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18歳での起業から6年。大型の資金調達を経て、ロボティクスによる課題解決を広げるNew Innovations

DEEPCOREの出資先であるNew Innovations(ニューイノベーションズ)は、スマートコーヒースタンド root C(ルートシー)事業から始まり、現在はOMO 事業を主力として開発・事業展開を行っています。今回は、代表取締役CEO兼CTOの中尾 渓人さんに起業の経緯やロボットの開発方針、今後の展開についてインタビューしました。

<プロフィール>
株式会社New Innovations 代表取締役CEO兼CTO
中尾 渓人(Keito Nakao)
1999年、和歌山県生まれ。14歳で『RoboCup Junior』世界大会にて入賞。15歳から開始したシステム開発事業で取引先が300を超えたことをきっかけに、高校在学中の2018年に株式会社New Innovations を設立。「人類を前に進め、人々を幸せにする」を理念に、あらゆる業界に向けてOMOソリューションを提供することで、企業の生産性向上や収益増加、顧客体験の向上などに寄与している。「Forbes 30 Under 30 Asia 2023」選出。

1,000坪の本社を構えるまでに成長したロボコン少年

—— 18歳で起業するに至るまでのお話を聞かせてください

中尾:小中高校時代を通して、いわゆる「ロボコン少年」でした。自律型ロボットの国際的な研究競技大会「RoboCupJunior(ロボカップジュニア)」の世界大会にも出場し、高校時代にはロボットの製作費を稼ぐために、学業と並行してフリーランスエンジニアとして働き始めました。この経験が事業運営の予行演習になったと思います。

そうしてロボットを作っているのももちろん楽しかったのですが、大会でいい成績を残すのは究極的には自己満足だなと思うようになってきて。自分が生み出したものによって実社会が変わったり人々が便利になったり、社会によりインパクトのあることを成し遂げたいと考えて、起業することを選びました。

——その頃に、DEEPCORE 代表の仁木とも出会ったと聞きました

中尾:代表の仁木さんにはじめてお会いしたのは、起業のために1,000人近くの経営者や創業者、投資家の方にお話を伺っていた時期でした。初対面での仁木さんは、私に対して “起業した高校生”ではなく、“ひとりのビジネスパーソン”として公平に接してくれました。もちろん仁木さんは手加減していたと思いますが、学生であっても良いものは良い、悪いものは悪いとはっきりお話してくれたのが印象的でした。

——起業当初は、DEEPCOREが運営するインキュベーション拠点「KERNEL」に入居していたんですよね

中尾:はい。まだ現在のプロダクトができる前で、自分の席のまわりにアルミのフレームを組んでロボットを作っていました。
初めてのオフィスを構えることになったときは、KERNELメンバーの東大生の方々に引っ越しを手伝ってもらった思い出があります。見返りを求めずにただ手伝ってくれた皆さんの温かさにとても助けられ、今でも感謝しています。

—— 2023年12月に本社をメブクス豊洲に統合移転されましたが、旧オフィスから約10倍の1,000坪と、かなり思い切った移転をしましたね

中尾:移転には、事業の特殊性が大きく関わっています。ロボットを開発する弊社には、家庭用冷蔵庫4〜5台分くらいの大きさの工作機械が必要になります。こうした機械を搬送するには多大な費用がかかるため、一般的なスタートアップのように業績や社員数の増加に合わせて移転を繰り返すよりも、3回分の移転を1回で済ませた方が合理的だと考えました。

また、2023年の4月に54億円の資金調達を発表したのですが、それを機にご一緒する企業様から求められることも変化してきたと感じていますし、同時に進行するプロジェクトの数も増えました。新オフィスではプロダクトごとにプロジェクトルームを構え、担当外のプロジェクトルームには立ち入れないようにするなど、セキュリティやガバナンスの水準も一段強化しました。

——改めて、スマートコーヒースタンド「root C」について教えてください

中尾:アプリから時間を指定して注文することで、お客様の受け取りたい時間に合わせて挽きたて、淹れたてのスペシャルティコーヒーを専用のロッカーから提供する、完全無人営業のコーヒースタンドです。

現在、オフィスビルや商業施設などを中心に、東京・神奈川・大阪エリアの合計10箇所に設置しています。

——昨年の夏には、経済産業省にもroot C を設置していました。どのような経緯で設置に至ったのでしょうか。

中尾:2021年に、ロボットを用いた無人カフェの営業の実証について経済産業大臣、厚生労働大臣から認定をいただいて実証実験を行いました。通称「規制のサンドボックス制度」といわれる新技術等実証制度です。そのときからのご縁で、経産省に設置いただくことができました。

——その実証実験ではどんなことをしたのですか?

