長編恋愛小説【東京days】2
この作品は過去に書き上げた長編恋愛小説です。
ある日、疲労で倒れた女性を店舗内で介抱していたスタッフに変わって、心配になり話し掛けたのが奈美との初対面だった。
僕はまだ奈美が大学生くらいに見えた。
本当に随分と若く見えたものだ。
奈美もまた僕に対して同様の思いを持っていたようで、実年齢より若く見えたそうだ。
この初対面が僕たちを思ってもいなかった方向へと運命が導いていくのだった。
それはあたかも湖のほとりに浮かぶ一隻のヨットが水の流れに同調して呼吸を合わせて揺られているみたいに。
その日をきっかけに奈美は僕のバイト先へと頻繁に訪れるようになった。
積極的な女性で少し強引な一面もあるんだなと素直に感じた。
思えば随分と恋というものを味わっていない。
悪くない気分だ。張り詰めていた僕の心が温かく満たされている瞬間だ。
店内の人たちを意識しながら、奈美との会話に夢中になった。
新宿御苑の街はオフィス街だ。
飲食店も諸外国含めた料理を取り扱い様々だ。
インド料理、中華料理、ベトナム料理、あらゆる国の人たちによる料理店も目につく繁華街でもある。
少し南に向かえばJRの新宿駅があり、歌舞伎町は夜ともなればアンダーグラウンドに変身を遂げる。
奈美は僕しか見えていないようだ。ツブ
つぶらな瞳で僕を見つめる視線は産まれたての仔犬のように純粋だ。
奈美が両手をレジのカウンセラーに置いた。
『私の力を発揮できる場所をください。私をスターダムにのしあげてください』
僕は突然の予期せぬ発言にも関わらず、少しも慌てることなく対応した。
会って二度目でいきなり、この台詞を聞けば、普通の思考ならば本来、突拍子を喰らうんじゃないだろうか・・・。
いきなりそんな台詞を口にした奈美も奈美だ。
やはり、僕たちは変わり者なんだろう。
このことについては、互いが互いに抱いている印象できっと生涯、消えることはない。
勿論、お互いが変わり者同士だと認識している。でも何故、僕たちが変わり者なのかという起因には辿り着けずにいるのもまた認識していた。
僕は仮にも小さなコンテストだが受賞し出版し、数冊の本を世に送り出した。
ライターとも名乗っている端くれだ。
奈美の問い掛けに正々堂々と立ち振舞い言葉を返した。
『じゃ、君に詩を書いてもらいます。心の想いを綴って下さい。テーマは三つです』