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座談会記事で読者を「迷子」にしない仕掛けとは? キリンビールnote記事に学ぶ

noteプロデューサー徳力基彦さんの法人note勉強会で、優良事例として紹介されていたキリンビールnoteにある座談会記事がとても参考になるので紹介します。


社員による座談会:読者は誰も知らないことを前提に

ライターとして企業のオウンドメディア記事を取材執筆していますが、座談会記事の取材執筆をオファーされることがあります。ただ、この座談会というのは意外とやっかいです。

有名人の座談会ならまだしも、企業記事の場合、参加する話し手は一般社員の方の場合が多くあり、読者が複数の話し手を区別して、会話として理解・イメージしてもらえるように記事を展開するのは結構難しいのです。単に発言を整理して原稿を構成するだけだと、「この発言しているの誰だっけ?」と読者は迷子になってしまいます

雑誌や新聞であれば、複数の話し手のポートレイト写真を紙面に大きくレイアウトし、肩書きやプロフィールを印象的にデザインすることで、読者は記事を読む前に、それぞれの話し手を視覚的にインプットできます。しかし、ネット記事の場合、上から下へと記事が展開していき、レイアウトにも制限があるので、話し手全員の情報を一度にインプットするのはなかなか難しいのです。

座談会記事で編集やライターが強く意識すべきは、「読者は座談会の話し手を誰も知らない」ということ。記事に携わるスタッフは登場する話し手について前情報があるのでスラスラ読めてしまいます。しかし、その意識で作られた座談会記事だと読者は置き去りされてしてしまうおそれがある、と私は思います。

「発言→顔写真→プロフィール」の3点セットでひとりずつ順々に紹介

そこで、この記事です。

キリンビールでは、「キリン中央研究所」の拠点を神奈川県藤沢市にある「湘南ヘルスイノベーションパーク」(通称:湘南アイパーク)に置いています。本記事は、湘南アイパークの代表とキリン中央研究所の3名(所長および若手研究者2名)による4人の座談会です。

話の展開は「湘南アイパーク誕生のきっかけ」から始まり、まず4名が語り合っている写真が表示されています。若手2人(左)とシニア2人(右)がいることを視覚的に理解できます。

キリンビールnote「人生100年時代をともに歩める商品づくりを目指して。オープンイノベーションの拠点「湘南アイパーク」でキリンが描く研究の未来」より


そのうえで、湘南アイパーク代表の藤本さんの話が展開されていきます。4つほどの設問が続きますが回答は藤本代表のみ。他の方の言葉は一切入りません。

藤本代表にたっぷりと語ってもらったうえで、おひとりでのポートレイト写真とプロフィール情報が表示されます。これで読者はまず、藤本代表を認識します。

キリンビールnote「人生100年時代をともに歩める商品づくりを目指して。オープンイノベーションの拠点「湘南アイパーク」でキリンが描く研究の未来」より


しっかりと藤本代表の考えとパーソナリティを理解すると、続いてキリン中央研究所の矢島所長が登場します。冒頭の写真は藤本代表との2ショット。藤本代表以外の2人目の話し手が登場したことが自然と理解できます。

キリンビールnote「人生100年時代をともに歩める商品づくりを目指して。オープンイノベーションの拠点「湘南アイパーク」でキリンが描く研究の未来」より


矢島所長の発言に続く段落で、所長の写真・プロフィールが掲載されています。これで2人目が認識できました。

続く発言は藤本代表。矢島所長との掛け合いへと続きます。読者はすでに藤本代表を認識できているので、矢島所長と藤本代表の掛け合いを混乱せずに読み進められるのです。

場面転換は大胆に。見出しと写真で一気に切り替える

ここで次の展開です。
「若手研究者が実感。湘南アイパークに身を置くことで得られたもの」という見出しで区切って、若手研究者の2ショット写真へと続きます。

キリンビールnote「人生100年時代をともに歩める商品づくりを目指して。オープンイノベーションの拠点「湘南アイパーク」でキリンが描く研究の未来」より


見出しと写真によって、読者は一旦、それまでの藤本代表と矢島社長の流れから頭を切り替えられます

2ショット写真で性別も服装も異なるので2人のコントラストを印象づけた上で、男性研究者、女性研究者の順番で、発言→写真→プロフィールを掲載。これで4名全員が認識されました。

つまり、この記事は段階的に人物を登場させ、発言とポートレイト写真、プロフィールを連動させていくことで、読者にしっかりと4名のパーソナリティを認識させているのです。

写真のキャプションや名前の後の(役職表示)も有効

ここからが真の意味での座談会です。若手2名の発言を中心に展開しつつも、藤本代表と矢島所長の言葉が差し込まれていきます。

読者はすでに名前と内容で誰の発言かを識別できますが、親切なことに、発言の前の苗字の後には、それぞれ(代表)(所長)(研究員)(研究員)と役職を付記してあります。

私たちは、初対面の方を名前よりも役職で覚えることが多くあります。このように(役職)を表記すれば名前を覚えていなくても、「どの立場の方の発言か」を理解した上で読めるのです。

キリンビールnote「人生100年時代をともに歩める商品づくりを目指して。オープンイノベーションの拠点「湘南アイパーク」でキリンが描く研究の未来」より


さらに、座談会中の人物写真には必ず所属と役職、名前のキャプションが付いています。こうすれば、座談会の雰囲気だけでなく、読者の中で認識された一人ひとりのキャラクターがより明確化していきます。

キリンビールnote「人生100年時代をともに歩める商品づくりを目指して。オープンイノベーションの拠点「湘南アイパーク」でキリンが描く研究の未来」より


こうした展開と細かい配慮によって、読者はきちんと話し手を認識しながら、世代や役割の異なる4名がざっくばらんに意見を交わす座談会としての読後感を得られるのです。

座談会記事は成功すれば、複数の話し手の多様な考えや掛け合いから生まれる化学反応を表現できます。そのためには、読者が自然と複数の話し手を認識していける仕掛けが必要です。ぜひ、企業発信の座談会の秀逸な事例であるキリンビールの本記事を参考に、みなさんの座談会記事にも仕掛けを加えてみてください。


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