夢を叶えた五人のサムライ成功小説【川端雄平編】4
この作品は過去に書き上げた長編成功自己啓発ギャグ小説です。
雄平をはじめみんなが声のする方向へ振り返る。
ヤクザまがいの話し口調とは似ても似つかぬ紳士でイケメン。
185センチはあろうかという長身には知性と風貌が滲み溢れていた。
雄平は恐る恐る声を振り絞った。
『今の怒鳴り声はあなたさまではないですよね?』
『目ん玉広げてよう見んかい!俺以外に誰もおらんだろ』
子供たちは唖然とし、由里は茫然自失になり、雄平だけが平然としていた。
『あの~、失礼じゃないですか。俺はモムタクに才能があるって言われたばかりなんですけど』
『そんなもん関係あるかい。へたくそなもんはへたくそなんや。三流も三流や、兄ちゃん』
『あなた、誰なんですか?』
そう問われると長身の男は一歩、身を乗り出して黒一色のスーツを脱いでさらに怒鳴った。
『俺か!俺が何者か知りたいか』
『あの~、静かに話すことは出来ないのですか?』
『そんなに俺、うるさい?』
『はい』
男は脱いだばかりのジャケットの裏ポケットから葉巻を取り出して、由里にチャッカマンを手渡して火を点けさせた。
男はフッと吐き、雄平を見つめた。
『私はサマンサ・柴田と申します。なかなか夢を叶えられない哀れな輩を成功に導く男です』
『じゃ、あんたは俺が哀れな男だというんだな』
柴田を薄ら笑いを浮かべて更に毒を吐いた。
『このままでは夢は夢に終わります』
雄平は先ほどまでの話し口調とはまったく違うサマ・・・柴田について、こいつは二重人格者なのか!とさえ思った。
『どうして初対面のあなたにそんなことが分かるんだよ』
『今の歌を聴いていたら、馬鹿でも分かりますよ』
『さっきも言ったが、俺はモムタクに才能があるって言われたんだよ』
雄平は意気揚々と声を荒げた。
そんな雄平にそっと言ってみた。
『だから、関係ないのさ』
『どうしてそう言いきれるんだよ』
まったくもって自身の力を把握出来ていない雄平を見て、柴田はやれやれといった面持ちで溜め息をついた。
『ほんと、お前は何も分かってないんだな』
その言葉を聞いて雄平はモムタクの言った言葉を思い出した。
確か・・・才能はあるとは言っていた。
しかし・・・まだまだとも話していた。
雄平は少し不安に刈られ、よく考えてみた。
この10年・・・何も・・・変わっていない。
突然、黙りこくった姿を見て由里が心配そうに言葉をかけた。
『雄平、大丈夫?』
由里の声が微かに耳に届く。
あぁと小さく言葉を返して、そっと頷いてみせた。
柴田を見て雄平は言う。
『サマ・・・柴田さん、俺の何がいけないんだ?俺には何が足らないんだ?』
柴田はニコッと笑ってみせた。