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司法試験[環境法]:環境影響評価法攻略ガイド

環境法は司法試験の選択科目の中でも難易度が高く、多くの受験生が苦戦を強いられています。本記事「司法試験[環境法]:環境影響評価法攻略ガイド」は、環境影響評価法を中心に、環境法の重要論点を体系的に解説し、司法試験合格への道筋を示すものです。

環境法は現代社会の重要課題と密接に関わる法分野であり、司法試験でも頻出テーマとなっています。しかし、多くの受験生は以下のような不安を抱えているのではないでしょうか。

  1. 環境法の体系が複雑で、全体像を把握できない

  2. 環境影響評価法の手続的側面と実体的側面の関連性がわからない

  3. 環境訴訟の多様な形態と要件を整理できていない

  4. 最新の法改正や判例の動向についていけていない

  5. 論文式試験で求められる法的思考力の養成方法がわからない

本ノートは、これらの不安を解消し、あなたの合格可能性を高めます。その理由は以下の3点です:

  1. フローチャートメソッドによる思考整理:複雑な環境法の論点をフローチャートで視覚化し、論理的思考力を養成します。

  2. 論点の関連付け:環境影響評価法を軸に、関連する法律や判例を有機的に結びつけ、体系的な理解を促進します。

  3. 多角的な視点の獲得:環境保護と開発利益のバランス、行政裁量と司法審査の関係など、多様な視点から環境法を考察する力を磨きます。

環境法の学習は決して容易ではありません。しかし、本気で取り組む覚悟のある方には、必ず道は開けます。本ノートは、あなたの真剣な学習をサポートするために、約2万字の充実した内容、重要ポイントの解説、理解度テストを用意しています。

一方で、「とりあえず目を通すだけ」という方には、このノートはお勧めできません。本ノートは、環境法の深い理解と実践的な論述力の養成を目指す方のために作られています。

司法試験合格後は、環境問題に精通した法曹として、持続可能な社会の実現に貢献できるでしょう。環境法の専門性を活かし、企業法務、行政、NPOなど、多様なフィールドで活躍することができます。

本ノートと共に、環境法の奥深さに触れ、司法試験合格への確かな一歩を踏み出しましょう。


1 令和3年環境法 論文式試験問題

本問は、環境影響評価法に基づく環境影響評価の手続的瑕疵、環境訴訟の多様性、計画段階配慮書制度の意義、戦略的環境アセスメント(SEA)の必要性、複合的環境被害の因果関係など、環境法の重要論点を多角的に問う問題です。実務上の課題や最新の法改正の影響も踏まえた、実践的な法的思考力が問われています。

1.1 論文式試験問題集[環境法]

A県は、輸送量の増加に伴う渋滞緩和のため、A県内に6車線の一般国道(以下「本件国道」という。)の新設を計画しています。本件国道の新設事業は、環境影響評価法の第一種事業に該当するため、A県は、同法に基づく環境影響評価を実施し、国土交通大臣に対し、法令上必要とされる道路法第74条に基づく認可(以下「本件認可」という。)を申請中です。

A県は、計画段階環境配慮書において、道路の位置について、費用対効果が高いという理由でPルートを設定しました。Pルート上のB地区には、A県の固有種で、絶滅危惧種の植物Qの稀少な群生地が存在していましたが、道路の新設中止や別ルート設定の検討はなされませんでした。

計画段階環境配慮書に対し、B地区に居住し、長年Qの研究・保護活動をしているC、及びA県に拠点を置く自然保護団体である特定非営利活動法人Dは、「輸送量の増加は僅かであるため、国道の新設自体が不要で財政上の無駄である。」、「Qを保護するため、少なくとも別ルートの検討をすべきである。」との意見書をA県に提出しました。しかし、A県は、環境影響評価準備書においてQの一部を別の場所に移植する旨を記載するにとどまりました。これに対し、C及びDは、「Qの移植が成功した例はなく、環境保全措置が不十分である。」との意見書を提出しましたが、環境影響評価書にはこの点に関するA県の見解は記載されていませんでした。環境影響評価書作成後に、A県がQの移植実験を行ったところ、全株が消滅しました。

