獄窓から見上げる空は??

鉄格子の小さな窓から

息子が逮捕されてこの家に帰れなくなり、我が家の日常が少し変わってから数カ月が過ぎた。私たち親の毎日はそれなりに忙しく過ぎていく。

犯罪を犯したからとは言え、裁判の結果、息子の身に起こった獄中の生活というものは、親にとって想像の域を出ない。

朝の起床から夜の早い就寝までの間、規則ずくめの生活はそれなりに忙しくプログラミングされているらしいから、その規則ずくめの拘束感が受刑者に絶望感を与えるのだろうか。

それとも、一日のところどころにある隙間の休息時間にこそわが身に起きた不幸に絶望を感じる一瞬があるからそれを恐怖しているのか? どちらだろうか。

時々、カミさん宛ての手紙が届き、小説やコミック本の差し入れを要求する文面が甚だしい。テレビや動画視聴などビジュアルなものがない世界。せめて小説やコミックなど、それがないと心が紛れないのか、どんな心境なのだろうか。だけどそれについてはあまり書かれていない。


この長すぎる酷暑の夏は、どうだったのだろうか? やがてやってくる真冬の寒の強い夜には眠れるのだろうか? 日本の監獄は、まだまだ近代化されていない、古いスタイルなのが恨めしい。

獄中の部屋には小さな窓しかないことだろう。そこから見上げる狭い空はどのように心に映るのだろうか? 晴れ渡る青空も、湿った曇り空も心に何かを語り掛けてくるものだろうか?

そこでは、1本のボールペンさえも自由に触れないという。雨が強く降っても傘の存在はないという。凶器になりかねないとのことだからだそうだ。医者であるおおたわ史絵さんの書かれた「プリズン・ドクター」という本を読んでみた。

すると、シャバでは想像のつかないような獄中でのリアルな受刑者の生活がよく伝わってきた。程よくスピード感のある良質な文体である。息子の獄中の生活が手触り感のある現実的なイメージとして立ち上がってきた。

判決は等に出ているし、刑が確定しているので拘置所から刑務所への移送も近々のうちであることだろう。ただ、それには事前の通告などはなく、ある日突然やってくるものらしい。

私たち親は、移送された先から送られてきた手紙によって、はじめてその事実や聞いたこともない刑務所の名前・所在地等を知ることになるのだ。きっとこれまでよりはさらに遠くなることだろう。

その現実をどう受け入れて、どう折り合いをつけるのか? いろいろな心理面での準備と現実的対応が必要になる。

それから数日が過ぎて


先日送った拘置所への少額を封入した現金封筒が、「宛名人の不在」という名目で戻って来た。そうだったのか。いよいよ、どこかへ移送された後だったらしい。はたしてどこへ移送されたのだろうか?

2024年10月


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