シミジン
今でもたまに思い出す小学生の頃のすごい友達。
子供なのに立派な人はいますよね。 人生10年そこそこしか生きていないのになんでこんなにも人間ができているのだろう、と思える人が。 こういう人って、もしかして既に何度も人生をやり直しているのかな、なんて疑ってみたくなります。
そんな人がいました。名前をシミジンといいます。
シミジンは家が近所でした。 とおり斜め向かいのとなりのとなりぐらいの位置にシミジンの家がありました。
シミジンの家は大きくて、白くて、芝生の綺麗な庭には大きな犬がいました。 何度か家に上がらせていただきましたが、中にはお手伝いさんがいて、リビングがとてつもなく広く洋風のお高そうな家具で統一されており、ティッシュの箱一つさえ見当たらないような、そんな家でした。 綺麗な高校生ぐらいのお姉さんもいました。
私が当時住んでいた家は木造平家の借家。 日曜日には競馬中継かゴルフ中継がつきっぱなしで、ティッシュの箱どころかコタツの上にはカピカピに乾いたみかんの皮が常時あり、いつもうるさい妹2人と部屋が一緒でしたから、シミジンんちはそれは羨ましい限りでした。
シミジンとの付き合いは小学5年生の頃からでした。 彼は背が高く、ハンサムで、学業スポーツ共に万能なだけでなく、とっても面白くていつもクラスの中心にいました。 誰にでも優しくて、仲間外れを作らず、もちろん僕ともちゃんと友達として接してくれていました。 生まれながらにリーダーシップを持っていたんです。
シミジンには、頭のよさや家柄からくる威圧感みたいなものは全く無くて、面白かったし、一緒にいて楽しかった。
同じクラスで創作劇をやったときは、そのコメディー劇の台本を一人で書き上げてきたし、シミジンの誘いで入ったミニバスケットボールチームの合宿の時は、夜シミジンの語るエロ話が凄かった。 チームの男子みんなが頭から掛け布団かぶってシミジンの前に扇状に集まって、懐中電灯でシミジンのエロ一人芝居を生唾飲みながら聞いたっけ。 私なんか、彼の口から発せられる未知の世界の話でリアルに想像を膨らませて興奮してました。 生まれて初めてちんちん立ったのその時かも知れません。 とにかく、彼はクリエイティブな能力にも優れていました。
ちょっとだけでも彼に近づきたくて、ミニバスケットボールチームにも入りましたが、才能と魅力溢れる彼には何をやっても少しも近づく事はできませんでした。
一度、純粋に彼に認めてもらいたくて、クラスの創作劇コメディーの続編のシナリオを書いて彼にみてもらいに家まで行ったことがありました。 とてもイタイ思い出です。
彼に一目置いてもらいたくって、小学生には滅多に目にすることのない大人用の週刊誌に掲載していた読み切りギャグ漫画の内容をパクったんです。 ちょっと大人びた当時の世間を風刺した様な内容でした。
結果、彼はそのシナリオを読んだ感想を、「面白いけど、仲間に公平に出番がないから、僕らの劇には不向きな内容なんじゃない?」と冷静に窘められました。
面白いか面白くないかだけでなくて、みんなが楽しめるかどうか、という私には当時まったく発想すらなかった視点でフィードバックされたので、恥ずかしかしくなりちょっと泣きたくなりました。
で、そんな彼をみていると時々神様の不公平さを恨んだりする様になりました。 それで、中学生にあがったころから少しづつ自分から距離をとりはじめ、彼と一緒にバスケ部にも入らず疎遠になっていきました。
そんなころ親父の都合で引っ越すことになり、自分自身も彼から逃げるように街を後にしました。 それで、それっきり。 そして私は引っ越した先ではいわゆる厨二病をわずらい道を踏み外しそうになりました。笑
人間って、目標とするところとのギャップがあまりに大きいとダメになる事もありますよね。でも、私の場合はまあなんとか10代後半になんとか持ち直して、今は一部上場企業で管理職やらせていただいてます。
人生一巡目。 魂の一年生。 いわゆる凡人。 そんな私がこれまで、そしてこれからを必死に生きる軌跡を少しずつ残そうと思います。