DeepRacerのモデルを作ったりはやってはいたんですけど、コンソールで作ったモデルの方がよく走れるという話しを聞いて、早く触ってみたいと思ったので、もう自分のアカウントでゴールデンウィーク中にガッツリ触り始めちゃいました。」

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阿蘓「会社の仕事でも元々AWSとかって使ってたんですか?」

大野「直接仕事で自分で触るということは少なかったですね。半分趣味でAlexaのスキル作ったりとか、あとはちょっとしたIoTなんかのデバイスとかを作ったりして、そのデバイスがセンシングした情報とかを、AWS IoTというサービスを通じてデータを見たりとか、別のところにフィードバックしたりとかで使ったりとか。」

阿蘓「プライベートとかでもちょくちょく使ってたんですね。僕らの場合、そもそもAWSってなんだ?ってとこから始まってたんですよ。笑」

大野「しかもいきなり入るとサービス多すぎて訳が分からない。笑」

阿蘓「本当に多くて、なんだと…。」

大野「僕もたまにがっつり勉強しよかなと見ることあるんですけど、サービスが見るたびに増えてて、何から触ればいいのか分からなくなります。」

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阿蘓「コンソールが出てからプライベートでもやり始めて…結構最初から速かったですよね?」

大野「そうですね。割と調子が良かったので。笑
調子が良かったせいで、ずるずるやってしまって。」

阿蘓「結構お金かかりました?」

大野「かかりましたね。笑」

両方「笑」

大野「後半はプライベートでやってる分はお金かからなくなってきたんですけど、最初はそもそも機械学習とか強化学習とか自体も、勉強しながらだったんで、効率よくモデル作るのができないので。たくさん試行錯誤しながらやらなきゃいけないから、その分トレーニングの時間も長くなって。」

阿蘓「死んでくモデルをいっぱい作ったんですね。笑」

大野「そう、死んでくモデルを物凄くたくさん…。笑
その屍の上に、良い記録が出ていたという。
屍にもたくさんお金がかかっていました。」

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(屍モデルについて楽しそうに話してくださる大野さん)

阿蘓「コンソールが始まって、ランクが出るじゃないですか。Fumiakiっていう日本人っぽい人がいて、そもそも誰か分からなかったんですけど、誰かいるぞっていう話をDeep4Drive内でもしていて、この人が東京大会出てくるとやばいぞって。」


DNP vs Deep4Driveだった6月の東京大会

阿蘓「東京の大会も結構メンバーいらっしゃいましたよね?」

大野「いましたね。会社で2月から勉強会を始めてて、名目上、社内で月一回レースをやっていたんです。けどそれ自体は、notebookのevaluationを例えば5回とか走らせると、ラップタイムが出てきて、そのラップタイムを競うという感じで。だから、自分のnotebookのevaluationした結果のリストを事務局に出して、最後にみんなで集まって、お前が一番速かったぞって。結果発表の場だけにみんな集まるという。

結果発表して、みんながそれぞれ一ヵ月間こういう工夫しましたみたいなのをパワポとかで資料にまとめて、上位3~4人とかが、その資料を発表していた。結果発表と、ノウハウの共有みたいなのをやっていました。まあ、地味な大会を繰り返していたので、みんな実機で走らせたかったから、東京サミットはその機会だったので、みんなそこに集まっていた。」

阿蘓「東京大会の時に思ったのが、DNPさん結構上位三名だけやたら速くて、他のアカウントとの差が結構ありましたよね。」

大野「たしかにありましたね。僕も三日間全部行ってたんですけど、初日にうちのメンバーがかなりいいタイム、7秒台のタイム出してて、僕が最初走らせた時は9秒6とかだったんで。モデルを元々幾つか用意していたので、一番最初は物凄く安全に走るモデル、実機で綺麗に走れるモデルを試してみて。綺麗に走ったのは走ったんですけど、タイムはそこそこだったっていう。」

阿蘓「9秒台だと速い方ですよね。」

大野「9秒でもそこそこ走った方なんですけど、他のメンバーがいきなり物凄いタイム出してて。僕はもう1人の彼と一緒に結構まわってたんですけど、初日からそのタイム出してるから、DeepRacer TVの取材を物凄く来てて、僕はその取材の後ろに映りこんでるって状態だったんですよね。」

(DeepRacer TV東京大会↓
各国レースで大会の様子を伝えるため、AWSが製作している。)

大野「まあ、それで、どういうモデル使ってるの? なんて聞いたりして。あと何時間トレーニングしたのかとか。あんまりトレーニングさせすぎると、逆に走んなくなったりとかしていたので、モデル幾つか作ってみて、当時の感覚だと、8時間くらいトレーニングしたモデルが一番良くって、10時間以上トレーニングしたモデルだと逆にキコキコ動いちゃって、あんまよく走んないみたいな話をしてました。」