また、Pルート上には密集市街地のE地区も含まれており、E地区の住民Fらは、計画段階環境配慮書、環境影響評価方法書及び環境影響評価準備書について、「E地区の近くにはG社の石炭火力発電所があり、同発電所による環境負荷との複合影響を検討すべきである。本件国道の供用により、環境基準を超える浮遊粒子状物質(SPM)及び騒音による健康被害や生活環境被害が生じる蓋然性が高く、少なくともE地区についてはトンネル化し、換気所にSPM除去装置を設置すべきである。」との意見書をA県に提出しました。環境影響評価準備書及び環境影響評価書には「本件事業により環境基準を超えるSPMや騒音が発生するおそれはない。」と記載されていましたが、A県に対するFらの情報公開請求により、SPMに関する予測データの一部が改ざんされていたことが明らかになりました。

〔設問1〕

⑴ C,D及びFらは,前記の環境影響評価手続には瑕疵があり,また,環境影響評価法及び【資料】に照らし,国土交通大臣が本件認可をすることは違法であると考えています。本件認可が違法であることの論拠としては,どのようなことが考えられるか,説明しなさい。

⑵ C及びDは,本件国道の新設を阻止するために,どのような行政訴訟を提起することが考えられるか。⑴の検討も踏まえて論じなさい。

〔設問2〕

環境大臣は,環境影響評価法の下で,2015年以来,複数の石炭火力発電所の設置に関して意見表明をしました。その内容は,事業者の対応は国の地球温暖化対策の2030年度目標と整合しないため「現段階で是認できない。」とするものでした。このことを重要な契機として,2016年にエネルギー関連の法律の仕組みが,温暖化対策に資するように改正されました。この改正経緯には,環境影響評価法の2011年改正が相当程度影響したといわれます。環境影響評価法のどの点の改正か,同法の規定を挙げた上で,改正の趣旨と効果を述べなさい。

〔設問3〕

C,D及びFらは,生物多様性への影響や複数の汚染源による複合影響について適正な環境配慮を行うためには,現在の計画段階環境配慮書制度のみでは限界があり,環境基本法第19条を具体化するために新たな制度の導入が必要であると感じています。ここでいう現行制度の限界及び新たに導入すべき制度として,具体的にどのようなことが考えられるか,説明しなさい。

〔設問4〕

本件国道が設置された後,E地区における大気中のSPMの濃度は環境基準を超え,その後Fらは呼吸器系疾患に悩まされるようになりました。これについては,本件国道に起因するSPMとG社の石炭火力発電所から排出されてきたSPMその他の大気汚染物質との競合の可能性も指摘されています。Fらは,①誰に対して,いかなる規定に基づいて損害賠償請求ができるか。また,②請求する場合,いかなる点を主張立証しなければならないか,説明しなさい。

なお,本件国道の道路管理者は,A県とします。また,国に対する請求は考慮しなくてよいものとします。

1.2 問題の論点

本問では、以下の主要な論点が含まれています:

  1. 環境影響評価法に基づく環境影響評価手続の瑕疵

  2. 環境影響評価法の横断条項(第33条)の適用

  3. 環境訴訟における原告適格と訴訟要件

  4. 計画段階配慮書制度の意義と効果

  5. 戦略的環境アセスメント(SEA)の必要性

  6. 複合的環境被害における因果関係と損害賠償請求

これらの論点は、環境法の重要な課題を網羅しており、法的思考力と実践的な問題解決能力が問われています。特に、環境影響評価の手続的側面と実体的側面の関連性、環境訴訟の多様な形態、最新の法改正の影響、そして複合的な環境問題に対する法的アプローチについて、深い理解が求められています。

2 環境影響評価法の基礎知識:法の目的と手続の概要

この章では、環境影響評価法の基本的な枠組みと重要概念について解説します。環境影響評価(環境アセスメント)は、開発事業の実施に当たり、それが環境に及ぼす影響について事前に調査・予測・評価を行い、その結果を公表して国民、地方公共団体などから意見を聴き、それらを踏まえて環境の保全の観点からより良い事業計画を作り上げていこうという制度です。

2.1 環境影響評価法の目的と意義

環境影響評価法は、規模が大きく環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業について環境影響評価が適切かつ円滑に行われるための手続等を定め、その事業に係る環境の保全について適正な配慮がなされることを確保し、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に資することを目的としています(環境影響評価法第1条)。

