
ようこど、アントレ部へ(再編)第八話後編
「いい?確かに、部活動外でのおしゃべりだったら、別にどんな話をしても構わない。けどね、そんな風にテーマもただ話をすることはただの雑談になってしまうと思うの。まああんたの言うようにお互いの趣味について話すっていうのは雑談に近いと感じてしまうのも分かるけど、今は会議の名目で話しているから、テーマから逸れることはあたしは避けたいわ。」
いつになく真剣な面持ちで美夜は言った。そんな彼女に面を食らっていた祥二朗だが、彼女の話に納得したのか、素直に頷いた。
「・・・確かに、それはそうやな。ごめん姉貴。」
素直な祥二朗に美夜はゆっくりと頭を振った。そして、今度は申し訳なさそうな顔を浮かべて言った。
「いいのよ。それよりあたしの方も悪かったわ。あたしも偉そうに言ってるけど本当ならこんな話は会議の前に話すべきだったわね。二人ともごめんなさいね。」
「い、いや、そんな姉貴が謝ることは―――。」
先程まで和気藹々と話していた場の雰囲気が少し気まずい空気となる。そんな空気を察した綾乃がポンと自分の両手を合わせて言った。
「そ、それじゃあこれからは何か気付いたこととか思い付いたことは遠慮せず、すぐに発表することにしませんか?そして、そういったものでみんなが良いと思うものがあったら、それをメモやノートに書き写して今後のルールとかにする、どうでしょう?」
綾乃の言葉に、少しバツの悪そうな顔をしていた美夜が目を輝かせて、頷いた。
「ええ、それは素晴らしいわね。流石あやちゃん!」
「い、いえ、私はそんな大したことはい、言ってませんから。」
口ではそう言いつつも、綾乃は少し照れながらも嬉しそうな顔をしていた。一方その時祥二朗は、一人難しい顔をしていた。
「うん?どうしたの、祥二朗。何かあやちゃんの提案に不服があるわけ?」
少し棘を含ませた美夜の言葉に、祥二朗は慌てて首を横に振った。
「ち、違う違う。不服なんて俺にも一切ないよ。ただちょっと感心というかなんか思うことがあっただけだよ。」
「はあ?思うこと?」
「あ、ああ。別に大したことじゃないんだけど、改めてなんでテレビとかイベントに司会進行役がいるのかっていうその重要性を感じたわけよ。まあ、今回は自分でも深く考えてなかったというのもあるけど、ただテーマとして趣味の話をするだけでも、こういとも簡単に話が脱線してしまうものだなって、今回身をもって感じたわ。」
祥二朗はまだ考えがまとまっていなかったのか、ゆっくりと選ぶように言った。そんな彼の話を始めは少し怪訝そうに聞いていた美夜だったが、聞き終わると少し間を置いてから、「はあ」と大きな溜息をついた。
「なるほどねぇ。そうなってくると、あたし達のやるべきことは活動方針とか活動方針の決め方とかそれ以前のことだったわけね。まずは有意義な会議をする為のルール作り、それが必要だったのよ。」
美夜の言葉に、綾乃も頷いた。
「そうですね。冷静に考えてみれば、この部の一番の活動って多分こういった会議ですもんね。これまでは先生に納得してもらえる為にこの部の存在意義とか有意性とかそんなことばっかり考えてましたからそういった大切なことを決めるのを忘れてましたね。」
「それじゃあ、これからはこの会議のルールについて話していきませんか?」
祥二朗の提案に、二人は力強く頷いた。