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「善」が「悪」を演じたことで伝えてきた、私達にとって大切なこと


良いことの反対側には、
悪いことが存在している。

プラス(陽)が発生しているその真裏では、必ずマイナス(陰)が発生している。

アインシュタインの相対性理論でも説かれていることですよね。

人間にも「本心」と「邪心」の2つが共存しています。

悪気があろうがなかろうが、
これが摂理だったりします。

この間の、アメリカが止まらないインフレを抑えるために

市場金利を引き上げていったことの影響で、

何もしなかった何も動かさなかったはずの日本に

なぜか極端な円安が訪れた。

こうやって、片方が何もしないでいても、見えないだけであって、

物事には必ず「二面」が同時に

相反しながら発生・存在します。


なので、私達人間にも
「善」と「悪」の両方が

一緒に共生しているということになるんですね。

それを見事に伝えきってくれたプロレスラーが、

38年間の選手人生に
幕を下ろそうとしています。

その名は、「武藤 敬司」

そして、「ザ・グレート・ムタ」


「史上最悪のプロレスラー」の最期


2023年1月22日、
横浜アリーナにて

プロレスラー「ザ・グレート・ムタ(愚零闘武多)」の
引退試合が行われました。

1989年に、悪役レスラーとして有名だった

「ザ・グレート・カブキ」の息子としての設定で、

武藤敬司選手が「善」なレスラーとして活躍する自分とはまるで別な

もう一人の「悪」のレスラーとしての自分を生み出し、

忍者をモチーフとした姿成で
アメリカのNWAやWCWからデビューしました。

本人が武藤敬司選手だとは思えないくらいのヒールぶりに

世の中のプロレスファンが驚き魅了され、

「今世紀最悪のヒール」とも称されていたくらいでした。

次々と反則行為を繰り返し、覆面レスラーのマスクを剝がして行っては、

凶器を使用しての場外乱闘や、ゴングが鳴り終わった後の試合終了後の続行などは

茶飯事なことでした。

こんな良くない「悪いこと」ばっかやっていた武藤敬司選手の

もう一人の自分であった(設定上は別人となっている)ザ・グレート・ムタは

ありえないくらいにカッコよくて、

まだまだ何も分かっていない当時のD.O少年は

そんな「悪」を
自身のヒーローとし、

すごく憧れていたのでした。


僕がやっていた「デスメタルのモデル」は、実は音楽からでは無かった


僕は、デスメタルバンドをやっていた頃にはよく

「それってKISS?」
「聖飢魔Ⅱと同じ?」
「X JAPANからの影響?」

などと、何をモデルにしてそのメイクをしているのかを散々訊かれて来ましたが、

これ、あまり話したことは無いんですが

実は、
「ザ・グレート・ムタ」からの影響だったんです。


僕が音楽を始めるまでの小学生時代は、プロレスが好きで、

TVで毎週放送されるプロレス番組をビデオに録画しては

毎日観ているような少年でした。

その中でも特に楽しみにしていた試合が、

ザ・グレート・ムタのマッチでした。

僕は当時、「獣神サンダー・ライガー」と「ザ・グレート・ムタ」が大好きで、

ムーンサルトプレスとシューティングスタープレスの違いを友達に語ったり、

口に水を含んでは、よく毒霧を吹く練習をしていました。

(当時の男子はみんなやっていたかも笑)

僕は小学生の頃は、音楽には特別、興味関心がなく、

どちらかといえば、ドラマやアニメやお笑いや格闘技などの、

「観るエンタメ」が好きで画面にかじりついているタイプでして、

そして憧れからそれらの真似をしては、自分でも学芸発表会にて

張り切って演劇をしてみせ
みんなを楽しませていました。

と思えば、僕はずっと音楽で自分を表現する道を選んでは歩み続け

そしてコーチとまで至りましたが、

最初は「内面のことよりも外見のこと」にむちゃ影響を受けてしまう

ヴィジュアル重視な内向性で生まれてきた人間だったのです。

だから、その後に出会う僕の音楽の表現の仕方が

VISUAL ROCKやDEATH METAL・BLACK METALとなって行ったのには、

ザ・グレート・ムタの「悪の世界」が本当のモデルだったからなのです。


ザ・グレート・ムタが34年間伝えてきていた「人間にとって大切なこと」


この日の最期の彼の引退試合では、対戦相手の「白使」こと

新崎人生選手との死闘を繰り広げ、

1996年に同じように死闘を繰り広げた2人の対戦時にもあった

白使の額から滴る流血をすくって卒塔婆に「死」という文字を書くという演出を、

なんと、27年前そのままを
引退試合にて再現していました。

そして、引退試合の時では
卒塔婆に書かれた漢字が
「完」でした。

ここまで圧巻な演出を、
最期の最期までやってみせることができたのは、

悪役だからできたこと。

彼は、魔人間より真人間だったから、演出という飾り付けで、

「現実人間から理想人間を生み出して」、僕達に夢を与えてくれたのです。


そして、本当の彼は「人や心」を大切にする

ちゃんとした人間だったから、

内容がどんな属性のものであろうとも、演出で人々を喜ばせて、

生きて行くことについて、
夢や希望を与え続けてきてくれたのです。


みんな、2人、自分がいる。

誰もが、2つ、心がある。

2つ目の自分が自身の鏡となって、

1つ目の自分を本物にして行く。

それを成し得られるのが、
「芸能」なのです。


芸能・芸術・演出・表現は
私達人間にとって

エッセンシャルなものだと思っています。

ザ・グレート・ムタは、武藤敬司さんは、

僕を作ってくれた張本人でした。


1月22日、ムタは魔界へと還って行きましたが、

2023年2月21日に東京ドームで行われる

武藤敬司さんの引退試合も

心から楽しみにしています。


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