阿蘓「Deep4Driveでも同じくらいだと思う。最初に気づいたのが、5回Evaluationできるじゃないですか、最初の5回100%通ったんで、これいいやと思ったら全然走らなかったりして、あれ?と思ってEvaluation何回かやると、2回目とか3回目とかで極端に落ちることがあったんですよね。それで、あれ、実は全然モデルって、精度よく走ってないなと気づいて、6時間くらいのトレーニングで収めてたのを、安定するようにして、ようやく7秒台切れるモデルになったって感じでしたね。」

大野「他には二日目にトレーニングし直したものを走らせたのと、あと、タイム出すためにスロットルをどこで上げるか調整してましたね。僕はスロットルの操作がタイムに大きく影響すると思っていて、直線入る前にタブレットのボタン連打して、スピード上げて、カーブ入る前にうまいことスピード落としてモデルがちゃんと認識できる速度にする、みたいな勝負になっちゃってたと思うんです。バーチャルレースだとそういうのがないんですけど、実機のレースだとそういう要素があったのかなと思っていて。」

阿蘓「僕らの戦略はどっちかというと、タブレットって通信遅れとかあるじゃないですか。押しても戻らなかったりしてまどろっこしいなと思って、とりあえず最高速で一番安定して走れるものでずーーーーとやって、良いタイムを待つみたいのをやってました。だから、減速、加速みたいなのをやってなくて…。やった方が良かったのかな。笑」

大野「僕はめっちゃやってました。」

両方「笑」

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(実機レースではタブレットを使い、1~100の数値でスピード調整ができる。)

大野「僕はそれでタイム伸ばしてきたようなもんなんで。
後から1位になったSolaの話とかを聞いても、最初はあんまり動かしてないって言ってたんですけど。最後の方はやってたのかな。最後の一周の直線とか。あんまりそこのテクニックだけでタイム伸びるとかっていう話になると、自動運転とはなんだという話になると思うんですけど。」

阿蘓「最後はマニュアルで伸ばすっていう。笑」

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(最後はDNPの3人が表彰台独占。Deep4Driveは4位以下と完敗でした。)


東京大会後にバーチャルリーグで念願の1位

阿蘓「その後から12月まではずっとやってました?」

大野「やってましたね。まあ僕は結局東京サミットでは2位だったので、別にラスベガス行ける権利もなく。5月のバーチャルレースでも二位だったんですよ。これなかなか取れないなって。で、6月のバーチャルレース、Kumo Torakkuをやってて、そこでうまいこと一位になれたというべきか。個人的にラッキーだなと思ったのは、ちゃんと見てないですけど、Kumo Torakkuが一番参加者が少ない大会だったかなと思っていて。笑」

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(実はKumo Torakkuは、鈴鹿サーキットからインスパイアされたレイアウトをしている。Source: AWS DeepRacer)

「その時DeepRacerのSlackコミュニティにも入っていて、周りの様子も聞いてたんですけど、5月で一位だったKarlっていう選手がめちゃくちゃ速いんです。5月の大会とかも彼が一位で、6月は僕が勝ったんですけど、その後の7月8月9月とかも全部彼が勝ってるんですよ。6月の後半あたりに彼がバケーションかなんかで休んでたんですけど、事前に作ったモデルでやってたらしくて。笑」

阿蘓「Kumo Track…参加者572。」

大野「少ないんですよね。笑」

阿蘓「それが最後の方は凄くなりましたよね」

大野「最後凄かったですよね。結構やっぱ、最後の方、途中でたしか、AWSさんが学生向けのeプログラムを始めて、そこから一気にニーズが上がりましたね。」

阿蘓「最後は2000ぐらいですね。」

大野「ハハハ」

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阿蘓「たしかに学生個人でやるって言ったら、お金足りないですもんね。10万とかいっちゃうんで。ラスベガスの前にも準備はしていったんですか?」

大野「準備はしていました。実機はないっちゃないんですけど、オープンにするイベントを開くんだったらAWSさんとしては貸してくれるって話があったので、ラスベガスへ行くっていう日本人のメンバーが他にもいたんで、その人達とかにも声をかけて、ラスベガス行く前の試走会をやろうみたいなのがあって。ただまあ発表されてるコースって新しいコースが11月くらいに発表されたんですけど、そのコースは作ってなくて、どうしようってなって。たしか10m×10mのビニールの物凄い雑なのを作ったんです。」

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(提供:大野史暁)

大野「もうこーいうレベルで。養生シートの上にテープ貼って。だいたいこんな形だろうと。正確な寸法は出てなかったのでなんとなくなんですけど、バーチャル上のコースの長さとかの比率で、2018のコースよりこれくらい大きいだろうっていうので作って、それで会社の方で試走会をしてました。まあ一番怖いのが、作ったモデルが全然走らないってことだったんで、あんなコースでも多少走ったモデルだったら、きっと現地の綺麗なコースだったらもっと走れるだろうという確認を取ったりしてました。」


なかがき

前半ではDeepRacerを2月に始めてから、6月の東京大会、その前後のことについてお届けしました。

後半はついに、ラスベガスでのことです! お楽しみに!
Twitter: @Deep4Drive


編集:Wataru Kawamoto
Twitter: @wataponf1_uk

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