見出し画像

ようこそ、アントレ部へ(再編)第八話前編

「趣味バナってまた懐かしいネタを。」
「いいからいいから、それじゃっ、まずは祥二朗。あんたからね。」
「はいはい、とは言っても俺の趣味ったって、ゲームくらいしかないんだよな。」
「あっ、ゲーム。私も好きですよ。」

綾乃が顔を綻ばせて言った。祥二朗はそんな彼女の「私も好きですよ」という言葉に胸がドキリとした。

「えっ、本当ですか?ち、ちなみにどんなゲームが好きなんですか?」
「そうですね、基本的には妹の付き合いですることが多いのですが、その影響でFPSのシューティングゲームが好きですね。」
「へぇっ?FPS!?い、意外ですね。」

ほんわかと柔和な印象の綾乃がそういったゲームをしている姿が想像できず、祥二朗は目を丸くしてただただ驚いていた。

「それで坂東君はどういったゲームが好きなんですか?」
「ええと、そうですね。色々やりますが、一番は野球ゲームで、その中のとあるゲームの選手を育成するゲームをめちゃくちゃやってますね。」
「ああ、あれね。ホントあんたよくもまあ飽きもせず続けられるわね。」
「へぇ、そんなゲームもあるんですね。どうしてそのゲームが好きなんですか?」
「うーんそうですね、なんでだろう。今まで考えたことはなかったんですが、面白い点として、自分好みの理想のチームを作れるのがいいですね。勿論、やりこんでるので最強の選手ばかりを作って、圧倒的なチームも作れなくはないんですが、例えば走力とか守備とかに特化した選手や全体的に平凡だけど、ある特殊な場面で効果を発揮する選手とかそういった癖のある選手を作って、ぎりぎりで優勝するチーム、そういった自由性の高さが好きなんだと思います。」

祥二朗はこれまでにないくらい熱く、それでいて楽しそうに話していた。

「うーん、否定する気はないけど、あたしにはよく分からないわ。あたしだったら誰も寄せ付けない程の圧倒的な戦力を持つチームを作ること以外に興味を持てないわね。」

美夜が腕を組みながらポツリとそう答えた。その答えを聞いた二人は思わず、「ふふっ」と吹き出した。

「まあ姉貴ならそうだろうね。」
「ミヤさんらしいです。」

二人に笑われた美夜は、少し不服だったのか、頬を膨らませてそっぽを向いた。

「何よ二人とも。あたしを馬鹿にしたみたいに笑ってさ。」
「ごめんごめん、ただ姉貴らしいなと思っただけで他意はないよ。」
「す、すみません。私も如何にもミヤさんらしい答えに思わず笑ってしまいまして。」
「もう、二人ともあたしのことなんだと思ってるのよ。・・・まあいいわ。じゃあ次は、あやちゃん。あなたの番よ。」
「あっはい。わ、私の趣味についてですね。まあ、ミヤさんもご存知かと思いますが、私はお人形とかハンカチとかそういった小物を作るのが好きですね。なので高校に入ったら手芸部みたいなところに入ろうと思ったのですが・・・。」
「へぇ手芸ですか。凄いですね。ああでも確かうちの高校に手芸部って・・・。」
「ええ、何でも美術部がそういった創作系を一纏めにしたような部活だと友人に聞きましたが、私絵があまり上手ではない上にそれ程興味がなかったので、一年の時は文芸部にいたんですよ。私、手芸と同じくらい読書が好きだったので。ミヤさんとの出会いも本がきっかけだったんですよ。」
「ええ本!?っていうことは、姉貴と出会ったのはつい最近ということですか!?」
「なんでそうなるのよ!?」

祥二朗の言葉に、美夜がバンと机を叩いた。

「だってそうだろ?姉貴は部活で怪我してから手持ち無沙汰になったから読書を始めたんだろ?」
「あんたねぇ、ホントあたしのことなんだと思ってんのよ。まあ確かに、最近に本を読む機会がぐんと増えたけど、あたしだってそれまでに本を読む機会くらいあったわよ。」

祥二朗を睨みながら話す美夜に、綾乃は微笑みながら同意した。

「ふふ、そうですよ。私とミヤさんの関係は中学からなんです。出会ってもうすぐ五年にもなるんですよ。」
「ええ!?そんなにも前から!?」
「ええ、家にこそは行ってないけど、街へ二人で遊びに行ったこともあるわ。それくらい、あやちゃんはあたしにとって可愛い後輩なのよ。」
「ミヤさん・・・。」

胸を張り、得意げに話す美夜に、綾乃は嬉しそうに微笑んでいた。そんな二人に、祥二朗は二人の出会いについて気になった。

「へぇ、ちなみにどんな出会いだったんですか?」
「ええと、それは―――。」

綾乃が答えようとするのを、美夜がすぐに遮った。

「はいはい、そのことはまた今度ね。今は会議中よ。」
「ええいいじゃん、今までだって趣味の話だったんだから似たようなものだろ?」

祥二朗が不服そうにそう言うと、美夜は目をかっと見開き、一喝した。

「ぜっんぜん違う!一緒にしちゃ駄目!」

突然の姉の怒声に、祥二朗は意味が分からず、目を見開き驚きの表情を浮かべるのだった。

(後半へ続く)

いいなと思ったら応援しよう!