中尾:無人店舗でも食品衛生法の衛生管理ができるかどうかを検証するという実証実験です。このサンドボックス制度で、食品衛生法分野における飲食店の無人店舗に関する実証計画を認定するのは、私たちの事例が初でした。

具体的には、食品衛生責任者などが内部の清掃や部品を交換するほか、センサーで常に温度の管理を行い、カメラを通して遠隔で衛生状態を監視する、といった技術を活用して衛生管理を行いました。

その技術をもとに、root C は牛乳を使用したカフェラテの提供を実現しました。従来のコップ販売式自動販売機では法令で牛乳を扱うことができず、粉ミルク状のものをお湯で戻すなどの方法が取られていたんです。root C で扱っているのは全てスペシャルティコーヒーで、もちろんカフェラテで使用している豆もスペシャルティコーヒー。お客様からは味に対するご満足の声をたくさんいただいています。
※カフェラテメニューは「芝公園ファーストビル」にて提供中(2024年1月現在)

新たな業界への挑戦と温故知新の開発精神

——root C に続く新たなロボット開発について教えてください

中尾:「人類を前に進め、人々を幸せにする」という経営理念の下で、短期的には各業界の労働集約的な部分を自動化することを目標としています。

飲食業界に関しては、厨房にそのまま置くだけで導入できる自動調理ロボットの開発を進めています。設置工事も不要で通常の電源を使用し、少しレイアウトを変えるだけですぐに既存店舗に導入できるのが最大の特長です。

というのも、ご一緒する企業は国内に何百店舗、海外も含めて数万店舗を展開しているようなブランドオーナー様なので、ロボットは一点物ではなく量産が前提。現在、ファストフードやカフェチェーン向けのロボットのプロジェクトが複数進行しています。価格も既存店舗への導入メリットを感じてもらいやすいような設定にしており、5~7年リースでご利用いただいた場合、リース期間における人件費1人分を超えないような500万〜1,000万円弱にしています。

——飲食業界以外のロボット開発予定はありますか?

中尾:飲食業界に続く次の領域としては、宿泊業界、物流業界、建設業界などを考えています。ただし、これらの領域は今すぐに着手する、進行するというものではなく、2〜3年後を見据えて今から検討していくというフェーズです。

その中で、建築業界ではすでに人手不足や労働力不足のお話を伺っているので、可能性を感じています。

建設業界には自動化に適した業務があって、そうした業務を自動化することで職人が行うべき業務に集中できるようになると考えています。例えば、どんな建築案件にも共通する地盤処理や建物の躯体工事は、自動化したほうが品質を管理しやすくなり、コストも下げられます。そして、職人は内装や全体の仕上げに集中できるようになれば、総合的に付加価値が上がると思っています。

——New Innovations の競合他社にはない技術的な強みは何だと考えていますか。

中尾:明確な強みは、ロボットのハードウェアとソフトウェアが社内で共通化されて、技術として蓄積されているところです。こうした蓄積は、既存の大手ソフトウェア会社にもハードウェア会社にもないものだと思っています。技術的難易度が高くても、技術的蓄積があるからこそ、お客様に喜んでいただける案件に挑戦できています。

——ロボティクス分野で注目している企業や技術はありますか

中尾:ターゲティングしている企業や技術といったものはありません。というのも、弊社は特定の技術があることを戦略的強みにしていないからです。役立つと判断すれば、枯れた技術も使います。例えば、昭和後期や中期に使われていたカップ式自販機は古臭いもののように感じられますが、実は技術的に洗練されていて、そうした技術もロボット開発に活かしています。むしろ弊社の強みは、枯れた技術と最近のサーバーサイドやクラウドサイドの技術を、今まで誰も考えてなかったかたちで組み合わせて提供することにあるといえます。

——現在、ChatGPTのような対話型AIが急速に普及しています。対話型AIがロボティクス分野に与える影響についてどのように考えていますか

中尾:ChatGPTが登場して、さまざまなデバイスのユーザーインターフェースが対話型になるのは、マクロ的な技術史から見れば正統進化といえます。実際、私自身もメールの返信や資料作成にChatGPTを使うことがあり、革命的な進化を実感しています。しかし、こうした進化がロボティクス分野に与える影響は、そんなに大きくないと思います。ユーザーインターフェースが対話型になったところで、自動車が走行する工学的原理はタイヤと地面の摩擦によるものなのは変わらず、タイヤが不要になるわけではありません。

もっとも、対話型ユーザーインターフェースの普及は、人々のデバイスに対する見方を変えるかもしれません。自家用車からハンドルがなくなってAIに行き先を言うだけで目的地に到着するようになれば、自家用車は現在のタクシーに近いものとして認知されるようになるでしょう。

着実に品質を上げて、正しい価値を社会に提供する

——最後に、今後の事業の見通しを教えてください。

中尾:2020年代のあいだにIPOを目指して準備も進めていますが、今後3〜5年のあいだは浮足立たずに地に足をつけようとも考えています。

もちろん不可能を可能にするようなスタートアップならでは勢いを失ってはならないのですが、root C をはじめとした自動調理ロボットの品質を着実に上げることに重点を置こうと思っています。正しい価値を社会に提供していけば、ニーズは後からついてくると信じています。

——ありがとうございました!

▼New Innovations 採用情報
https://hrmos.co/pages/newinov/jobs

■会社概要
会社名:株式会社New Innovations
設立日:2018年1月
コーポレートサイト:https://newinov.com/


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