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ジョナサン・デミ『ストップ・メイキング・センス』

都市生活で擦り切れそうな神経症者としてのバーンの詩と痙攣するようなダンス。身悶えするようなカッティングと反復するグルーヴ。これをIMAXの迫力で見せられたら座席でじっとしてるのはマジで無理だった。途中で「みんなで踊った方がよくね?」と真剣に思ったし、誰も言わないなら俺が仕切ろうか?みたいなことまで考えた。この映画をこんなにみんなで静かに観ている状況は、何らかの罪にあたるのではないかと不安になった。

驚くべき鮮明さでメンバーの表情の機微や各楽器の音色が捉えられていて、レストアとして完璧。一人ずつメンバーが増えていく構成によって各楽器の響きがいかに明瞭になったかが手に取るように伝わってきて超感動した。この映画がこうした形で生まれ変わったこと、その背景に様々な要因と様々な人間の尽力があったことが容易に想像できて、その時点でウルウルしてしまった。

各楽曲の素晴らしさとか、映画としてのハイライトみたいなことはもう語り尽くされていると思うが、ストップ・メイキング・センスとか言っといてどこまでも理屈偏重から抜け出せてないバーンの摩耗と抵抗、ほんの一時的な解放のプロセスとか本当に感動的。

理性を捨てきれないまま苦悩と共に踊る若きバーンの奥に、『アメリカン・ユートピア』で知性とユーモアによって良き生き方を模索し続けている現在のバーンも透けて見えて、Burning Down The Houseのあたりからもうずっと泣いてた。キャリアで残したライブ映画2本が互いの価値を高め合っているのは本当にカッコいい。Blu-ray出たら絶対買う。

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