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【チーム分析】 フットボールの興奮を呼び戻してくれたジョージア🇬🇪 【 #ユーロ2024アーカイブ化計画 】

0. イントロ

 カタールW杯から1年半の月日が流れ、個人的には転職や結婚を経て、ヨーロッパのフットボールをリアルタイムで追うことはできなくなった。あわせて、Twitterを開く頻度も落ちているため、いわゆる戦術的なトレンドが頭に入っていた数年前と比べると、フットボールへの解像度は低くなっている可能性は高い。ただ、今回抽選で割り当てられたEURO本大会初出場のジョージアは、ナショナルチームが持ちうるタレントを最大限に発揮しながら、見ている者の感情を昂らせてくれる稀有な組織だったと感じている。したがって、このチームをアーカイブする責任は重い。

 まずは、今大会のジョージア代表の旅を簡単に振り返りたい。

📝 EURO開幕時点でのFIFAランク = 74位 
👤 監督 = ウィリー・サニョル 🇦🇷
🏃‍♂️ 有名選手 = クワラツヘリア、ミカウタゼ、ママルダシュヴィリ
⚽️ 戦績
  ・GS1 = 1-3 vs トルコ 🇹🇷
  ・GS2 = 1-1 vs チェコ 🇨🇿
  ・GS3 = 2-0 vs ポルトガル 🇵🇹
  ・決勝T1 = 1-4 vs スペイン 🇪🇸
→ EURO出場国でFIFAランク & 初出場ながら、ベスト16で敗退

https://www.goal.com/jp/%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88/euro-2024-teams-all-guide/bltd12f52a2a2a25d93#csa2710e73722f7244

 有名選手が多くいるわけではないが、初めてのEURO本大会で積極的な戦いを見せながらGSを通過し、チャンピオンチームであるスペイン相手にノックアウトステージで散る。10数年前であれば、W杯本大会で日本代表がこれだけやったら国内がサッカーフィーバーになっていたのかもしれない。それくらい、期待値よりも上向きな結果を手にして、ジョージアは開催国であるドイツの地を去っていった。

 予習はほとんどなくトルコ戦を見た最初のつぶやきを起点に、まずはチーム分析を進めていく。フットボールの細かいところが知りたい、加えてチームにいくつかのウィークを抱えているが強烈なストロングもありつつ、格上の相手に勇敢な戦いをしたいチームスタッフにはすべて読んでもらえると喜ばしい。ただ、そこまで興味のない方々には「1. 劣位に立つチームが勝率を上げるために」のサマリだけ読んでもらって、「2. フットボールの熱狂を生み出すのはトランジション?」へ進んでいただいても問題ない。

1. 劣位に立つチームが勝率を上げるために

サマリ

☑️ 基本戦略
 A. 5-{3-2 | 4-1 }のミドルブロックがベースで、能動的にはいかない。ゾーン < マン
 B. 2トップをまず目指しながら個の力で打開しつつ、相手ペナ外からもシュートで終わる
 C. 劣位だからこそビルドアップは諦めない。3-4-3で広く振るし、ボールと時間は過ごそうとする

A. 5-{3-2 | 4-1 }のミドルブロックがベースで、能動的にはいかない。ゾーン < マン
守るチームが運用する5-3-2 or 5-4-1の配置だが、ローよりもミドルを保つという姿勢と、ゾーンでなく人に注意を割く意識が相まって、元気なときはボールハントの局面が多々あったのが印象的だった。その反面、強度不足になったら裏返され続け、相手のシュートチャンスが生まれる仕様になっている。潜在的なリスクは抱える戦い方と言えるだろう。ただ、選手の質の総量で負けていても崩れないチームはあるし、ジョージアもその一例になる。ペナの中では打たせない、そしてキープレイヤーは、GK。止めまくったママルダシュヴィリは、リヴァプールへ異動した。

B. 2トップをまず目指しながら個の力で打開しつつ、相手ペナ外からもシュートで終わる
このチームの顔といえば?正直、自分はナポリのクワラツヘリアしか知らなかったし、あまりプレーも見たことがなかった。それくらい、クワラツヘリアがジョージアの顔である。その絶対的な特徴はドリブルで、複数人に囲まれてもよくチームを敵陣に押し返す働きを見せていた。あのときのベルギーのアザールや、あのときのアビスパの増山朝陽を思い出す。そして今大会でその名前を売れたであろうミカウタゼとのコンビネーションを起点に、カウンターでは敵陣まで入り込み、基本的にはシュートで終わる。分かりやすい戦略だが、個が揃わないと実現が難しい。ドリブラーと背負えるCFは正義。

