見出し画像

映画「夜明けのすべて」をNetflixで観た。

Netflixで、昨年公開された瀬尾まいこの小説を三宅唱監督が映画化した「夜明けのすべて」を観る。丹念な描写で登場人物の心を変化を伝える、映画らしい映画だ。

普段は人一倍気遣いをする穏やかな性格なのに、PMS(月経前症候群)で、月に一度周囲に攻撃的な態度をとってしまい、新卒で入った会社を辞めざるを得なくなった藤沢美紗(上白石萌音)。

5年後。美紗の勤める科学玩具・教材を製作する小さな会社・栗田科学に出向でやってきた山添(松村北斗)は、パニック障害の発作がでるようになって、大手企業に行けなくなった青年。

栗田科学の社長(光石研)らに見守られ、美沙と山添が助け合いながら、その生きづらさから目を背けずに、しだいに前を向いていく姿を描いていく。

まず気がつくのは、16ミリフィルムで撮影された画面の質感。ディスプレイでみても少し粗さが残る画面が、逆にストーリーの温度を適温に保ってくれているよう。

三宅唱監督も参加した脚本には、登場人物達の背景を説明するセリフやナレーションは一切なく、ほとんど全ての情報は、画面の中に込められている。

かといって語り口が饒舌なわけではなく、様々な映像なども映しながら、ゆったりとストーリーを進めていくのも極めて映画らしい作り。テレビドラマ的な、ちょっと人工甘味料のような話の展開や表現は一切ない。

「説明セリフ」の例外は、冒頭の美沙のモノローグと、ラストの山添のモノローグ。この対比構造的な始まりと終わりも見事だ。

この作品の空気感が今の時代に合っているのか、まずまずの興収(約5億円)を稼ぎ、先日発表になった2024年のキネマ旬報ベストテンの作品賞、主演男優賞(松村北斗)、監督賞(三宅唱)を獲得。確かに次第に心を開いて、上白石萌音との友情を築いていく松村北斗の演技は、とても良かった。

まだ40歳の三宅唱監督は札幌出身。北高→一橋大学社会学部卒で、なんか親しみが持てる(勝手にだけど^^;)。柄本佑&石橋静河主演の「きみの鳥はうたえる」(2017)がすごく良くて、それから注目しまくっているのだけど、前作の岸井ゆきのが聴覚障害のボクサーを演じる「ケイコ 目を澄ませて」(2022)でもキネ旬作品賞などを受賞。これも16ミリフィルムで撮った、静かに心に滲みる傑作だ(Netflix Amazon Primeで鑑賞可能)。

なのでこの「夜明けのすべて」もシアターキノで観ようを思っていたのだが、わたわたしているうちに終わってしまった。去年は濱口竜介監督の「悪は存在しない」も、そのパターンで見逃したんだよなー。なので、Netflixでこんなにも早く観れるのは、超ありがたい。

ともあれ、この「夜明けのすべて」、静かに没入すべき作品なので、Netflixで鑑賞する時には、2時間邪魔が入らないようしっかり準備するのがオススメだ(^^)。
<END>


いいなと思ったら応援しよう!