重要ポイント

  1. 事業の実施前に環境への影響を予測・評価

  2. 住民等の意見を聴取し、事業計画に反映

  3. 環境保全措置の検討と実施

関連法律、条約の解説

  • 環境基本法:環境影響評価の推進を規定(第20条)

  • 生物多様性基本法:生物の多様性に配慮した環境影響評価の推進を規定(第25条)

実践テクニック

環境影響評価法の目的を理解する際は、以下のフローチャートを参考にしてください。

```mermaid
graph TD
    A[大規模開発事業] --> B[環境影響の予測・評価]
    B --> C[住民等の意見聴取]
    C --> D[事業計画への反映]
    D --> E[環境保全措置の実施]
    E --> F[持続可能な開発の実現]
```

よくある間違い

  • 環境影響評価を単なる手続的要件と捉えること

  • 事業の実施を前提としたものだと誤解すること

2.2 環境影響評価の手続フロー

環境影響評価法に基づく手続は、主に以下の段階で構成されています。

  1. 計画段階環境配慮書

  2. 方法書

  3. 準備書

  4. 評価書

  5. 報告書

重要ポイント

  • 各段階で住民等の意見聴取が行われる

  • 環境大臣意見等を踏まえた検討が必要

  • 評価書確定後も事後調査と報告が求められる

関連法律、条約の解説

環境影響評価法第3条の2〜第38条に、各段階の手続が詳細に規定されています。

実践テクニック

環境影響評価の手続フローを理解する際は、以下の表を参考にしてください。

$$
\small{
\begin{array}{|c|l|c|}
\hline
\text{段階} & \text{主な内容} & \text{根拠条文} \\
\hline
\text{配慮書} & \text{計画段階での複数案の比較検討} & \text{第3条の2〜第3条の10} \\
\hline
\text{方法書} & \text{調査・予測・評価の手法の選定} & \text{第5条〜第10条} \\
\hline
\text{準備書} & \text{調査・予測・評価の結果の公表} & \text{第14条〜第20条} \\
\hline
\text{評価書} & \text{準備書への意見を踏まえた最終的な評価} & \text{第21条〜第27条} \\
\hline
\text{報告書} & \text{事後調査の結果の公表} & \text{第38条の2〜第38条の6} \\
\hline
\end{array}
}
$$

よくある間違い

  • 各段階の順序を誤解すること

  • 住民意見の聴取機会を見落とすこと

2.3 環境影響評価法の最新動向

環境影響評価法は、社会情勢の変化や環境問題の多様化に対応するため、適宜改正が行われています。近年の主な改正点は以下の通りです。

  1. 2011年改正:計画段階配慮書手続の導入、報告書手続の創設

  2. 2014年改正:風力発電所の第一種事業への追加

  3. 2020年改正:太陽電池発電所の第一種事業への追加(2020年4月施行)

重要ポイント

  • 再生可能エネルギー事業の増加に対応

  • より早期段階からの環境配慮の実現

  • 事後調査の重要性の認識

関連法律、条約の解説

  • 電気事業法:発電所に係る環境影響評価の特例を規定

  • パリ協定:温室効果ガス排出削減目標の達成に向けた取り組みの一環として環境影響評価の重要性が増大

実践テクニック

環境影響評価法の改正の流れを理解する際は、以下のフローチャートを参考にしてください。

```mermaid
graph TD
    A[社会情勢の変化] --> B[環境問題の多様化]
    B --> C[法改正の必要性]
    C --> D[計画段階配慮書制度の導入]
    C --> E[対象事業の拡大]
    C --> F[事後調査の強化]
    D --> G[より早期からの環境配慮]
    E --> H[再エネ事業への対応]
    F --> I[環境保全措置の実効性確保]
```

よくある間違い

  • 最新の法改正内容を把握していないこと

  • 改正の背景や意義を理解せずに条文のみを暗記すること

2.4 理解度チェック

Q1: 環境影響評価法の主な目的を3つ挙げてください。

A1:

  1. 大規模開発事業の環境影響を事前に調査・予測・評価すること

  2. 事業計画に環境保全の観点から適正な配慮を組み込むこと

  3. 国民の健康で文化的な生活の確保に資すること

Q2: 環境影響評価の手続において、「準備書」段階の主な目的と、その前後の段階の名称を説明してください。

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