C. 劣位だからこそビルドアップは諦めない。3-4-3で広く振るし、ボールと時間を過ごそうとする
ボール保持が標準装備になった、ここ数年のフットボール界では教訓を持つ言葉ではないかもしれないが、「劣位だからこそビルドアップは諦めない」はもう少し日本の高体連に広まってほしい。ただ、質的に劣位なチームは形式的な配置でビルドアップができても、格上のまだ見ぬプレッシャーの圧力に刈り取られることがほとんどだ。しかしながら、ジョージアにはは1人でボールを守り、逃がせる選手が各所に配置されているため、詰みかけた状況でも回避できる。ピッチ上のロジックも大事だが、個でやれる選手がいないことには話にならん。だからこそ、広く振っても問題なかった。往年のオランダや福岡の赤い彗星のようにサイドからサイドに振って低いクロス。そして、シュートチャンスもトランジションも増える。見るものを魅了するアタック戦略だった。

ディティール

ウィングTOウィングができる選手たち
ウィングバックから逆サイドへのサインドチェンジは、受けた側がボールコントールと周囲のサポートという意味で劣勢に立つケースが多いが、ジョージアはこの展開を比較的多く使っていたことに驚きを感じた。なぜなら、ボール非保持の時間が長い質的に劣位に立つチームは、ボールを奪ったサイドから隣のレーンにまたぎながら直線的にゴールへ向かう片道運行のカウンターアタックのみしか準備もしくは実行できないことが多い。ただ、ジョージアにはエースのクワラツヘリア以外にも、サイドチェンジを受けて単騎でスピードアップしていた左WBのツィタイシュヴィリや、サイドチェンジ後の再構築を促した司令塔の#6 コチョラシュヴィリが躍動して陣形を広げたあとでも個人でボールを守れる選手がいてこその戦術だったと言える。個人でなんとかできてスタートラインに立てるサッカーは厳しい。加えて、#22 ミカウターゼは上背はないけれど背負わなければやっていけない若者のよいお手本だった。昔はアグエロがいたけれど、最近はCFの巨大化が進んでなかなか見つけられていなかったので、この悩みがある選手にはプレー集を渡したくなる。楔のボールに対し、背中にいるDFの矢印を1st.touchで少しだけズラして潜り込む or 背中で守る方法は、必修だ。

攻守で弱点をぼかす
チームたるもの、すべてのポジションに望む能力を持った選手を並べることなどほとんど不可能に近いと言って良い。EURO出場国のうちFIFAランキング最下位であったジョージアも例外ではなく、5-3-2という並びに対し右HVの#5 ソロモン・クビルクベリアが常に怪しい動きをしている印象を受けた。後ろからのビルドアップではパスルートを確保せず、守備時もボールを目で追う時間が長く、自分のマークを軽率に見失うことが多かった。ただ、チームとしては壊れなかったのは敵国の事前分析の不足もあるかもしれないが、ジョージアとしても適切な準備をしているように思えた。特にボール保持においては、#5を経由しない前提での立ち位置を他の選手が取る、そして渡さないという意識がチーム全体に浸透していた。パスネットワークを可視化すれば明白であろう。#5本人においては身振り手振りで指示出ししていたのは少し不思議だったが、ここでも自身を介さないパスルートの提案が多かったのには、ボールを持つことに自信がない自分としては共感できるポイントだった。余談でした。

2. フットボールの熱狂を生み出すのはトランジション?

というところで、久々のチーム分析をノーデータでまとめてきた。アーカイブしておきたかった点はまとめられたので大満足だが、さいきんのフットボール界全体にたいする現時点での想いも添えたい。それは、カオスの発生を恐れるがゆえに安全な構図で時間を過ごす戦略を採用するチームが多すぎはしないか?という問題提起である。勝率を高めるためには最適に近い選択であることも納得がいくのだが、それによってフットボールの熱狂が小さくなっている可能性を懸念している。一時期はファンタジスタは何処へ?のような議論が多くあったが、いま話したいのはこのテーマで、一時期のクロップドルトムント、数年前の高校サッカー選手権のように止まらないシティ×リバプールは見るのに徒労感を感じるほどに楽しかった。ただ、ここ数年のフットボールを十分には追えていないため、杞憂かもしれん。ただ、今回のジョージアは見ていて楽しかった。あとは、CLでペップバイエルンを仕留めたアトレティコにもワクワクしたな。いや、あの試合こそターンオーバーの回数は少なかったかもしれん。ここは定量データによる仮説検証が必要な部分だったので、年末にアドベントカレンダーが立ったらコスパ良く見てみたいところ。

3. まとめ

この章を書き始めるのに1ヶ月ほど要した。再度読み返したら、べつにまとめもいらなかったのかも?と感じた。ただ、この場を通してサッカーを見る楽しみを呼び起こし、ジョージアという良いナショナルチームに出会えたこの企画に最大級の賛辞を送りたい。前回のEUROで複数の配置を運用していたデンマークに惚れてW杯を我が祖国のような情熱で追いかけられたので、また次回のコンペティションまでジョージアの成長をそっと見守れたらと思う。そんな時間はないので、みんなでね。

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