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内容が偏っている!?中学生用副読本「アイヌ民族:歴史と現在」

まとめ
この記事は、公益財団法人アイヌ民族文化財団が発行している中学生用のアイヌ副読本の記述の中に、偏った内容の記述があるので、副読本を使用する学校教育関係者には、気をつけてもらいたいという内容になります。

公益財団法人アイヌ民俗文化財団(以下「財団」という。)は、アイヌの伝統等に関する普及啓発事業として、①「アイヌ民族〜歴史と文化」という一般向けの冊子を令和6年8月に発行しています。
さらに、財団は②「アイヌ民族:歴史と現在」という中学生向けの副読本を令和6年9月に発行しています。
実は、この2冊で、コシャマインの戦いの原因の記述が異なるのです。

まず、①では、


「1456(康正2)年、アイヌの若者が注文した小刀をめぐって志苔(現在の函館)の鍛 冶屋と口論となり、鍛冶屋がその小刀で若 者を刺し殺したことをきっかけに、翌年には コシャマイン親子が立ち上がりました。」

アイヌ民族〜歴史と文化(令和6年8月発行、公益財団法人アイヌ民俗文化財団、P4)


と記述しています。


しかし、②では、


「アムール川の下流域で明の勢力が小 さくなっていった15世紀の半ばに、 北海道の南部で大きな動乱が起きた。それは、1457年に起きたコ シャマインの戦いである。この戦いのきっかけは、現在の函館の 付近で、アイヌの少年が注文したマキリ(小 刀  )のことで和人の 鍛冶屋 と言い争いになり、鍛冶屋がアイヌの少年を殺してしまっ たことである。」

アイヌ民族:歴史と現在(令和6年9月発行・公益財団法人アイヌ民族文化財団・P14)


と記述しています。
つまり、同じ財団が発行しているのに、大人向けには「アイヌの若者」が殺された記述して、中学生向けには「アイヌの少年」が殺されたと記述しているわけです。

それでは、元となったと思われる文献では、どうなっているのでしょうか。
松前藩の記録に、「新羅之記録」(しんらのきろく・1643年)があります。それによると
「乙孩来て鍛冶に靡刀を打たしめし処、」とあります。
それでは、乙孩(おつかい)とは、誰かということになりますが、
18世紀の松前藩の記録「福山秘府」では、
「按所謂乙孩者即言少年夷也」とあります。
これを見ると、やっぱり「少年」だと思う人もいるかと思います。

しかし、江戸時代には、「少年」を「しょうねん」と呼ぶのではなく、「わかい年」と読んだのです。
例えば、江戸時代の儒学者「佐藤一斎」(1772〜1859)は、「言志四録」で、こんな格言を残しています。

「少(わか)くして学べば壮にして為すあり。壮にして学べば老いて衰へず。老いて学べば死して朽ちず。」

佐藤一斎・言志四録

それでは、他の文献ではどうでしょうか。
アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」報告書(平成21年7月、内閣官房長官の要請により今後のアイヌ政策についてまとめられた報告書)
→「アイヌの青年」P4
「縄文人の日本史」(澤田建一・2019年・柏艪舎)P133
→「アイヌの男性」
「アイヌ秘史」(桜井清彦・昭和42年・角川新書)P109
→「一人のアイヌ」
となっています。

「アイヌの少年」とするのと、「アイヌの青年」、「アイヌの男性」、「一人のアイヌ」とするのとでは、受ける印象がだいぶ異なります。

ちなみに、靡刀(びとう)とは、細く美しい刀のことです。
高価な物は、毛皮何十枚もしたそうです。(三好文雄著「アイヌの歴史」)
そうなると、少年と訳すのには、無理があると思われます。
参照 アイヌ副読本「アイヌ民族:歴史と現在」を斬る・的場光昭・令和2年・展転社

