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【イベントレポート】AI研究者・経営者 川村 秀憲教授が語るAI時代の働き方 〜AIのトップランナーと考える、AIと人間が調和する10年後の未来〜

DEEPCOREは、スタートアップ採用マッチングプラットフォーム「LINKS by KERNEL」を運営しています。「LINKS by KERNEL」は、社会人や学生向けに、スタートアップへの参画やキャリア形成を支援するためのプラットフォームで、現在約220名の会員がいます。

今回開催した「AI Startups Career Night」では、DEEPCOREのアドバイザーで、人工知能研究者、北海道大学大学院情報科学研究院の川村 秀憲教授をお招きして、書籍『10年後のハローワーク〜これからなくなる仕事、伸びる仕事、なくなっても残る人』の刊行記念特別トークイベントをKERNEL HONGOにて実施しました。

AI Startups Career Nightは、AIスタートアップの方々に登壇いただき、登壇者の実体験を元にキャリアについて深掘りを行うことを目的としています。
イベント後半には、カジュアルな交流を通じて自身のキャリアを深めるための懇親会の時間が設けられ、参加者にとって有意義な時間となりました。

今回のnoteでは、講演内容の一部をご紹介します。

<登壇者プロフィール>
北海道大学 情報科学研究院 教授
川村 秀憲(Hidenori Kawamura)
2000年3月北海道大学大学院工学研究科システム情報工学専攻博士後期課程期間短縮修了。同年4月同大学助手。2006年同大学准教授、2016年同大学教授となり現職。1999年~2000年、日本学術振興会DC特別研究員。2007年~2008年、日本学術振興会海外特別研究員、ミシガン大学客員研究員。株式会社調和技研、フュージョン株式会社、株式会社インターパーク、株式会社Aill社外取締役。
2024年3月28日、『10年後のハローワーク〜これからなくなる仕事、伸びる仕事、なくなっても残る人』を出版。
現在、DEEPCOREにてアドバイザーも務める。

▼川村教授のインタビューnoteも併せてご覧ください。
https://note.com/deepcore_kernel/n/nf94723121910

AIの進化と社会への影響について

川村教授:はじめに、AIの進化におけるターニングポイントについてお話します。AI業界における一つの重要な出来事は、1997年にIBMが開発したコンピューター「ディープ・ブルー」がチェスの世界チャンピオンに勝利したことです。当時、多くのメディアは「人類がAIに屈する時代が来た」と否定的に捉えましたが、私は逆に、AIの進化が人類に明るい未来をもたらす可能性があると考えました。

例えば、戦争や地球温暖化など、人類の知恵だけでは解決が難しい問題も、AIの技術と人の知恵を組み合わせることで乗り越えていけると強く思いました。そして、自分が興味を持ち取り組んでいるAIに対して、確かな自信を持つことができました。

さらに、2022年に登場したChatGPTは、社会に大きなインパクトを与えました。まだ登場してから1年半程度しか経っていませんが、その影響力は、蒸気機関や電気、自動車、インターネットと同等のものだと感じています。今後は、AIがさまざまなサービスに組み込まれ、私たちの生活を支える技術として定着していくでしょう。

世界を変えたChatGPTの仕組みと効果的な活用方法

川村教授:ChatGPTは、大量の質問や回答を単に記憶しているわけではなく、文章の途中に空欄を作り、その続きを予測する形で学習しています。この仕組みにより、ユーザーの質問に答えるだけでなく、会話を続ける能力も備えています。良い予測は強化され、誤りは修正されるプロセスを繰り返すことで、精度が向上していきます。

ChatGPTを効果的に活用するには、その仕組みを理解することが重要です。ChatGPTはテキスト予測を行うため、必ずしも正確な情報を提供するわけではありません。そのため、間違いや不正確な情報が出てくることもありますが、それは仕組み上避けられないことです。

ChatGPTを効果的に使うためには、「完璧を求めないこと」「AIを人間のように扱うこと」が大切です。ハーバード大学などの研究やさまざまな調査から、AIを完璧なツールと捉えるのではなく、その特性を理解し、人間のパートナーとして活用することで、生産性や成果が向上することが明らかになっています。

