『鋼鉄都市』ロボットバディものの理想(読書感想)
アイザック・アシモフ、初のロボット長編「鋼鉄都市」読み終えました。
アシモフがあとに書くロボット長編「はだかの太陽」「夜明けのロボット」「ロボットと帝国」を先に読むという歪な順番になってしまいました。
というのも、ここ一年くらい図書館かよってアシモフ作品を読みあさっていましたが、この「鋼鉄都市」がなかなか手に入らなかったんです。こいつを見つけるのにとなり町へとなり町へと転々とする日々でした。うそです。
こちらの本、翻訳がちょっと読みにくくて入ってくのに時間がかかりました。改訂版とかあるんだったらそっちがおすすめ。
アシモフのロボット長編の特徴は、SFとミステリーが高水準でまとまっていること、らしいです。私は偏った読書しかしてきていないので、どういうのを高水準とするのかはわからん。
だけどアシモフでは「はだかの太陽」とか「宇宙気流」が好みでした。読んだことがある人なら何となく好みの方向がわかっていただけるのではないでしょうか?
SF世界による社会常識?を背景としたミステリーといいますか、トリックといいますか。詳しく書くとネタバレになってしまうのがミステリーをおすすめする難しさです。
こちらの「鋼鉄都市」の舞台はタイトルそのまま鋼鉄都市。人々が鋼鉄に覆われた地下に住むようになった地球です。
それぞれのシティは高速自動走路なるものでつながっています。この高速自動走路、「夜明けのロボット」とかでも出てきたと思いますがうまく想像できない。勝手に空港にあるエスカレートしないエスカレーターを想像しています。(伝わってる?)
でこちらの鋼鉄都市なんですが人口が70億とか80億とかでパンク寸前。現在の現実の地球から見るとその程度で?となってしまいますが、そういうところは目をつぶるのがSFを読むコツです。
また鋼鉄都市よりも技術的に勝っている宇宙人の存在。宇宙人と言っても地球から宇宙への開拓者の子孫なので、おんなじ人間です。
ただ力関係として、「宇宙人>地球人」という図式があります。で、地球人は宇宙人に劣等感を持っていて、宇宙人の技術であるロボットは鋼鉄都市では嫌われているわけですね。
こういった特殊な舞台設定があることによって、特殊なミステリーが成り立つんですね。特殊な世界で生きる人間にはそれに伴った特殊な価値観があるわけでして、それによる「価値観トリック」がSFミステリーの本質なんじゃないかな。
私はアシモフ作品を読みすぎてしまった結果、アシモフの思考をトレースする特殊能力を手に入れてしまって、自慢ではありませんが今回のトリックは割と序盤で大まかには分かっちゃいました。自慢じゃないけど。自慢じゃないけど。
まあ、待ってください。今回のお題目はミステリーではなくロボットバディものです。こちらの作品、男の子が夢みるロボットとの友情が詰まってます。
主人公の相棒となるロボット・ダニール、ちゃんとバディものしてます! これ以降のロボット長編ではややもすると余り活躍していない印象があったダニールですが、彼は例えるならオアシスです。
主人公は事件解決の過程において四面楚歌の状況に追い込まれます。当初は地球人の普通としてロボットを嫌っていた主人公ですが、いろいろとぶつかりを経てダニールに心をゆるし、もちろんダニールのほうにも変化があります。
ダニールはロボットとして協力を惜しまず、ロボットとして常に受け入れてくれます。だから、主人公が追い込まれるほど、私の中で主人公の味方でいてくれるダニールの株が相対的に上がっていきます。
まさにオアシス。
ただもったいないのはこの「鋼鉄都市」によって、ダニールとのバディものとしてのロボット長編は終わってしまったということでしょう。
この作品によってダニールはオアシスに位置づけられてしまったので、続編の「はだかの太陽」以降ではただの便利キャラとしての役割しか与えられなくなってしまいます。
だからこの「鋼鉄都市」はロボットバディものとして希少なんです。コンパクトに一冊に詰まってるってのも私の夢をくすぐる理由です。
ぜひ読んで。