私の乳がんの場合〜手術〜
1人で手術室へ
予定よりも遅れて手術室によばれ、1人で普段降りることのない階に降りた。無機質な空間に、無機質な扉がいっぱい。
『この中のそれぞれで、なにかしらの手術を受けているひとがいるんだな』
それにしても、誰もいないし、誰もこない。
『私にとっては、一世一代の手術だけど、病院のスタッフからしたら日常やもんな〜』
急性期病院において、私のガンは風邪程度なのだろう。でも、それくらいの扱いがかえって、深刻にならなくて良いなとも思った。
そんなこんなを考えていると、「そこの丸椅子に座って、もうしばらく待っててくださいね」と忙しそうなスタッフが申し訳なさそうに言い去った。
私は、言われた通り、丸椅子に座った。ふと目についたのは、1番のお気に入りのスニーカー、ニューバランス991.5。そういえば、この病院はスリッパ禁止。最近はどこもそうなのか?昔は、入院といえば「外履きは不衛生だから、スリッパを用意して」と言われていたような。
よく『素敵な靴を履いていると素敵な場所に靴が連れて行ってくれる』みたいなキラキラしたことをいうけど、「手術室に連れてこられたな〜あれはスニーカーの話じゃないか」とくだらないことを考えていた。
やっと手術台へ
16時半ごろ、やっと「お待たせしました」と誘導された。
「とうとうはじまるー」
ドキドキしながらも、朝から待ち時間がありすぎて案外冷静な自分もいた。
「手術室、広っ」
「ここには、めちゃめちゃひといるやん」
「わー、あそこのボードにめっちゃ私の情報かかれてるやん」
などと、まわりをチェックしながら、うながされるままに、手術台に腰掛けて、執刀医を待った。
「お待たせしてすみません!ちゃんと全部取り切りますからね!よろしくお願いします!」
と診断の際に生きてほしいといった女性医師が気合いの入った声で言った。
「お願いします!!!」
と、わたしも気持ちをこめて返事した瞬間に、あらゆるところから手があらわれて、マスクをとり、シャワーキャップみたいなものを装着され、口の中をチェックして、一気に横にされると同時に、何かをかけられたと思ったら入院着をすばやく脱がされ、名前と部分切除する箇所を確認して、右の手に針が刺さった。
「熱っつ、痛ーーーい」
かなり痛いんですけどって言おうかなと思った瞬間から、記憶がない。
手術終了
「終わりましたよ〜」と声がきこえ、手術台からベッドに平行に移された。とにかく、喉が痛かった。
あれ、乳がんの手術したのに、喉が痛いよーと思いながら、病室に戻った。時間は19時まえくらいだった。手術時間は、約2時間。1時間もかからないときいていたのに。何か悪いことでもあったのかな。少し不安になった。