エピソード(9):肛門、デルマトームS5?なぜ東洋系Bodyworkは注目した?
エピソード(9):肛門、デルマトームS5?なぜ東洋系Bodyworkは注目した?
「丹田」と同じように、現代生活では身体論として「肛門」という言葉を使う事はあまりない。しかし西野流呼吸法では身体認識部位(reference point)の重要な1つである。
これは武道では現在も使われる。
野口三千三の「野口体操の理論(野口三千三、岩波現代文庫S80、p219、2003)」などにもはっきり会陰部が記載してある。
東洋的身体訓練法としては古来より使われていた。
中国の太極拳においても「提肛」(肛門を引き締める、持ち上げる)という言葉もある。
バレエではおそらく別の言葉でこの感覚は記載されているのだろう。
しかし肛門をどう意識するのか?
元宝塚スターの紫吹淳さんが、以前テレビで肛門を意識する工夫として「座薬を出したり入れたりする感覚」と話していた。100周年を経た宝塚では、バレエ、日本舞踊の教程としてこうしたイメージ教育もされているのか?
私自身は肛門意識の意義をどう説明したらいいのか、長らく悩んだ。
現在は2つの説明をしている。
一つは身体論として肛門近傍の感覚神経支配(デルマトームという)はS5領域。
すなわち脊髄神経の最末梢神経支配に相当する。体幹の最尾端である。
先のエピソード(7)(リンクhttps://note.com/deepbody_nukiwat/n/nc9da18e40158)でも説明した通り、これは我々の身体を四足動物の前後方向に置き換えて考えると理解しやすい。後脚は腹鰭からの進化であり、身体軸の最後尾ではない。
実は下肢の裏側から肛門付近は仙椎神経の支配となる。
舞踊のような全身をイメージ(awareness)する上で、最も尾端を意識することは意味があるのではないか。
もう一つは、口と肛門は消化管の入り口と出口である。
広い意味で動物の機能的前後軸を形成している。
ヒトデでのような前後軸が判然としない生物でも、発生段階で肛門が形成されると回転軸が現れる。口~肛門軸を中心とする回転が始まるという(参考:「細胞の意志」、団まりな著、NHK Books 1116, p203, 2008)。
すなわち無脊椎動物においても、ある意味で身体軸を形成することになる。
実は発生学的には、肛門は内胚葉性細胞と外胚葉性細胞が接続する場という意味もある。
呼吸法生理論とはすこし外れるものの、実は肛門/S5に関して、インド地域ではじまった坐法の様式にも関心がある。
坐禅における結跏趺坐である。
なぜ両脚を組んで、座骨を立て、その上に背筋を伸ばして、呼吸法の瞑想に入るのか?
このインド坐法の生理学的意味は何か?
座骨/S5を底として組み立てる、垂直な体幹部の、しかも力みのない寛いだ姿勢。
この姿勢のActive expiration(能動呼気)は、脳networkのSalience modeに繋がるのか?
インド地域から世界に影響を与えた2大発見!
一つはゼロ(0)の発見、一つは坐法の発見。これは相互に関連するのか?
しかしこうした説明とawareness修練は、実際はどう関連するか?
古来の修法にひたすら勤しむべし。
古来中国の重要な修法、「周天」としても後ほど説明したい。