第7回「ガチ中華」人気4ジャンル~④「小吃」ジャンク系、朝ごはん、ひんやり系
「ガチ中華」の中には、一般の日本人が食べたことのない食材、ゆえにゲテモノ感の強い小吃(シャオチー)もけっこうあります。その筆頭はザリガニでしょうか。
もともと日本にはない、あるいは仮にあっても食べる習慣のない食材ですから、食用として中国やアジアの国々から輸入するほかないわけですが、いまではこれらのインポート食材を使った「ガチ中華」を消費するのに充分な顧客が日本にいるから、ぼくらの目の前にこうした小吃が現れるようになったのです。
では、ジャンク系小吃からいきましょう。
■小籠蝦(四川、江南など)
小籠蝦(シャオロンシア)はひとことでいえば、スパイシーなザリガニ料理。
2000年代前半から上海で流行していましたが、最近は都内でも食べられる店が増えています。ザリガニをニンニクやショウガをたっぷり入れ、濃いめの味で調理。たいていの店で手が汚れないようビニール手袋を用意してくれます。
日本ではザリガニというと、泥川に生息しているせいか、とても食用というイメージはありませんが、中国では養殖ザリガニが、特に若い人たちの間で好んで食べられています。ザリガニ料理の外食チェーンもいくつもあるのですが、最近都内ではザリガニ専門店もいくつかできています。驚きますね。
■鴨脖(四川)
中国の若者が大好きジャンクフードの筆頭は鴨脖(ヤーボゥ)でしょう。
近頃、都内でやたらと増えているのが、鴨脖のチェーン店です。鴨の首(頭や爪、鎖骨、舌など)をトウガラシや中華山椒の花椒(ホワジャオ)と一緒に煮込んで燻製にしたもので、四川省や湖南省が発祥の料理ですが、この種のチェーン店の鴨脖は必ずしも激辛ではないので、意外と食べられます。
こんなに種類がいっぱいあります。
■臭豆腐(台湾、中国各地)
台湾グルメ好きには、独特の臭いで知られる臭豆腐(チャウタウフー)が好きという人はいるかもしれません。夜市の定番グルメです。テーブルに出されると意外に臭みが気にならないというか、カリカリに揚げた表面部分をサクッと齧ると、中にはふわふわの豆腐が口に染み出し、おいしいですね。
ぼくにとって特にうれしいのは、中国語圏各地の朝ごはんが気軽に食べられる店が現れていることです。きっと多くのみなさんもこれらの小吃のことはご存じではないでしょうか。
■油条(中国各地)
中国の細長い揚げパン「油条(ヨウティアオ)」と豆乳は中国の朝ごはんの定番。屋台や露店に座ってのんびりいただく瞬間に癒されます。それが東京でも楽しめるというのですから、たまりません。
温めた豆乳に油条をつけたら、ほんのりした甘さが染みて、フワフワのパン生地が口の中で溶けていきます。ちなみに中国語で豆乳は「豆浆(ドウジャン)」といいます。
■豆腐脳(中国各地、台湾)
できたての柔らかい豆腐に熱々のあんをかけていただく豆腐脳(ドウフナオ)も朝ごはんの定番です。
豆乳を固めた豆腐の一種ですが、日本の絹ごし豆腐より柔らかで、ゼリーのような食感のある小吃です。豆腐脳には、しょっぱいものと甘いものがありますが、北京など北方ではしょっぱいのを食べます。醤油やお酢でつくったあんと豆腐はよく合います。お酒を飲み過ぎた翌日などよさそうです。
■お粥(中国各地)
中国語圏のお粥は、米に油をまぶしてダシと一緒に長時間炊いてつくります。ダシは豚骨や鶏ガラ、また貝柱を入れる場合も。朝ごはんとしてこれほどありがたいものはないでしょう。
米粒が割れて形が崩れてトロトロになったお粥は、臓物や肉団子、魚の切り身など、さまざまな具材を選ぶことができます。中国全土で食べられていますが、都内で最近増えているのは本格的な広東粥の店です。もし自宅の近所にどんな「ガチ中華」の店があるとうれしいかといわれれば、断然お粥の店ですね。
仮に「ひんやり系」と名づけてみましたが、軽食やおやつとしても楽しめます。
■涼皮(中国各地)
中国では夏に女性がよく食べているのが涼皮(リャンピー)です。
小麦や米粉の平たい麺に甘辛く酸っぱいソースがかかっていて、ひんやりツルンとした食感がおいしく、キュウリやパクチーを和えて食べる西北地方が発祥の麺料理です。夏は暑さを和らげ、冬は体を温めるといいます。ただし、ソースの味は地方によって違い、四川省ではスパイシーなスープがかかっています。
■涼粉(四川)
涼粉(リャンフェン)は、四川省南充発祥の小吃です。
エンドウ豆を原料として固めたところてんのようなものを厚めの短冊切りにして醤油、酢、ラー油などを合わせたピリ辛ダレをかけて食べる一種の汁なし麺。のどごしがよく、特に夏場に好んで食べられる一品です。都内の四川料理のメニューにたいてい入っています。前菜の位置づけです。
これらの小吃が身近な存在になったのは、都内各地に中華フードコートやカフェ風の「ガチ中華」軽食店が続々オープンしたせいです。これらはもともと小腹が空いたとき、おやつ代わりに食べるもので、若者の食べ物のように思われていますが、実は中国の中高年の人たちも懐かしさゆえによく食べている光景を見かけます。