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vol.5愛情で人をつなぐ社内コミュニティ運営:学びを支える人間関係のデザイン
この連載では、私が社内学習コミュニティを立ち上げ、試行錯誤しながら学んできた経験をシェアします。さまざまな壁にぶつかりながら得た学びや、その過程で感じたことを振り返りつつお伝えしていきます。
これらの経験が、私にとっていかに大切なものであったか、そしてそれらが今、私の考え方や行動にどのように影響を与えているのかを知ってもらえたら嬉しいです。
あなたにとっても役立つヒントや気づきを得るきっかけとなることを願って。
前回のおはなし
新たな環境での期待と不安
DX推進プロジェクトのサービススタートを見守った後、私は人事部関連業務を専門とする部門へ異動になり、座席も人事部に移されました。
今まではIT関連の技術者に囲まれるような環境にばかりいましたが、人事関連事務を専門とする事務職の人々に囲まれる職場に身を置くことになりました。
とはいえ、私に与えられていたのはやはりシステム関連の業務です。
周囲からは「何をやっているのかは知らないけれど、システムの人が来たらしいよ。関わり合いになることはあまりないと思うけど。」そう認識されていることは明らかでした。
信頼を得るための小さなアプローチ
私が異動前に導入に携わった、Power PlatForm基盤の自動化ツールは絶対にこの事務職中心の現場にマッチしているに違いない。私の知見はこの現場でこそ輝くはず、と強く感じていました。
一方、それが現場で歓迎される保証はないということも知っていました。今まで様々なシステムを提供する側にいましたが、一定数「ITは苦手(嫌い)」「システムはシステム屋さんに任せておけばいい」という価値観を持つ人が少なくないという事を知りすぎてしまっていました。
それに、私は技術面は詳しいけれど、それが実務に本当に求められていることなのかどうかについては、まるで自信がありませんでした。だって、事務業務を仕事としてやった経験が全くないのですから。
さて、どこからどう踏み込んでいったらいいものか。
でも、初手は絶対に大事。ここで間違ってしまったら、取り返すのにかなり時間を要してしまうだろう。これだけははっきりと感じていました。
そこで、いくつか立てた作戦の中から「あせらずゆっくりコース」を選択することにしました。
最初から業務変革を提案するのではなく、私を「頼りになる存在」として認識してもらのがまず大事。私を人として好きになっていただきましょう。(今思い返すと、このアプローチは私の強み・最上志向、共感、ポジティブを完璧に発揮できる方法を選択していたなあと思います。)
例えば、Excelの困りごとやPCトラブル(Wi-Fiが、プリンタが、WEB会議の音声やカメラがつながらない〜!といった些細なことでも耳に入ればなんでも)にすぐ駆けつけ、日常的なITサポートを通じて信頼を積み重ね続けました。
特に気をつけたポイントは恩着せがましくしないことです。
「私、こういうこと得意だし大好きなの!協力させてくれてありがとう!仕事サボる口実もらっちゃった😄へへ」
何でも頼ってくれ、というメッセージを全身で体現し、とにかく相手に負い目を感じさせないように気を配りました。
芽生え
日々の行動の積み重ねが功を奏し、周囲からの見方が変わりつつあることを感じました。
当初は「自分とは関係ない仕事をしている、遠いところから引っ越してきたお隣さん」として見られていましたが、「お醤油やお砂糖を貸してもらえて、愚痴や軽口を叩き合える近所の奥さん」くらいの親しみを感じてもらえるようになっていた感触がありました。
初めての挑戦と成功
プレイングマネージャーAさんへの提案
異動から半年ほど経過し、信頼関係が芽生えたと感じた頃、私は課のプレイングマネージャーAさんに提案を持ち掛けました。
「些細な郵便当番やお昼の電話当番など、輪番で回している作業、ほぼ毎日Aさんが「忘れずにね!」って確認の声かけしてくださっているじゃないですか。この声かけをメンバー全員が見ているグループチャットに自動リマインドするツールを作りたいんですけど、どう思います?
担当者自身が忘れてしまったり急遽お休みしたりしても、リマインドが全員に当日共有されているので、誰かによるカバーも自動的に可能になると思うんです。どうでしょう?」
Aさんからの反応は好意的でした。
「是非やってほしい!私は業務自動化には大賛成で、当部門の業務もなんとか変革できないものかと常々思っていたんです。」
課内で初のPowerAutomateツール作成
Aさんの許可を得た私は初めて課内向けの自動化ツールを開発しました。その間15分。
平日の決まった時間に「換気の時間です。窓を開けてください!」とリマインドするシンプルなものでした。
運用開始後も改善を重ね、10分後に「窓を閉めてください!」の通知を追加、また、窓を閉めてのメッセージにリアクションがなかった場合は「窓を閉め忘れていませんか?」追いリマインドするも追加しました。最終的には会社の休みの日はメッセージを送らないようにする制御も加えました。
そんな試行錯誤の様子をつまびらかにした結果、課内からは様々な反応が返ってきました。
「業務自動化って聞いてもどういうことなのかさっぱりわからなかったけど、こういうちょっとしたことにも適用できるんですね。」
「最初は定刻にメッセージを送るだけだったのに、徐々に改良していく様子が興味深かった。」
「他にはどんなことができるんだろうと思いました。」
課内での評判は上々。自動化への関心が高まり始めました。
Aさんからは「業務自動化って必要だとは思いつつ、どこからどう手をつければいいかわからないし、そもそもの頑張り方が全くわからなかったのだけれど、こんなこともできるんですね。
実業務への繋げ方や応用の方法は相変わらずわからないけど、希望の光をもらえた気がしました。
それに………………。
忘れずにねって声かけすることを、実は負担に感じていたということに気づきました。わかってること注意されるのって、嫌じゃない。
そういう相手の見えない心の反応も飲み込んで、それでも必要だから、と、自分を奮わせて注意喚起をしていたんですよね。」
こんなようなことをお話しされていました。
兎にも角にも、私の初手からの第一歩は大成功に終わったのでした。
次のおはなし
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