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詩『embrace』

凋む風船に息を吹き込んで膨らますように
海藻に金魚が産み落とした卵を見守るように、
深夜の即席麺に静かに熱湯を注ぐように
寝癖に気付かない人を見て黙って微笑むように。

極彩色の蠟燭を誕生日ケーキに並べるように
月面探査記が撮影した写真を壁にピンで貼るように、
役目を終えた鍵盤楽器の蓋を静かに閉じるように
残し物だらけ弁当箱を黙って片付けるように。

私達は互いに抱擁する
邂逅のときも惜別のときも。

太陽に温められた洗濯物を小さく畳むように
軒先に芽吹いた氷柱の体細胞分裂を終日ひねもす見守るように、
深夜の厨房で鍋で苺をことこと煮詰めるように
詩の最後の行は贈り物にリボンを結ぶように。

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