財団は、大人向けの冊子には、「アイヌの青年」として、中学生向けには「アイヌの少年」として、意図的に記述を変えています。
その狙いが、何なのか、私にはわかりません。
大人向けの冊子に書かないことを、中学生向けに書く理由はなんでしょうか?
日本の子どもたちに、偏った教育をしてはなりません。

ちなみに、従軍慰安婦は、朝日新聞の誤報でした。
また、NHKの稲葉延雄会長は、令和7年2月12日の記者会見での端島炭坑(通称・軍艦島)を扱ったNHK番組「緑なき島」が韓国で戦時徴用に関する虚偽情報が拡散する契機となったとされる問題で、元島民に面会して謝罪する考えを表明しました。

私には、この副読本の「少年」とした記述も、いずれ外国に事実として流れるのではないかと危惧しています。
自由民主党の参議院議員である「青山繁晴」さんのお言葉ではありませんが、
日本の国益と尊厳は、守らなければなりません。

なお、副読本の使用については、平成27年に文部科学省から通知が出ているので、一部を抜粋して紹介します。
それによると、「多様な見方や考え方のできる事柄,未確定な事柄を取り上げる場合には,特定の事柄を強調し過ぎたり,一面的な見解を十分な配慮なく取り上げたりするなど,特定の見方や考え方に偏った取扱いとならないこと。」となっています。
教科書と異なり、副読本は、文部科学省による検定を受けません。
それだけに、教育関係者には、適切な副読本を選定し、子どもたちに特定の見方や偏った教育をしないようお願いしたいと思います。

1.補助教材の使用について
(1)学校においては,文部科学大臣の検定を経た教科用図書又は文部科学省が著作の名義を有する教科用図書を使用しなければならないが,教科用図書以外の図書その他の教材(補助教材)で,有益適切なものは,これを使用することができます(学校教育法第34条第2項,第49条,第62条,第70条,第82条)。
 なお,補助教材には,一般に,市販,自作等を問わず,例えば,副読本,解説書,資料集,学習帳,問題集等のほか,プリント類,視聴覚教材,掛図,新聞等も含まれます。
(2)各学校においては,指導の効果を高めるため,地域や学校及び児童生徒の実態等に応じ,校長の責任の下,教育的見地からみて有益適切な補助教材を有効に活用しなくてはなりません。
2.補助教材の内容及び取扱いに関する留意事項について
(1)学校における補助教材の使用の検討に当たっては,その内容及び取扱いに関し,特に以下の点に十分留意することになっています。
①教育基本法,学校教育法,学習指導要領等の趣旨に従っていること。
②その使用される学年の児童生徒の心身の発達の段階に即していること。
多様な見方や考え方のできる事柄,未確定な事柄を取り上げる場合には,特定の事柄を強調し過ぎたり,一面的な見解を十分な配慮なく取り上げたりするなど,特定の見方や考え方に偏った取扱いとならないこと
(3)教育委員会は,所管の学校における補助教材の使用について,あらかじめ,教育委員会に届け出させ,又は教育委員会の承認を受けさせることとする定を設けるものとされており(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第33条第2項),この規定を適確に履行するとともに,必要に応じて補助教材の内容を確認するなど,各学校において補助教材が不適切に使用されないよう管理を行うこと。
 ただし,上記の地方教育行政の組織及び運営に関する法律第33条第2項の趣旨は,補助教材の使用を全て事前の届出や承認にかからしめようとするものではなく,教育委員会において関与すべきものと判断したものについて,適切な措置をとるべきことを示したものであり,各学校における有益適切な補助教材の効果的使用を抑制することとならないよう,留意すること。
 なお,教育委員会が届出,承認にかからしめていない補助教材についても,所管の学校において不適切に使用されている事実を確認した場合には,当該教育委員会は適切な措置をとること。

平成27年3月4日付け文科初1257号文部科学省初等中等教育局長通知「学校における補助教材の適正な取扱いについて」(一部抜粋)

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