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インタビューで大切にしている20のこと 3/4 【現場編:最中にできること】
聴いく書くことで生計を立ててきたライターが体で覚えたインタビュー術の第3回です。
今回は、インタビューそのもので大切にしていることについてお伝えしていきます。
11. 全体の仕切りと、ライターへのバトンタッチ
取材対象者が到着し、インタビューの準備が整うと、まずは企画者が趣旨説明を行います。
取材対象者へのご挨拶、企画趣旨の説明、取材の流れや時間の確認、取材スタッフの紹介、インタビュー中の撮影の有無など。
とてもわずかな時間ですが、大切なプロセスです。その場にいる方々がインタビューの目的と流れを共有し、場の空気感がインタビューに向けて整います。
そのプロセスを経て、企画者はライターへ仕切りをバトンタッチをします。
12. 聴きたいワクワクが相手に安心感を与える
インタビューの冒頭、企画者の前振りを受けたうえで、ライターから見た取材の意義を簡潔に説明します。私はできるだけ「お会いしてお話を聞くのを楽しみにしていました」と伝えるようにしてます。
しっかりと取材準備を重ねていると、自然に取材相手に会ってお話を聴きたいという気持ちが高まっているので、正直にその気持ちをお伝えするのです。
その言葉は、相手への安心感にもつながります。
とりわけ、企業の社員や学生への取材の場合、インタビューを受けることが初めてという方もいます。多くの方は緊張していますし、「自分の話はインタビューに値するものか」という不安を抱えていることもあります。
取材者のワクワクした気持ちを伝える。その熱量が、取材を受ける方の不安を払拭するのに役立つと私は考えています。
13. 理由とセットで質問を投げかける
まずは質問案どおりに聴いていきますが、心がけるのは、「なぜ、その質問をするのか」という自分なりの理由を簡潔に説明することです。
事前に質問事項を送ってある場合や事前アンケートをやり取りしている場合、取材相手は質問を想定してインタビューに臨んでいます。もし、その質問事項どおりに聞いていってしまったら、対面でお話を聴く意味がありません。かといって、質問の内容を大きく変えると相手は驚し、こちらのインタビューの組み立てそのものが崩れてしまいます。
ですので、質問事項とは同じだけれど、質問の意図を加えて、自分の言葉で質問を投げかけるのです。
多くの取材対象者は、その言葉を受け取ると事前に用意した回答よりも膨らみのある内容を返してくれるように思います。
インタビューは "Interview" です。View(意見、見解)がInter(作用)するものであり、単に聴くだけの"hearing"とは異なるのです。
ただ、気を付けるべきは取材者が話し過ぎないことです。インタビューの場は聴き手の論を披露する場ではありません。あくまで簡潔に、質問の理由を伝えましょう。
14. 相手の話を手短に反復する
対面でのインタビューの場合、書面での回答と異なり、前提となる状況や背景の情報が省略される場合がほとんどです。
特に、その人にとっての「当たり前」が周りにとっても「当たり前」であるという意識の強い方の場合は、前後の丁寧な説明が省略されることが多くあります。
ただ、周到に準備をしておけば、取材者の頭にある情報と結びついて、「ああ、あの話をしているんだな」と補足しながら相手の話を理解することができます。ここで、準備段階で幅広く関心を広げていたことが役立つのです。
それでも、自分の理解が正しいかが不安な場合は「おっしゃっているのは、こういうことですよね」と確認します。
自分の言葉で確認してみると、合っていればさらに深い話に進展するし、間違っていれば軌道修正ができます。
話の内容を適切に確認していくことで、正しい理解を共有しながらインタビューが進んでいくのです。
15. 深く聴いて、相手の言葉の世界へ入る
会話はリズムです。「はい」「うん」「なるほど」など、合いの手を入れながら話を聞くものですが、私の場合は、黙って聴き、うなずいている場合がほとんどです。
相手の目を見て、集中して、黙って聴く。
頭をフル回転しながら相手の言葉の真意を理解する。
それは水の中に潜っていくような感覚に近いかもしれません。
次第に周りにどれだけ多くのギャラリーがいても気にならなくなっていきます。
その感覚で、相手の言葉の世界に入っていければ、安心して話してもらえます。
聴き手にとってもインタビューというものが単なる行為ではなく、かけがえのない体験になっていくのです。
これはあくまで私の感覚ですが、きっと聴き手それぞれに話し手と一体となる感覚が存在すると私は考えています。
次回は、最終回【現場編:佳境に入ってできること】です。
もっと簡単にインタビューで大切なことを知りたい方はこちらをどうぞ。