AIを使ったサービスの開発において、天気予報のモデルがよく例に挙げられます。天気予報には、天気の予測とその説明という二つの要素があります。ChatGPTは大規模言語モデルであり、気象シミュレーションを行うAIではないため、天気そのものを予測することはできません。しかし、気象庁のスーパーコンピューターが出した数値を、わかりやすく説明することは得意です。つまり、専門的な予測モデルとChatGPTのような汎用AIを組み合わせることで、天気予報のような高度なデータ分析や説明を伴う分野において、新しいモデルを作り出せる可能性があります

加速するテクノロジーの発展

川村教授:テクノロジーの進化は指数関数的に進んでおり、ムーアの法則がその一例です。ムーアの法則とは、簡単にいえば「コンピュータの性能が2年ごとに2倍になる」ということで、AIの進化にも当てはまります。

しかし、実際の進化のスピードはさらに速く、右肩上がりに急速に進展している点を理解しなければなりません。ChatGPTの登場からわずか短期間での進歩も、その明確な例です。今後1〜2年で、AIは特定の分野で人間を超える能力を発揮する可能性が非常に高いと言わざるを得ません。

AI時代、人が追求すべき2つの観点

川村教授:これからの時代、人間が追求すべき観点として特に重要なのは、以下の2点です。

①多様な価値観と能力の追求
AIが汎用的な能力を代替する中で、私たちは「AIと同じことができる」だけでは価値がありません。個々の人間が独自の価値観や能力を持ち、自分だけにしかできないことを見つけて実践していくことが求められます。多様な価値観と能力が共存する社会こそが、より高度で豊かな知能を持つ社会へと進化していくでしょう。

②意思決定
課題には、1つの指標を追求するものと、複数の目的から1つの答えを導くもの(多目的最適化問題)があります。前者はAIが得意とする分野ですが、後者は人間が意思決定する必要があります。引越しや就職、結婚などの選択も、多目的最適化問題の一例です。AIはこれらに対して提案はできても、最終的な決断と責任は私たち人間にあります。良い人生を送るためには、自ら意思決定をし、その結果に責任を持たなければなりません。

質疑応答

Q.AIを最大限活用するために、人間は何を知っているべきですか?

A.AIが得意な分野と、そうでない分野を見極めることが重要です。AIは膨大な知識やデータに基づいた解答を提示できますが、あらゆる問題に対して最適な解決策を提供できるわけではありません。AIに任せることと、人間が意思決定すべきことの棲み分けを理解し、その上で適切に活用することが求められます。

Q.これからのエンジニアの役割はどうなると思いますか?

A.システムインテグレーターやSEなど、決まった仕様書通りにコーディングする仕事は、AIに代替される可能性が高いです。そのため、エンジニアには曖昧で抽象的な問題に取り組む能力が求められます。今後は、創造力や高度な思考力を持ち、AIを活用しながら新しい価値を生み出すエンジニアが、ますます重要な役割を担うでしょう。

Q.自分の幸せの軸を見極め、追求することが求められる世の中で、必要な信念は何ですか?

A.社会の常識や他者の価値観に流されず、自分自身の価値観を持つことが大切です。知らず知らずのうちに、私たちは社会の価値観に影響を受けることがありますが、自分が納得できる基盤を持つことが必要です。子供に対しては、社会のルールを大人が教えることは大切ですが、同時に、多様性を尊重し、のびのびと好きなことに取り組める環境を整えることも重要です。

LINKS by KERNELについて

スタートアップを通じたキャリア形成を目指す人たちをサポートするコミュニティです。

<特徴と支援内容>
①スタートアップ就業機会の紹介
②先輩起業家・CxOとのネットワーキング
③専門家によるコーチング
④会員制インキュベーション拠点「KERNEL HONGO」限定イベントへの招待

起業やCxOを志す社会人・学生に、スタートアップでの就業機会(現在50社以上の求人情報を掲載)、先輩とのネットワーキング、専門家によるコーチング等を通じて、必要なスキル、知識、自信、人脈の獲得を支援します。

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